朝日連峰 根子川入りソウカ沢
〜緊急脱出、ヤブ尾根の彼方へ〜
平成15年8月17日〜8月18日
コースタイム
8月18日
 日暮沢小屋7:30〜入渓点8:15〜水神淵9:50〜柴倉沢出合(B.P.)16:00
8月19日
 BP5:30〜登山道10:40〜日暮沢小屋13:30
 


「朝日連峰」この響きは私にとって特別なものである。高校時代先輩から聞かされた、巨大ナメクジの生息地域。林道での車の脱輪事故?などなど・・・。ハプニングを誘発する不思議な山域。いつかは、行きたいとは思っていたがアプローチの不便などの理由から今回に至ってしまった。帰省ついでに、山人パパを誘い、モコモコさんと3人で行くことにした。天気予報は、時間が迫る度に悪い方向に向かっている。とりあえず、予定通り出発することにした。17日は柴倉沢の出合で幕営、二日目に大朝日小屋で宿泊。三日目に日暮沢小屋へ下山の予定。


 18日、雨の中の出発だ。やる気を損ねるには十分な降りだ。東北自動車道白石IC〜村上IC〜月山口ICへと順調に進む。早朝に家を出たのでスイスイ進める。笹谷トンネルを越えて山形に入ると日差しが差し込んできた。山形は晴れている。やる気モードが少し上昇した。しかしながら、朝日連峰方面は黒っぽい雲が立ち込めている。大井沢から、日暮沢小屋に向かう林道に入る。日暮沢小屋の周辺にはスペースというスペースに車が止まっている。我々は林道の終点まで行くので先に進む。途中、ぽっかりと空いたスペースがあったのでそこに駐車することにした。ちなみに、終点には4台ぐらい駐車できる。その手前の橋の付近にも駐車3台ぐらいできる。


林道終点から、根子川沿いに進む。途中竜門滝を覗くことができる。いまいちよく見えない。しばらく進むと沢から登山道が離れる所から入渓した。力強い流れだ。早速アブが数匹やってきた。天気が悪い為か気になる数ではない。モコモコさんの音頭で準備体操をして出発することにした。
 水は澄んでいて冷たい。しばらく所々にある淵を,巻いたりヘつったりして通過した。水神淵までは問題なく行けた。水神淵は大きな釜をもった滝である。神聖な名前でこちらが恐縮してしまいそうだ。ここで、竿でも出したら天罰が下りそうだ。水神淵は左岸を高巻いて突破した。その先は、なんとも書けないような滝があった。水神淵から先は、ようやく沢に入ってきたという感じで滝が次々出てくる。大滝は、出てこないのだが嫌らしい小滝が次々出てくるので時間がかかってしまう。

水神淵 水神淵上のなんともいえない滝


 2m滝を低く巻き、さらに2m滝をへつって越えると6m滝が現れた。直登は無理で左の岩棚にあがって巻こうとするが、これもだめで結局少し戻って右から巻くことにした。これが正解で少し上がると台地状になっており楽に歩け、最後は懸垂で降りる。

 ここからようやく10mクラスの滝が現れるが、これも水線沿いの突破はできないので左から巻いておりるとちょうど次の10m滝上に出られた。次に5m滝が現れ、これはへつった後に倒木を使い登った。今回初めて滝を登った気分だ。次もまた5mほどの滝が現れ、右を巻き気味に登るが、最初の取り付きが結構大変だった。巻き上がるとその先に大岩がドーンとありその手前がすっぱり切れているので、懸垂で一度下降したあとショルダーで這い上がった。
 
 小雨が絶えず降っており体が冷えて来る頃に、沢が右に直角に曲がる場所に着いた。ここには2段15m滝、その上に20m(落口三条)滝がかかっている。冷たい水の中を胸までつかって左のスラブ状岩にとりつく。ホールドが乏しく、しかも雨で濡れていてとても滑るので慎重に登る。ここが今日一番の見せ場である。

 しばらく問題なく進む。左からワサビ沢が出会うと3m滝で始まるゴルジュ状になるが、問題なく通過できた。ゴルジュを出てすぐの12m滝は、左の岩を登る途中の一歩に気を使うがこれも特に問題なく越えるとようやく今晩の泊まり場である柴倉沢出会いに着いた。

12m滝


 柴倉沢出合は広い川原でいいビバークポイントになっている。相変わらずの雨の中タープを張り、焚き火を起こす。焚き火の上にもシートを張ったので、焚き火は雨で消えることなく体を温めてくれ、服も乾かしてくれた。ご飯を食べ終わると山人パパは横になり、山人とモコモコさんはアルコール燃料を十分補給して「雨止むといいね」と祈った。


 雨足がときどき強くなるので、水位を交代で確認しながらうとうとすると顔がとてもかゆい。山人とモコモコさんはどうやら虫に顔中をさされたらしい。さらに雨が強くなりさすがに焚き火も消えてしまう。皆起きて沢の様子をみると少しの間にかなり増水している。モコモコさんの「やばいんじゃない。」の一言をきっかけに「撤収!!!!避難!!!!」ということになり急いで荷物をまとめる。避難時には結構高いところにあるビバーク地にも水が流れてきた。草付きの急斜面に上がり、朝を待つことになる。うとうとはするが寒くてすぐ目が覚めてしまう。時計を見ると20分くらいしか経っていない。その繰り返しで長い夜がようやく過ぎて、少し明るくなり雨も弱くなってきたが、依然として水は引かない。これは沢沿いに登るのも下るの危険と判断し、登山道へエスケープすることに決定。わかめスープを飲んで体を少し温め、急な草つきをがんばって登り尾根に取り付く。最初は急斜面だが、少し登ると手を使わなくても登れる程の傾斜になる。ヤブのうすいところを探してひたすら登る。皆無言で、たまに口を開くと「休もう」である。


 時々薄日がさすのに雨はやまない中途半端な天気であるが、気温はあまり上がらないのが救いだ。出発して4時間半でやっと1450m付近までたどり着く。もう少しで登山道のはず。上へ上へと登るとハイマツと石楠花の潅木帯になってしまう。少し迂回することにするが、再び藪の中に入ることになり方向がわからなくなってしまう。ヤブの少しの隙間からピークが見える。朝日連峰を縦走したことのあるモコモコさんにそれを伝えると、「登山道はこっちだ」といってヤブを抜けて登山道へ抜けていった。山人、山人パパもそれに続き無事古寺山の手前(小朝日岳側)にでた。標高差約600mを5時間で登った。バテバテです。長めの休憩をとろうとするが、雨が本格的に降っていて風もあり寒いのですぐに下山にかかる。


 登山道は雨のためぬかるみよく滑る。3人ともずるずる滑ってまるで転がるように日暮沢小屋目指していくと、やっと入渓点へそして日暮沢小屋へたどり着く。
 あとは帰るだけ。汚れて冷え切っただれよりもお風呂に入る資格がある体を出来たばかりの大井沢の日帰り温泉で入浴させてもらい(シャンプー、石鹸あり。タオルなし(100円で販売)で\300也)休憩室(\200)で横になって休んでから帰宅した。



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