双蛇(そうだ)とは双頭の蛇。 その家に必ず生まれる双子の総称。 人々は長く暗く連綿と紡がれた忌まわしいその血脈の象徴を、畏敬と嘲りとを込めて『双頭の蛇』――双蛇と呼ぶ。 歴史の裏側で暗躍し、冷たい血で指を凍らせてきたその家では、何かの呪いの如く代々必ず双子が生まれ、そして必ず当主を務める。 当代の当主は、男女の双子。 互いの違いがあるならそれは性差のみ。 双蛇として生まれついた二人は、鏡写しのように例外は無く同じ外見特徴を持つ。 ―― しかし何代かに一人、双子のうちのたった一人、揃いの筈の身体に瑕が付く。 それが、『当たり』。 その身に祝福と言う名の呪いを刻んだ二人の子供。 『当たり』を持つ者はひとりだけ。 『当たり』を知る者もひとりだけ。 けれども双蛇はふたりでひとつ。 『当たり』の呪いもふたりでひとつ。 『当たり』の祝いもふたりでひとつ。 双蛇の声が繰り返す。 「無理に切り離そうと言うのなら、そこのお前」 「蛇に呑まれて死ぬるがよいか?」 ……望むと望まざるとに関わらず 『当たり』が出たら、もう一回――
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【 登場人物紹介 】 |
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