マッサージ







  ルパンの仕事は不規則だ。
 長い期間一つの仕事に打ち込むこともあれば、次から次へとやっつけ仕事をすることもある。
 お宝の情報は流動的で、手に入れたそれが最新なものかどうかが仕事を左右してしまうこともあるので、必然的にそうなってしまう。



 今回も、3日続けての仕事だった。
 どんなに簡単な盗みでも、ちょっとしたミスが命取りになるこの家業。緊張感は常に持続させなければならない。
 だから、最後の仕事が終わると、ルパンはシャワーも浴びずにソファーに突っ伏した。
 いつもはうるさい次元が止めないところを見ると、向こうも似たり寄ったりだったのかもしれない。




「あー…、クソ。全然疲れが取れやしねぇ」

 丸一日という長い時間気を失ったように眠り込んだルパンは、腹の虫にせっつかれて、やっと重い腰を上げた。
 コーヒーメーカーをセットして、軽くシャワーを浴びに浴室に入る。
 サッパリしたところで、濃ゆ〜いコーヒーを啜っていると、同じようにシャワーを浴びてきた次元が、残りのコーヒーをカップに注いだ。

「あー、肩痛ぇ。腰重い…」
「なんだよルパン。えらくジジくさいこと言ってんな」
「うっせぇ。蓄積した疲労がデカ過ぎるんだ。そういうおまえこそ目の下にクマを飼ってるみたいじゃないか」
「見かけほど疲れているわけじゃないさ。こう見えてもけっこう鍛えてるんでな」
「俺は鍛え方が足りないって言うのかよ」
「単に年なんじゃねーのか?」

 拗ねて絡むルパンを軽くいなすと、次元はいつもの習慣で新聞を広げた。

「……のやろう…」
 言い返したいが、実際そのとおりかなと自分でも思うので黙るしかない。
 ボーっとしたまま新聞を読む次元を見ていたルパンは、ふとテーブルの上に投げ出されている雑誌に目を留めた。

「お、これっていいかも。なぁなぁ次元」
「んー? なんだよ」
「疲れが取れないのはやっぱ年だと思うんだわ」
「とうとう自覚したか」
「うん、そう。自覚したからさ、もっと労わって欲しいんだわ」

 そう言うとルパンは手にした雑誌を広げて、

「マッサージしてくれよ」

 と命令した。




 ルパンが広げたページには、今流行りの足裏マッサージが特集されていた。
 ツボ押しからオイルマッサージまで、いろんな店の広告も兼ねたものらしい。

「痛いのはヤだからオイルな」
「へいへい」

 所詮おぼっちゃま育ちで女王様気質のルパンに逆らえる次元ではない。
 バスローブのままソファに寝て脚を投げ出した姿に溜息を吐きつつ、御付きの従者よろしく跪いた次元は、そっとルパンの右足を持ち上げた。

「えーと、最初は足の裏をまんべんなく揉むってか」

 さっきの雑誌に簡単なマッサージの方法が載っていて、それを真似てやってみる。

「うひゃひゃひゃ…っ。おい次元くすぐったいってば」
「うるせぇ! こちとら真剣なんだ、ちったぁ我慢しやがれ」

 足の裏を痛くないように揉まれたルパンがくすぐったさに暴れる。
 無視して今度は踝からゆっくりと膝に向かってツボを押していくと、

「効く〜っ」

 と気持ちよさそうにまったりとして、「もっともっと」と催促した。

「俺ってマッサージの才能もあったりして」

 なんとなく気をよくした次元は、今度はオイルを両手に馴染ませて同じように揉む。
 本格的に足全体をマッサージしようと、ふくらはぎから腿へ手を滑らせたとき、

「あ…っ」

 微かな声が漏れた。
 一瞬何が起こったのかわからず手を止める。
 伺うようにルパンを見上げると、次元の眼から逃れるように逸らした顔が、首筋まで赤く染まっていた。

「なんだよ、どうしたんだルパン?」
「な…んでもない」
「って言っても」
「何でもないからっ、つ、続けろよ」

 明らかに「あのとき」のような声に、次元はルパンが己の手の動きに「感じて」しまったことを悟った。

「ふー…ん」

 強がるルパンに、悪戯心を刺激され、もう一度同じように手を動かしてみる。

「ん…んっ」

 ヒクリと震えて軽く仰け反るルパン。
 我慢できずに漏れる声が艶かしい。
 精一杯虚勢を張って、

「そこはもういいから……、足首の方をやれよ」

と言うのを、開かせた脚の間に強引に身体をねじ込んで閉じられなくした上で、

「いーや、こっちの方がずっと筋肉が強張ってるぜ。ちゃんと解してやるからよ」

 と親切顔で無理やり続けた。

「あ、ん、んんっ、くぅ・・・っ」

 どうにも耐えられず、喉を反らせてうめくルパンを、滑らかな腿に指を這わせて堪能する。
 オイルのせいで滑らかにすべる指を巧みに動かし、膝の裏側や太ももの内側といったルパンの反応するポイントを重点的に攻めた。

「あ、あ…ぁっ・・・、は…くぅっ」

 苦しげに喘ぎながら、なんとか次元の手を止めようと脚を窄める姿がソソられる。
 さらにオイルでぬるぬるになった手で、ヒクヒクと痙攣する太ももの内側を付け根に向かって揉み上げると、声もなく仰け反ったルパンが、足の指までそらして跳ねた。

「――― ッ!!」

 力尽きたようにカクリと細い首が折れる。
 内股を、よく知った欲望の名残が滴り落ちてきて、次元はルパンが達したことを知った。

「なんだよ、ずいぶんあっけないじゃねーか。そんなに良かったのか、俺のマッサージは」
「うるせ…っ、もうはなせ…」
「ウソつけ。まだまだ足りないんだろ?」

 その証拠に、ルパンの欲望はバスローブの生地の上からもまだ熱が治まっていないのが見て取れた。

「もっともっと気持ちよくしてやるよ」
「や、やだっ…」

 嫌がって逃れようとする腕を、バスローブの紐ですばやく縛る。
 どうせこんな拘束などやすやすと解かれるのはわかっていたが、今はほんの少し時間稼ぎになればいい。
 その間に、次元はルパンをひっくり返すと、ローブの裾を捲り上げて締まった尻を暴きにかかった。
 ぬるぬると滑るオイルのせいで余計に感じてしまうルパンは、必死に戒めを解こうとするが、次元の指先が狭間をヌルリとなぞるたびに集中力を奪われる。

「くっそ・・・! 次元卑怯だぞ…あ、あんんっ」
「そうか? どう見てもおまえのここは俺を欲しがっているように見えるんだが」
「は…ぁっ、こんなのマッサージ…じゃ、あ…ん、ない…っ」
「マッサージだろ? ただし頭に『性感』って吐くけどな」
「 ―――! バカヤロッ!!」

 触れられれば欲しがって震える花のような秘処を、たっぷりとかき回して、次元がさらに奥へと指を潜り込ませる。
 ルパンのそこは待ちわびたように収縮して、迎え入れた指が蠢くたびに痺れるような快感を貪った。
 もう片方の次元の手が、涙を流して震えるルパンの欲望を嬲り始める。
 後ろから穿つ指と前を弄る掌に翻弄されて、ルパンは半ば下半身を次元に捧げるように浮かせた状態で、頬をソファーに擦りつけるようにして身悶えるしかなかった。
 
「も、…もうダメ…、ひぁ…っ、アァっ、ン!」

 一番脆い箇所を、長い指がことさら優しく掻き乱す。
 ぶるぶると肩を内腿を震わせて堪えるが持ちそうもない。
 すると、ルパンを嬲っていた次元も、

「俺も限界だ」

 と低くうめいて、自身の熱を潤って喘ぐルパンの秘処に押し当てた。

「今度はこいつで奥の奥までマッサージしてやるぜ」
「オヤジみたいなこと言うなっ!」
 言葉でも嬲られる恥ずかしさにルパンが叫んだ。
 次元はかまわずぐっと指で開いた秘処を己の矛先でかき回してやる。
とろとろに蕩けた花にあてがった硬い楔を、しかし次元は限界と言いながらも一気に押し入ることはせず、ルパンが普段は嫌がるのを知っていて、いつもよりずっと時間をかけて開いていった。
 
「そ、そんなぁ、あっ、あっ、あああああ……っ!」

 ゆっくりと時間をかけた挿入は、得たいの知れないざわめきを産む。
 生々しく脈を刻むそれに犯されるのは、まるで身体の中心を灼熱の杭で穿たれる感覚にも似て、逃れられないリアルな感覚に、ルパンは困惑してゆるゆるとかぶりを振った。
 じれったい感覚に、待ちきれないのか熱く解かされた花は勝手に蠢いて、流されたくはない心をたやすく裏切る。

「――― ……ッ!」

最後の最後で一気に押し開かれたとたん、前の欲望はロクに愛撫されないまま爆ぜてしまった。

「入れられただけでイクなんて、初な小娘みたいでおまえかわいいぜ」
「ん…なこと言うなよっ!…あ、ああっ! ま、まだダメ…っ…!」

 次元は恥ずかしがって身を捩るルパンを押さえつけ、まだ強固な硬さを保ったままの自身で、イッたばかりの敏感な花筒をゆるく突き上げた。
 ゆったりとした大きなストローク。かと思えば入り口で小刻みに揺らしたり。

「いや、や、やめ…っ、こんな、あっ、身体……がっ」

 馴染んだ猛りで内璧を擦られると、全身が総毛立つほどの愉悦が背筋を走る。自然にうねり出す腰の動きを止められないルパンは、必死になって助けを求めた。
 次々に生まれる快楽のあまりの強さに、身体の方が追いつけない。
 その間にも、次元の手は次々とルパンの弱い処を暴いていく。

「背中も凝ってそうだな」
「ひゃあ…っ」

 人一倍背中が弱いことを知っていて、わざと指で辿る。
 一番弱い尾低骨のあたりを翻弄され、ルパンは身の内深く咥え込んだ熱の塊を締め付けさざめくようにぶるりと震えた。
 
「ここもイイみてーだな、ルパン。けど、おまえの身体は外側より内側の方によく効くツボがあるの知ってるか? おまえ、そこを擦られるとそれだけでイッちまうもんな」
「いや、あ…っ、いや…だっ!次元…もう…!」

 すでに前の欲望は何度目かわからないほどとろとろに熔けてシーツに恥ずかしいシミを作ってしまっている。
 ほんと、かわいいヤツだよ、と、無意識に誘うような腰の動きに魅せられて、次元は崩れそうなルパンの腰を抱えなおし、最後の追い込みを始めた。

 
 
 

 結局、開放されるまで次元は三度挑んできたが、その間ルパンの方はというと、立て続けに何度も強制的に導かれ、仕事を終えた直後よりひどい疲労に襲われていた。

「くっそ! 次元のやつ、好き勝手しやがって!!」

 本人は不在なので、胸に抱えたクッションに八つ当たりする。
 暫く気を失っていたルパンが目を覚ますなり、「銃を撃ってくる」と射撃場へ出かけてしまったのだ。

「…退屈だ」

 ひとしきり八つ当たりを終えると、言うことを利かない身体を持て余してしまう。
 そこへ、久しぶりに山を下りてきた五右衛門が現れた。

「どうしたルパン、何をしている?」
「五右衛門!」
「次元はどうした? 仕事はもう終わってしまったのか?」
「ああ、そっちは無事に済んだ。次元のヤツのことは…知らん! それより、どこ行ってたんだ? ずっと連絡とってたのに音沙汰無しだったじゃんか」

 今回の仕事がハードだったのには、五右衛門の不在も大きかった。

「ああ、すまぬ。ちと野暮用で、馴染みの湯宿で湯治をしておったのだ」
「湯治? って、あの温泉に浸かって肩やら腰やらを長い時間かけて治すあれか?」
「うむ。ここのところ荒行が昂じて腕を痛めてしまったのでな。いや、もう心配はいらぬ。なかなか良い湯ですっかり元通りだ。やはりアレが効いたのだろう」
「アレ?」
「御主も試してみるか?」

 そう言うと五右衛門は風呂敷から掌サイズの小瓶を取り出した。
 嫌な予感におそるおそる覗き込むと、五右衛門曰く。

「オイルマッサージと言ってな、ハーブとやらのエキスで足のツボを刺激するそれはそれは良く効く按摩なのだ」
「―――― ッ!!!!」
 
 ルパンが仰け反ったのは、言うまでも無かった。



〜FIN〜











1111のキリバンです。光路郎様に捧げます。
自分で言うのも何ですが、遅筆な方なので、すごくお待たせしてしまって申し訳ありません。
しかもこんな鬼畜小説を・・・(^^;)。
こんなん次ルじゃな〜い!!と言われても返品は不可ですよ(笑)。
しっかし、うちとこのルパンは受けに回るととことん女王さま気質になるのはなぜなのでしょう…?
今回この小説には、本当なら挿絵が付くことになっておりました。
本人今一生懸命タブレットで練習中なので、うまくなったらそのうち付け加えるかも。

さくら瑞樹著