バスルームでお仕置を


「覚悟はいいな、ルパン」
 泡だらけのバスダブから、次元はゆっくりと立ちあがった。
 こめかみには青筋、拳はグーだ。
「ちょっ、ちょっ、ちょっと待てよ、次元ちゃん。そんなに怒るこたないだろ。ちょーっと手元が滑っただけじゃないか」
「ちょっとだと!? てめぇ、ことの重大さがわかってねぇな! この髭はなぁ、ただの髭じゃねーんだよ。俺のトレードマーク、俺が次元大介だっていうアイデンティティーなんだ。それをいともあっさり剃り落としやがって…」
 次元はワナワナと怒りに震えながら、苦笑いでごまかそうとするルパンを睨み据えた。
「きっちり落とし前つけてもらうぞ、ルパン」
「落とし前って、ど、どうすんだよ?」
 あまりの次元の迫力に、思わずルパンは後ろにさがる。それを難なく捕まえた次元は、口の端をニヤリと吊り上げて宣言した。
「もちろん、決まってるさ。おまえさんが一番嫌がることをするのさ」
「次元ちゃ〜んっ」
 情けない声は当然無視される。着ている服を全部剥ぎ取られたルパンは、次元の腕に抱きこまれる形でバスダブの中に強制ダイブさせられた。ぬるぬるとした泡が全身を包む。
 狭いバスダブの中、スプーンのように凭れ掛かった状態で抱き込まれたルパンは、後ろから伸びてくる不埒な腕からなんとか身体をガードしようと躍起だ。
「な、ちょっと次元ちゃん、謝るからさ、こんなことやめようよ。ね?」
「いーや、やめねぇ」
「男なんかに悪戯したって、楽しくなんかないだろ、な? 考え直せ」
「いーや、俺は楽しいぜ?」
「そんなぁ〜」
 一瞬の隙を突いて、指先が胸の頂きを滑った。
「アッ、んん・・・っ」
 泡で感じやすくなったのか、抱き込まれた体がビクンと跳ねる。
 調子にのった次元の手が、泡でぬるぬるする肌をくまなく弄り、ところどころヒットする場所を二度三度攻められると、ルパンは声を止められなくなった。
「ほうら、こんなに楽しいじゃねーか」
 快感と羞恥で紅くなった肌が次元をソソる。
 もともとフランス系のルパンの肌は白く、次元の手に吸い付くように滑らかだ。
「くそっ、次元…っ、覚えてろよ…っ」
 耳まで真っ赤になったルパンが、悔し紛れに悪態を吐く。
「いいぜ、その色っぽい声ならいくらでも覚えててやるさ」
 不埒な指はルパンの中心を包み、さらに喘ぎ声を引き出そうとする。
「あ、ああっ、ん…次元っ、もう…」
「だめだ、まだイクのは早い」
 ビクビクと震える砲身を押さえて、次元はもう片方の手で、ルパンの後ろを弄った。
 双丘の割れ目をそろりと撫でる。とたんにルパンの身体は強張った。
「お、おい次元!?」
「大人しくしろよ。痛い思いはしたくないだろ?」
「大人しくしても、痛ぇもんは痛ぇに決まって……て、あっ、くうっ…」
 後ろから逃がさないように羽交い絞めにしたまま、次元はゆっくり指を埋めていった。
「ふっ・・・、んん……っ!」
 次元の節高くて長い指は、銃を自在に操るだけあって、見かけに反して細やかな動きをする。奥の方まで入ってきて大胆に動く指に中を掻き回され、ルパンは声を押さえきれずに全身をくねらせた。
「泡があってよかったな。ちょうど潤滑油がわりになる」
「はっ、言ってろよ…っ」
 悔しいが、それでいつもより感じるのも事実だ。
 ある程度解した後で、次元はぐったりと力の抜けたルパンを自分の上抱え上げるようにして己の砲身を挿入した。
「あ、ああっ…!」
 いくら解されたとはいえ、挿入の負担は大きい。
 強張る身体を慰めるように、次元はルパン自身をやんわりと愛撫した。
 そして首筋にキスの雨。
 ようやくルパンの緊張が解れると、次元は律動を開始した。
 動くたびにチャプチャプと揺れるお湯。
 狭いバスダブの逃げ場のない状況で突き上げられ、喘いだ唇を貪られ…
 やがて訪れた甘い絶頂に、二人同時に飲み込まれた。



「ちくしょう〜…次元の野郎…」
 腰が鉛のように重かった。
 ベッドにうつ伏せて唸るルパンの傍には、その原因を作った本人自らが用意した朝食が置かれている。
 結局あの後、バスでもう1ラウンド、ベッドに入って3ラウンドと、ルパンはほとんど眠らせてもらえなかった。
 洗面所の方では、まだ水音がしていた。
 しばらくしてバスローブ姿の次元が現れ、ルパンの枕元に立った。
「なんだ、全然食ってないじゃないか。腹へってなかったのかルパン?」
 さっきまで髭のことで怒っていたことなど忘れてしまったような素振りで声をかけてくる。
 ―――食える状況だと思うのかよ…
 と、悪態を吐こうとしたルパンは、視線を上げたとたん、次元の顔を見て固まった。
「…! じ、じじ、次元〜っ! おま…っ、髭っ!」
「ん〜? どうしたんだ、ルパン?」
 わざととぼけたふりをする次元の顔に、剃り落としたはずの髭を見て、ルパンは腰の痛みも忘れて飛び起きた。
「騙しやがったな〜! きったねーぞ」
「ふふん。誰が大事な髭を剃り落とされてたまるかよ。そうゆうこともあろうかと、あらかじめ変装用の髭つきマスクを顎だけに被ってたのさ」
 種をあかせば簡単なこと。
 騙されて、髭を剃ってしまったと思い込んだルパンは、文字通り、まんまと次元にハメられたのだった。
「ま、しかしおまえさんにはイイ薬になったがな。これにこりたら、もうオイタはするんじゃねーぞ」
「くっそーっ、覚えてろよ!! こんどはこっちがハメてやるんだからな〜っ」
「ハイハイ」
 悔し紛れにポカポカ腕を振り回すルパンを、やんわりと抱き締めてやる。
 本日の勝者にとっては、どんな罵倒も愛の囁きに聞こえるのだった。


〜FIN〜



印度のバスルームでイチャイチャする(?)イラストから書きました。
ルパンお仕置きされてますねぇ(笑)。当然でしょう。次元の髭は貴重なんです。
いつもはルパンにやられっぱなしの次元ですが、今回は次元の方が一枚上手でしたね。
印度のイラストがあんまり妄想を掻き立てるので、ちょっぴり鬼畜になりましたが、
裏ですからね(爆)。広い心で読んでやってください。
(2002/11/01    さくら瑞樹著)