何もかも夢を見ているようだった。 現実に自分が目にしていること、やっていることすべてが熱に浮かされたように感じる。 エリックは、ショーンの身体に夢中になっていた。 地中海の太陽に程良く焼けたショーンの肌は敏感で、引き締まった脇腹から胸元へ手を滑らせただけで、声を噛み殺して震える。 逞しい身体を持った男が快感に翻弄されて、為す術もなく悶える様が、こんなにエロティックだとはエリックは知らなかった。 赤く色づく乳首が、小さく尖って自己主張をしている。 口を付けてキュッと軽く吸うと、連動するように雄に新たな密が滲んだ。 「く…っ、う、よせ……っ」 執拗な愛撫から逃れようとショーンが身を捩る。それを快楽でねじ伏せる行為は、エリックの征服欲を暗い喜びで満たした。 もっと啼かせてやるつもりで、わざとショーンが嫌がる尻の窄まりに指を這わせる。 「そ、そこは、イヤだっ、あ、うう―――…っ」 さっきまでさんざん弄っていたそこは、押し込んだ指をさしたる抵抗もなく柔らかく迎えた。 根元まで入れたところでグルリと掻いてやると、ショーンは堪えきれずにビクビクと背中を反らせる。 「ここが一番感じるんだな」 「ちが…っ、違う…!」 否定しても、待ちわびたように指を締め付ける蕾は正直だ。 「嘘をつくとまたお仕置きだよ、ショーン」 オーリが優しげな口調で言った。 「じゃあ、本当に違うかどうか、証明してもらおうか。さっきみたいに先にイってしまったらダメだよ」 オーリは羽交い絞めしていた腕を解くと、ぐったりとしたショーンの身体を返してうつ伏せにした。 そして、視線でエリックを促した。エリックは小さく頷き、再びそこに口付ける。 「あっ、や…っ、は……あっ!」 くちゅっっと忍び込んだ舌先が、敏感な襞を舐めたとたん、ショーンはそこをヒクつかせて喘いだ。 四つん這いの格好で、差し出させた腰を押さえたまま、エリックはショーンの一番弱い秘処を舌や指で刺激する。 エリックはわざと奥までは刺激せず、入り口だけを弄った。すると、ショーンの蕾は反対に求めるように口を開く。 「イヤだ、イヤ…もう、こんな……あ…っ」 切れ切れに漏れる懇願。じれったさに腰を疼かせ悶える仕草。 そのどちらもショーンのありのままの姿だった。 大の大人が、人には触られたくない場所を弄られ、あまつさえそこで感じて羞恥に震えている。緑の瞳を潤ませて快感に咽び泣く姿のなんと魅力的なことか。 エリックはゴクリと咽喉を鳴らして、一気に奥まで指を捻じ込んだ。奥に触れたふくらみを、強く押す。 「はぅ…! う―――…っ」 その瞬間、ショーンのペニスは滴るように白濁とした蜜を零した。 「あーあ、やっぱり粗相しちゃったね」 頬をシーツにこすり付けて痙攣しているショーンの背を、オーリはゆっくりと撫でた。 「初めての男にも感じて射精しちゃうなんて、ショーンは慎みがないから困る」 わざとそう仕向けたくせに、オーリはそう言って精神的にショーンを苛めた。 「お仕置きだよ」 「あ、もう…これ以上は許してくれ…」 「ダーメ。淫乱なショーンが、どんな風に感じてイったか、あとでちゃーんとヴィゴに報告してあげるからね」」 そう優しく囁いたオーリは、悪魔のような所業でショーンのペニスの根元を縛り、射精できないようにしてしまった。 「さぁ、次は射精なしでイってみようか」 花筒の中に留まったままの指が再び動き出す。 一方で、縛られたペニスを、オーリが口に含んでねっとりと刺激する。 「もう…これ以上は……あ、いや…だ、また…あ、ああ…っん!」 二人の男の手が、容赦なくショーンの悦楽を引き出そうとしていた。 「やぁ、オーリ。メール届いたよ。相変わらず私のショーンは可愛いね」 「よく言うよ。こっちはいつだって理性が吹っ飛びそうなのに」 「それでもいいと言ったのは君だろう? 契約は守らないとね」 「わかってるよ。だからエリックにもそう言った」 「見たよ。彼の切なげな顔もステキだった。ま、ショーンには負けるけどね。後は君が慰めてあげたんだろう? それに―――…だろ?」 「まぁね。じゃ、まだ撮影残ってるから、また連絡するよ」 オーリは静かに受話器を置いた。 外はもうすぐ夜明けだ。 ショーンは疲れきった様子でベッドに沈んでいた。 短く刈った金色の髪をすきながら、オーリは最初に共演したときのことを思い出していた。 みんなに愛されいたショーン。英国紳士のサーに比べると、完璧なクイーンズを話すわりに隙が多くて、それもまた魅力的に感じたものだ。 紆余曲折はあったものの、結果としてショーンはヴィゴのものになった。 そして、皆と同じようにショーンに魅了されたオーリは、そのヴィゴと、ある契約を結んでいた。 ショーンの身体に触れることを条件に、彼を保護する役目。 一部では悪役として名を馳せてしまったショーンだが、彼は精神的にも肉体的にも男好きのする性質だ。 実際惑わされる者は後を絶たない。それを案じたヴィゴが、自分から提案した契約だった。 同時に、ヴィゴはそうすることで自分の趣味を兼ねてもいたのだろう。 人間、愛しい者は、よけいに困らせたり弄りたくなるものだ。 まして、ショーンは笑顔も良いが、泣き顔はもっとイイときている。ヴィゴはショーンの自覚のない性質を見抜いてもいた。 男に抱かれて羞恥を覚える初々しさを残したままで、心を縛る方法を、ヴィゴは熟知している。 他の男に身体を弄らせるのもその一環だった。 といっても、今のところオーリだけだが。 今日のショーンの映像も、メールで送ったから、今頃は堪能していることだろう。 ショーンには気の毒だと思うが、どちらかというとヴィゴの感性に近いオーリは、そんな愛もあることを理解していた。 「オーリ、飲むかい?」 物思いに耽っていると、エリックがウイスキーのグラスを手渡してきた。 「私は嵌められたのかな?」 エリックは苦笑を浮かべて言った。 「ショーンはずいぶんヴィゴに愛されているんだな。ショーンは確かに素晴らしい。でも、正直少し怖いと思ったよ」 ヴィゴの愛し方は異常だ。でも、エリックは、ショーンのせいでもあることをわかっていた。 「王様が支配しているのはショーンだけだよ。僕は自分の意志で動いてる。あなたを誘ったのは、僕のことをちゃんと知って欲しかったからだ。僕もあなたが好きだしね。隠し事は好きじゃない。それに、ショーンのことも自慢したかったんだよ。こんな僕を軽蔑するかい?」 「いや……」 驚いてはいたが嫌悪はなかった。 正直に自分を晒すオーリは、兄にギリシャから自分を守ってくれと請うパリスそのままに見えた。 エリックは、ヘクトルと同じように、拒むことができないこともわかっていた。 たぶんこれからも、オーリと一緒にショーンを抱いていくことだろう。それは確信だった。 「好きだよ、エリック」 「オーリ……、私も好きだ…」 軽く交わしたキスは、契約の証のようだった。 この時、まだエリックは自分の運命を知る由もなかった。 「それに、彼は調教のし甲斐がありそうだ。君もそのつもりなんだろ?」 「ふふ…、うまく行ったらあなたにも試させてあげるよ。もちろん、最後まではダメだけどね」 電話での秘密の会話は、永遠に秘密のまま……。 |
end
やっと終了…。ずいぶん悩んだラストでした。
一応、アラボロ派な私は、RPSでも藻豆なので。
でも、一番美味しい思いをしたのは花のような気がする。
やっぱりお兄ちゃんは最後まで弟に操れてしまいました。
たぶん、この後美味しく頂かれたことでしょう。
ダブル調教…。想像するとスゴイっす!もちろん嫌がるのを無理やり!
鬼畜上等なので、ありえなーいと思っても見逃して下さいませ。
さくら瑞樹著
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