Lost Reason






「どうして君はそんなに強情なんだい」

 シン…と静まり返った王城の片隅で、レゴラスは苛立った声を上げた。
 外は雪。
 堅固な造りのゴンドールの城でも、石の壁は冷えるし、隙間風だって入る。



 レゴラスとギムリは、指輪に纏わる大戦の後、約束どおり二人でいろんなところを旅して回った。それぞれの種族の誤解もあって、まだお互いの故郷を訪ねたことはなかったが、時折懐かしい人々の住む場所を訪れては、安息の地としていた。
 およそ一年ぶりに訪れたゴンドール。
 二人を懐かしく迎え入れたアラゴルンは、さっそく滞在する部屋を用意してくれたのだが、

「今ちょうど隣国のエオメル殿とそのお供の方々でいっぱいで、君たちに用意できる上等な部屋はここだけしかないんだ」

 そう言って、すまなさそうに案内された部屋は、豪奢で広いが真中に寝台が一つしかない部屋だった。

「気にしないでいいよエステル。どうせ旅先じゃ二人肩を寄せ合って寝たものさ。こんな大きなベッドで寝られるなんて贅沢だよ」



 そうして、夜。 
 事はギムリが別々に寝ると言い出したことから始まった。
 せっかく二人でいるんだし、久しぶりのふかふかのベッドは広い。当然ギムリも一緒に寝てくれるだろうと思っていたレゴラスは、頑固なドワーフの固辞に合い、ベッドを前に立ち往生するハメになったのだ。

「別々に寝るって、ここにはベッドはこれ一つだよ?」
「だったらあんたが寝ればいい。私は床にでも転がるさ」
「君だって寒いだろうに、なんで床に寝るなんて言うんだい。そんなこと君にさせるくらいなら、僕の方がそうするよ」

 だが、頑固なドワーフはそれさえ嫌だと言う。

「あんたみたいな綺麗なエルフを床に寝せたと知れたら、私はゴンドール中から非難されてしまうよ」
「だったら、さっきから言ってるように、一緒に寝ればいいんだ」
「だからそれは…」
「それは?」

 理由を問い詰めようとすると、ギムリはすぐに瞳をそらしてしまう。しかもほんのり頬を染めて。
 もしやこれは…と思ったエルフは、必死にあらぬ方向を向いて答えを避けようとするドワーフを、その長くしなやかな腕にゆるく抱きとめながら言った。

「ねぇギムリ。嫌なら嫌でちゃんと理由を言ってくれないと、僕はすごく傷ついてしまうよ?」

 エルフお得意の憂いを帯びた声で囁くと、それに弱いギムリはうっと詰まってゴニョゴニョと何か呟く。

「だから……一緒に寝るとだな…、ここは知った者が多いし……いや、だから…あんたはいいだろうが私は………困る…んだ・・・」
「困る? どうして?」

 そこが弱いと知っていて、レゴラスはわざとギムリの耳元で囁いた。
 両腕の檻の中一歩も抜け出せなくなったことをいいことに、やわらかい耳朶をそろりと舌先で嬲る。ひくんとわずかに震える身体が愛しい。

「あ…っ…」
「ねぇギムリ、どうしてさ」
「…そ…れは、あんたはいつでも触ろうとするし、あっ…、んん……いや、それは嫌いじゃないんだが………、あ、そんなことはどうでもいい……ともかく、ダメなんだよ…」
「だからなんでダメなのさ」
「!…だから…っ! あんたに触れられると困ったことになるからだよ!」

 言い捨てたギムリの顔は、今や真っ赤なリンゴのようだ。

「もしかして、その気になってしまうから?」
「……っ、言うな…っ」
「ああ、なんて君は可愛いのだろう」

 僅かな間に悪戯された身体は、すっかり骨抜きとなっていた。
 後ろから抱き締められた身体は、服の上から弄る手の動きに翻弄されて、一人で立っているのも難しい。
 それをいいことに、好色なエルフは愛しい恋人の服に手をかけながら、ゆっくりとベッドに誘った。

「レゴラス、だからっ、ここでは…っ」
「大丈夫だよ。たとえ壁が薄かろうが、こうして君の可愛い声は、すべて僕が吸い取ってあげるから、ね?」
「ん、う…んん…っ」

 純朴なドワーフは抗えるわけもなく。
 深く口付けされる間にも服ははだけられて。
 気が付けば、エルフの思惑どおりギムリは身悶えることになった。

「よ、よせ……っ、レゴ…ラ…ああっ」

 日頃は覆われて日に焼けたことの無い白い胸を嬲られると、それだけで腰が砕けそうになる。
 レゴラスの巧みな愛撫の前に、その道に疎いドワーフはなす術はなかった。

「ほら、もうこんなになってる」

 脚の付け根の間にまで侵入した指が、優美な形からは想像ができないくらい卑猥な動きでギムリを追い上げる。

「ん、んんっ…」

 狭い花筒の中を犯す指が、ギムリの弱い処をかすめるたびに、レゴラスに後ろから圧し掛かられた身体がヒクヒク震えるのを止められない。
 うつ伏せになったギムリは、シーツを噛んで堪えた。
 だが、必死に声を出すまいと意地を張ると、それさえ許さないとばかりに深い口付けで声を吸い取られた。

「ああ…、レゴラス…っ、もう…もう許してくれ…」
「かわいいギムリ。恥かしさなんてふっ飛ぶくらい愛してあげるよ」
「あ、ああっ、はあぁああ…っ!」

 さんざん指でかき回されてほころんだ蕾を、レゴラスの矢が容赦なく蹂躙した。
 うつ伏せの姿勢で貫いて、両手をシーツに縫いとめ腰を使う。
 前は、敢えて嬲らなかった。

「さぁ、ギムリ。後ろを愛してあげるから、ここだけでイってごらん」
「いや…、いやだ…っ、ああっ、あぁ――― っっっ!」

 熱い塊に、図らずも発掘されてしまった花奥のイイ処を重点的に突かれ、教え込まれた身体は一溜まりもなく蕩けた。

「はいよく出来ました」
 
 強制的に追い上げられてぐったりとした身体を組み敷いて、レゴラスはその耳元で満足気に囁く。
 だが、それだけで終わらないのがこのエルフの好色なところだ。
 自らも狭い花奥に熱い奔流を解き放ったレゴラスは、弛緩して喘ぐドワーフの小柄な身体を、繋がったままゆっくりと持ち上げた。
 そうして、今度は小児に小用をさせるような恥ずかしい格好で、再びギムリを苛み始めたのだ。

「あ、んうう…っ、レゴ…ラ…ああ…」
「こうすると、もっとイイ処に当たるだろう?」
「んんっ、はうう…っ」


 絶倫なレゴラスは当分開放してくれそうにない。
 そうしてエルフの思惑どおり、ゴンドールの夜は更けていくのであった。






Fin.





甘々なレゴギムです。
どこがって突っ込まないように。
レゴラスちょっとブラック入ってますねぇ。
いや、基本でしょう(ニヤリ)。
ギムリはブラックなエルフに騙されやすいから、
旅先でもずっとこの調子で丸め込まれてたと断定!


さくら瑞樹著



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