池の湯

【2004.1.31】  
池の湯Part2へ続く
池の湯
神奈川県横浜市港北区菊名1−3−8

平成16年1月31日で
廃業、番台。
東急東横線の妙蓮寺駅で降りて、渋谷方面から来た場合は、踏み切りを渡ってそのまままっすぐ突き当たりまで進む。その突き当たりの手前の左手奥にある。駅から1分。


コメント:本日で廃業との情報を得たので、万難を排して急処来訪。着いたのはもう5時を回っていただろうか。少しづつ日が長くなってきたので、まだかろうじて日の光の中で写真の取ることができる時刻だった。正面を皮切りに銭湯の周りを一周して、その蔦の絡まるトタン葺きの清楚な外観をカメラに納めた。煙突は発射台形式のもので、街灯のぼんやりとした灯りとのコントラストが印象的だった。
角に八百屋さんがあり、銭湯とともに苦肉を共にしてきたという感じ。短い花道の奥に赤い電球の光に照らされた玄関の暖簾が垂れ下がっていた。建物正面はこじんまりとした千鳥破風を備えた伝統的なレトロ銭湯風情。玄関を入ると両脇の男女の踊り場に加えて、噂どおり正面にも富士錠の下足箱が鎮座している。がらっと引き戸を開けて中に入ると定番の番台、格天井に板の間、男女境の大鏡、柱時計、そして坪庭側の木製の引き戸。中央に島ロッカーがあるほか窓際手前にも島ロッカーがある。坪庭に向かって長いすとテーブル、その上に灰皿が置かれており、昔ながらの定番のものの配置。
浴室内に入るとさすがに建物の老朽化が目に付く。ペンキも剥げ剥げになっていて、窓枠や配管の修理の跡も痛々しい。でもレトロファンにはそのようなことは全く気にならない。むしろ改装されていない昔ながらのタイルやカランの一つ一つが心を和ませてくれる。島カランは1列で三角万華鏡風の鏡。浴槽は3槽で、左から薬湯(人参宝母散?)、深湯、底が平らでなくて端に行くにしたがって浅くなっている珍しい浅湯(お湯の噴出し口がぼこぼこと持ち上がっている)。湯温は43−45℃といったところ。深湯が一番いい湯で、ここの風呂から上がると体が少しちりちりして茹蛸のようになる(このくらいの熱い湯が最高だ(体の色が変わらないような熱さでは物足りない)。最後にビジュアルだがちょっと古めの富士山のペンキ絵(平成4年8月12日、美保の松原の記、板に直接描かれたもの)とその下のかわいらしいモチーフのタイル絵(鹿と兎とリスが描かれている)が美しい。
そんなわけで、ずっと残っていて欲しいような伝統的銭湯なのだが、時代の流れには逆らえないのかもしれない。常連のお客さんたちが名残惜しそうに玄関前で話し合っていたのが印象的だった。
追記:ところで妙蓮寺は初めて訪れたものとばっかり思っていたら、伯母の家があったのがここだったらしい(小さい頃に訪れていたことになる)。その伯母も今は家を売り払って老人施設に身を寄せており、幸せそうな毎日を送っているとのことだ。


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