訪問記 【2008.9.14】
横浜の磯子区となると用事がないと訪れることのないようなエリア。山間の住宅地の中に肩を並べるように溶け込んでいる違和感のない銭湯。正面玄関はちょっとモダンに改装されていて、ビル銭湯のようにも見えるのだが、離れてみると昔ながらの破風屋根の立派な一軒家銭湯。
玄関を一歩入ると厳かな感じさえするレトロな銭湯。でもどことなく洋風な雰囲気があって、大阪あたりの銭湯を彷彿とさせる。さて、実は今日ココへ来たのはレアものの末広錠の下足錠を見るため。ちょっと低めな住宅用の玄関上がりのような処を抜けると左右にお目当ての下足箱が鎮座。おお、これが噂の末広錠か、扇形の見事なデザインだ。上には天神湯という印刷も施されている(実際近くに天神様があるらしい)。あとは番台裏の正面壁にタイル絵があって梅の木に鶯が止まっている立派な絵。引き戸から中に入るとカーテンを押しのけて中へ。誰もいないのかと思ったら番台にはちゃんと女将さんが座っておられた。脱衣場は天井が高くて立派な折り返し付きの格天井。右手前が大きく広がっていて、L字状にベンチが置かれている。飲み物は自動販売機。島ロッカー1列。男女境に化粧台あり。体重計はTANAKAの矢印型の針のちょっとレアでレトロなアナログ体重計。
早速洗い場へ。2段型に高窓があって水色に塗られているところを除けば水回りの構造は東京の銭湯とは全く違う。男女境に長く浴槽が配置されていて、境壁には奥と手前に2つのタイル絵、どちらも洋風で手前はミロのビーナスのような像も建つ湖畔の景色、奥は最後の晩餐のような人物の集合図。浴槽は3つあって、手前が浅湯、真ん中が緑の薬湯(ココだけが45℃ぐらいある)、で一番奥がまた浅湯。小さな岩がまわりに散りばめられていて、奥には裸婦の持った壷からお湯が注ぎ込まれている。水の入ってない水槽にも洋風枯山水が・・・。。
カランは右壁一面と浴槽に平行して3本の短い島カランが縦に並んでいる。カランの配置は3−3−3−3−3−3−3−3−10の変則。カランはWaguri製と温泉マークのボタン式が混在している。湯温、湯量は良好。最後に正面壁にはアルプスの山並みのような小さなタイルのタイル絵。タイルの張られた円柱あり。浴槽のあちこちに鉄柱が立っていて、ローマ神殿のよう。受け皿のような飾り物が付いている。正面壁上のほうに家の形をデフォルメしたようなデザイン(水色のペンキで描かれている)が施されている。窓にはステンドガラスのようにシールが張り巡らされていて、洋風に飾られている。あとで聞いたらご主人の趣味とか。銭湯というのは天井が高いし、教会ににていることにここへきて気づいた。だからステンドグラスも妙にマッチするのだ。
というわけで、天神湯は調和中期的レトロな一軒家銭湯だが、東京の銭湯とは全く趣の違った湯治場的銭湯だ。実際、昔は黒湯の温泉だったらしいが、パイプが詰まってしまってやめてしまったとのこと。後でお聞きしたら昭和30年築とのこと。そばに天神様があるから是非よっていってくださいと・・・(残念ながら先を急いでいて寄れず)。落ち着いた雰囲気の感じのいい銭湯。
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