新栄湯


【2004.7.4】  
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新栄湯
豊島区池2−21−1
03-3971-1883
15:45-24:00
、月曜休/26日は営業、番台。
JR山の手線の池袋駅東口で下車。池袋5差路を越えてまっすぐ西へ進み、5つめぐらいの路地を右折してすぐの左側。池袋駅から5分。


コメント:池袋駅から歩いて4-5分のところにこんなにディープな昭和レトロなエリアが残されていたとは今更ながらに驚いた。新宿にしてもそうだが環状線の外側というのは比較的開発が遅れ気味であったのは確かだが、それにしてもあまりにも駅のすぐそばだし、何だかここだけ取り残されているような感じもあり、上海の路地裏を彷彿とさせるような異空間だ。
さて、新栄湯。このようなディープなエリアの正に象徴のような超レトロ銭湯で、ビルの谷間ににょきっと煙突を突き出している。ここまでレトロなというか前の時代の遺残物(愛着を込めて)とでも表現したくなるような銭湯もほんとうに珍しい。いったい何がそうさせているのかといえば、営業中だというのに暖簾もなく、玄関前にはごみ箱や廃棄物が積み上げられているばかりか、玄関の中も(立派な富士山のタイル絵を覆い隠すように)ダンボールやらほこりをかぶった傘やら何だかわからないもの(といってしまっては失礼かもしれないが)などが無造作に散乱しているからだろう。
玄関を開けると右手に番台。外の感じからは番台に座っているのはきっと100歳も近いような老婆に違いないと思いきや、けっこう元気そうなおじさんで(初夏ということもあって)奴に猿股のようんな涼しげな格好で、番台上にあるテレビを見上げていた。
脱衣場、すごいレトロ。暗くて高い天井は確かに立派な(いや立派だった)折り上げ格天井なのだが、左手前の角は爆弾が落ちたように穴が開いている。周囲を取り巻く高窓はすべて昔ながらの木製のもので、なんの手も加えられていない様子。このような古典的なまんまのものを目にすることができるのは東京の銭湯ではもうむづかしいのでは?床もかなり来ていて、ぎしぎしときしんで乗っかると少し沈みこむところもあり、すっぽ抜けるのではないかと心配になるほど。男女境の壁の上には、戦前的なレトロな電光掲示板タイプの看板類(定番の質屋や医院の宣伝に混じって、池袋らしく実演オールナイト何とかとか、ナイトライフショップ何とかなどの怪しげなものもある)。また、壁の端に取り付けられた真っ赤なサイレン付きの非常警報機?もやたら目立っている。
洗い場に入る。何となく薄暗いのだがタイルなどは比較的綺麗なものに貼り替えられているようだ。薄暗い原因は昔ながらの蛍光灯、クモの足かタラバガニの足を思わせるようなごつい鉄骨に取り付けられているものが数個。そんなに広くはないのになぜか島カラン2列、とはいえカランは3個づつしか付いていない(ここにはシャワーは当然付いてないのだが、横長の鏡はある)。カランの配置は5-3-3-3-3-5で、壁側はシャワー付き。風呂桶台は棚状のでっぱりがあるだけで、これも東京では珍しいのでは。
正面には一応定番のペンキ絵があるのだが、かなり古くて「上州、老神、平成9年9月9日」とあるが、9-9-9というのもなんと言うか・・・。絵は早川師によるもの(珍しく?早川画と書いてある)で、渓流から段差のように流れ落ちる短い滝と、最奥部に吊り橋、手前右には長滝が描かれており、よく見るとなかなかの力作だ。そして次に浴槽だが、浅・深の典型的な2槽。特に深湯にはジェットや泡が一切無く、水面が透き通るように静まり返っている。これに対して浅湯の方には小さな泡が少しだけぶくぶくと湧き出している。湯温は43℃弱。
最後に男女境の壁、これが実に見ごたえのあるタイル絵が3服。モチーフは奥から「海岸沿いの松林に帆かけ船」、「富士山」、そして右端のものはかなり消えかけているが「五重塔」らしきものが描かれているようだ。すばらしいのは周囲がきれいなマジョルカタイルの額縁で覆われていることだ。これは前述の玄関正面富士山のタイル絵も同様だ(詰まれているダンボールを大胆にもがさっとどかして鑑賞した)。
長くなったが、そんなわけで新栄湯は池袋真裏にあって今なお異彩を放ちつづけている超レトロな意空間的銭湯だった。いいものがいっぱいあるのだから、磨けば光る「埋もれた珠玉」のような銭湯だ。しかし何となくだが、次世代に継がれて継続していく予定が全くなさそうな気配で、「構わなければ玄関周りとかちょっとかたずけさせてもらってもいいですか?」と言ってしまいたくなるようなそんな状態だ。言い忘れたが玄関前に配置された3つの巨大な置き石も見事で圧倒された。

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