訪問記 【2009.3.29】
花道のような路地の奥にひっそりと佇む四角い看板建築の清楚な感じのモダンレトロ銭湯だ。何と戦後まもなくの創業で「60年近くありがとうございました」と書いてある(途中建て替えしているのか)。玄関周りもあっさりしている感じ。下足箱はサクラのG、引き戸から中に入ると背の低い番台で、横に板を張ってあって横が見えないように工夫されている。男女境は鏡壁。天井はフラットだが比較的高い天井。島ロッカー1列。手前には坪庭(石がいくつか配されている、前は池もあったのかという感じ)と縁側もある。トイレは中。縁側の手前にベンチあり。体重計はHokutowの大型のアナログ体重計。
浴室へ。ああ、早川さんの富士山のペンキ絵なんだ。19年3月29日、伊豆海岸、早川と書かれていて、明日でちょうど2年(それで明日廃業にしたのか)、この銭湯では3月が区切りなのかな。この絵が男女に跨るように富士山が描かれていて、後は海岸線で岩に水が弾け飛ぶおなじみの絵。でも何となく海岸線が長くてちょっと落ち着いた感じがする絵だ。
島カランは2列もある大型の銭湯。カランの配置は7−5−5−5−5−5、立ちシャワーブース2基。カランは5角、赤青の和栗製。桶はケロリン黄桶で、椅子はM字緑椅子(大型)と普及版が半々。男女境には横長のタイル絵があって洋風な山並みと湖水が描かれているのだが、とても珍しいのは壁全体が四角い豆タイルで、そのうちの一部がタイル絵、つまり絵と壁の境なく壁に移行している。これはめずらしい。それからここの最大の特徴は天井。典型的な東京二段式ではなくて、まんまるドーム天井。そのドームの周囲に8つの窓が付いている。この形式は東京にも数軒みられるが、ここがそうだったとは・・。外からは全くわからない。浴槽は深湯、浅湯の2浴槽なのだが、大型銭湯のため浅湯の長いこと、まるでプールのようだ。正面壁のペンキ絵の下も四角い小さなタイル貼りで、イカのような魚のようなものがずらっと並んでいるデザイン。これもなかなかユニーク。この小さな四角いタイルのタイル絵はおそらく創業当時のもので、当時としてはかなりモダンだったんじゃなかろうか。浅湯の中央にお湯の注ぎ口がある。深湯にはバイブラ。
そんなわけで、結構ここは見どころが多い銭湯で、静かで妙に落ち着くいい銭湯だ。ここが終ってしまうのはもったいない。早川さんのペンキ絵もあって、レトロファン満足の癒し型銭湯だ。玄関でお客のおばあちゃんに話しかけられ、終ったらこまるねえなど(他所から来たものと思ってない)。線路の向こうもう一軒あるらしいよ、と親切に教えてくれた(紅梅湯のことかな)。
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