訪問記 【2008.12.16】
今日は大田区は蒲田の南にある唐破風屋根のレトロ銭湯、末広湯へ。そしてここでお遍路スタンプ満願(88湯)達成、88湯目にふさわしい見事な瓦屋根レトロ銭湯だ。ここの唐破風は大きくてゆったりしたカーブを描いていて、男性的な意匠。オリジナルの紺地の「末広湯」と書かれた暖簾も男っぽい。自動販売機はあるもののコインランドリーはなくて築地塀が健在。坪庭から岩山がごつごつした岩肌を見せている。女湯側に横に小さなマンションが建っているので目隠しの衝立が高々とそびえ立っている。これが手前がむしり取られたように斜めに削られているのが印象的。
玄関入ると典型的な構造、左右に下足箱(松竹錠)があって、正面は傘たて。引き戸はアルミ製に代えられているが入り口や番台上は昔ながらの木製の造り。脱衣場に入ると右手に番台、これが結構年代物で、お金を置くところがえぐれてる。なかなかの骨董品だ。天井はもちろん折り上げ格天井で、左手前には引き戸越しに坪庭、例の岩山があるが、池などの造作はない。島ロッカーはなくて、真ん中にはテーブルが置かれている。男女境は鏡壁、冷蔵庫は縦長。体重計は体重・身長のスケール表付きのレア物のアナログ体重計(制作会社不明)。柱時計はない。演歌が流れていて、親父さんは新聞を読みふけっており、言葉も少なめで、建物の感じ同様男っぽいといえばそういう感じ。
洗い場へ。正面壁は早川さんのペンキ絵で、ラッキーなことに描かれているのは富士山。平成20年5月24日、西伊豆と書かれている。左側にとがった岩が複数描かれていて、真ん中に水しぶきが上がっている(ちょっと珍しい構図)。富士山は男女に跨るように描かれているので、女湯側からも見える。女湯側は配置からして西伊豆ではありえないから三保の松原あたりだろうか、と想像する。ここは嬉しいことに男女境壁に3服の九谷のタイル絵があり、右から富士山、真ん中が鯉と金魚が泳ぐ図、左が高台に建つ灯台と海の図。けっこう下の方に長いタイル絵で、後から付けられた鏡で下の方が隠されている。でもタイル絵の富士山の下の方に英語でH.Shibataと書いてあるのだが、これって落書きじゃないよな。英語のサインで始めてみた。
カラン周りのタイルは比較的綺麗な物に張り替えられていて、浴槽の淵も石張りと豪華。島カランは1列でカランの配置は8-8-8-8(間隔が短い)。右のカランが2つ潰されていてもともとは10個。カランは和栗の5角茶だが、一部は角の赤・青が混在。桶はケロリン黄桶。椅子が普及版。湯温はやや温め・湯量はまずまず。浴槽は古典的な浅・深湯で、深湯にはぶくぶくのバイブラと電気湯、浅湯には4点ジェット2基あり。天井が半円形で珍しく2段型でない。煙突から煙が出ていなかったんだけど、あと少し短く切られているようだったんだけど、燃料はガスだろうか。お湯はちょうっと温めだったんだけど、いいお湯で体が赤くなるぐらい。
そんなそんなわけで、銭湯大国鎌田のやや南のはずれにある唐破風の末広湯は、築地塀も健在、格天井あり、重厚な番台あり、岩山の坪庭あり、レトロな体重けいあり、見事なっペンキ絵、タイル絵ありと、お遍路88軒目にふさわしい末広湯と屋号もめでたい嬉しい銭湯だった。
そうそう、入り口には近所の商店の猫が遊びに来ていて、入るときも出るときもずっと玄関前の真ん中(暖簾の下)で寝そべっている。風呂帰りのおじいさんやおばあさんがみんな猫をなでなでしてかえるのだが、結構嫌がらずに座っている。というかなでてもらうために座っている感じ。そんな光景もほのぼのする昭和レトロ銭湯だった。
|