町田 忍著
早川書房
(初版 2006.1月)
定価1600円


  • 昭和レトロ商店街  ロングセラー商品たちの知られざるヒストリー
銭湯の研究でも有名な庶民文化研究家、町田忍氏による最新の執筆本で、もともとは包装業界誌「PACKPIA」(日報アイ・ビー)に連載中のコラムに加筆して完結させたもの。「商店街」と銘打って、「このたびは昭和レトロ商店街へお越しくださり、まことにありがとうございます」というくだりで始まるところなど、町田の小粋な洒落っ気を感じさせる。
本文の構成としては、1つのテーマについて見開き2ページづつにまとめられているので大変読みやすく、まるで1つのテーマを1つの仮想店舗に見立てているようで、商店街の隣のお店に移動する感覚で次のテーマに入っていくことができるところがおもしろい。また、テーマ毎にきれいな写真が添えられていて、あたかもお店に並べられた商品を眺めているような気持ちにさせられるあたりも心憎い演出だ。
内容的には、昭和の時代のもう忘れかけていたようななつかしい商品の数々が余すところなく取り上げられており、かつて「何でだろう」と不思議に感じながらも放ったらかしておいたような素朴な疑問の一つ一つに対して町田の鋭い眼光が注がれ、徹底的に調べ上げられた上で、おもしろおかしく解説が加えられている。
特に町田コレクションに関して言えば、納豆のラベルとバナナのシールについては、その蒐集品の数と種類の多さには眼を見張るものがあり、けっして他の追随を許さない品揃えなのだ。ケロリン、正露丸については今さら言うまでもなく、紛れもなくこの分野の第一人者であり、また日本最古(いや世界最古?)のコーヒー缶、珍品のラムネ瓶(およびその封印紙)を保有していることも特筆に値する。
町田自身も本文の中で、「何か昔の友人にでも会ったような気分」と何度もコメントしているように、「頑固に昔からの姿(かたち)を(変えずに)守り続けている商品たち」に対して町田が抱き続けている強い友情と熱き思いがこの一冊の本の中に凝集されており、読むものをしてぐいぐいと惹きつけて止まないのである。


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