下りの疲労
 
 
 登りに比べて,下りは楽だろうか?
 
 山の経験がある人はわかると思うが,下りはきつい。登りはいいが下りがいやだという人も多い。
 
 
 登りと下りでは何が違うのだろう。
 
 極論すると,登りは「心拍のきつさ」,下りは「筋肉のきつさ」だということができる。
 
 つまり,きつさの種類が違うのである。
 
 
 登りの「心拍のきつさ」は大脳が感じることができる。きついと感じることができる。
 
 しかし,下りの筋肉の損傷はそのときは感じられないことが多い。時間が経ってから,

 筋肉痛という形であわわれて気づくことが多いからだ。
 
 だから,山登り全体を通して,
 
 「ああ,あの急坂を登ったときふんばったから, こんなに痛いんだ。」
 
 と,勘違いしてしまい,下りの筋肉損傷に気づかないことも少ないないようだ。

 
 
 筋肉が壊れたときの炎症の痛みが筋肉痛である。
 
 筋肉が壊れると,血液中にクレアチン燐酸キナーゼ(CPK)という物質ができる。

 下の表を見ると
   

 
 下りでCPKが増えているのがわかる。つまり,筋肉の損傷は下りに起きていることになる。
 
 以外な感じもするが,普段運動をしていない人は,次のような実験をすると実感できるらしい。
  
 
 1日目・・・ビルで下りは必ずエレベーターを使う。登りは必ず階段を使ってみる。
 
 2日目・・・筋肉痛の様子を見る。
 
 3日目・・・今度は,下りは必ず階段を使い,登りではエレベーターを使う。
 
 4日目・・・筋肉痛の様子を見る。

 
 これをやると,4日目に筋肉痛が来るらしい。
 
 
 (私はためしたことがない。だって,職場にエレベーターないもの(笑))

 で,着地したときの衝撃力を見てみると,
 
 階段を下るときの足にかかる衝撃力は,平地をジョギングしているときの衝撃力よりも若干強い。
 階段でこれだから,荷物を背負って,階段より高い段差を何も考えずに飛び降りていると,その衝撃力は
 相当なものとなる。

 また,いろいろな条件下での衝撃力を見てみると,
 
  大きな段差は2回に分けて,筋力に自信がない人はストックを利用すればよい,荷物が重い時ほど,ゆ  っくりと下った方がよいことがわかる。

 
 下りのために技術をまとめてみると,
@ 着地の衝撃を少なくするように,膝を柔らかく使って着地する。
A ストックを利用して,衝撃力を小さくする。
B ザックを軽くする。30cmの段差では重さの2倍の衝撃力がかかる。つまり,下りでは,10kgのザックは20kgに,20kgのザックは40kgの負担になる。無駄な荷物は下りの負担となる。
C 自分の体重を軽くする。笑っちゃいそうだが,そりゃそうだ。太ってもやせても膝は同じつくりだもの。

 
参考文献 「登山の運動生理学百科」山本正嘉著 東京新聞出版


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