水分補給
 
 山登りに水を飲まない人はまずいないと思う。
 
 では,水は何のために必要なのだろう?
 
 まずは,山登りの際の体温の上昇について見てみよう。
 
 気温38度,湿度30%の中で6時間歩行した実験の結果である。
  
 

 
この表からわかるように,水をとらないとしたら,早い段階で疲労困憊となってしまう。
 
 興味深いのは,水を自由にとっても6時間後には疲労困憊となっている点である。つまり,自由に水を
 
飲むということは,体の欲求に答えているのだが,体調の面からいうと万全とはいえないのである。
 
水は意識して少し多めにとるということが,水分補給のコツといえるようだ。
 
 
 では,水をとらなければ,どんな症状が身にふりかかるのだろう。
@ 熱疲労  
持久運動の能力が大きく低下する。血液中の水分量が減って血圧が下がり,
 
筋への燃料供給,酸素供給ができなくなる。心拍数も高くなる。
 
疲労感,倦怠感,息切れ,めまい,吐き気,低血圧など。
 
A 熱射病  
体温が上昇し続け,熱射病になる。汗がでなくなるため,体温の上昇は加速する。
 
運動の失調,意識の混濁が起きる。
 
B 筋肉のけいれん  
筋肉中の電解質のバランスがくずれ,けいれんが起きる。ふくらはぎとふとももの
 
筋肉で起きる。スポーツドリンクを飲むとよい。
 
C 血栓  
血液中の水分量が減るので,粘性が高まり,血液が固まりやすくなる。中高年では,
 
動脈硬化や脳梗塞,心筋梗塞起こりやすくなる。
 
D むくみ  
それ以上体内の水分を減らすまいと,尿を減少させるホルモンが出る。このホルモン
 
は運動もやめてからも,12〜48時間は出続ける。これため,飲んだ水が排出されず
 
,体内に蓄積し,むくみとなることがある。
 
 水分補給は山登りにとって,命にかかわる大切なものである。
 
 少し多めにとることを心がけたい。とくに中高年にとっては,大切な山登りのコツだと覚えておきたい。
参考文献 「登山の運動生理学百科」山本正嘉著 東京新聞出版


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