山登りのエネルギー
 
 山登りは運動である。
 
 運動とは,筋肉で体を動かすことである。
 

 では,そのエネルギーを我々はどうやって生み出しているのか。
 
 
 エネルギーは,食物栄養素(炭水化物,脂肪)を酸素で燃やすことにより生まれる。
 
 
 つまり山に登る運動というのは,体の中の炭水化物と脂肪と酸素により生み出されているのである。
 
 
 酸素は呼吸により,体内に取り入れることができる。
 
 が,この炭水化物と脂肪は,その性質を比べると,とても興味深い性質がある。
 
 
 
炭水化物
 
脂肪

パワー
 
大きい(脂肪の2倍のパワー) 小さい(炭水化物の1/2のパワー)
 
体内の貯蔵
 
少ししか蓄えられない
膨大に蓄えることができる
 
燃えるための
 
酸素の必要性
 
酸素は必要ないので,無酸素性運動,
 
有酸素性運動の両方で利用可能
酸素が必要であり,有酸素運動のときだけ
 
利用可能
 
利用できる器官
 
筋,脳,神経系のエネルギー源 筋のエネルギー源
(脳,神経系のエネルギー源には通常時は
 ならない)
 
燃えやすさ
 
 
脂肪と一緒でなくても燃える。
 
高強度の運動でもよく燃える。
 
乳酸が出ても燃える。
 
 
炭水化物と一緒でないと燃えない。
 
高強度の運動ではあまり燃えない。
 
乳酸が出るとあまり燃えない。
 
 
中程度の運動で
 
供給できる時間
 
1.5時間 7.4日

 この表をよく見ると,山登りでの2つの栄養素の大切さがよくわかる。

 つまり,脂肪と炭水化物を半分ずつ混ぜて,エネルギーを出すとしても,3時間経てば,炭水化物はなく
 
なり,エネルギー源は脂肪がたよりとなる。
しかし,その脂肪は,筋のエネルギー源となるが,脳の力には
 
なれない。膨大に蓄えられているはずの脂肪は燃やしたくても,実は炭水化物が一緒でない燃えない。

 そう,3時間も山登りを続けていれば,脳の働きは悪くなり,筋肉は動きづらくなってしまうという
 
ことである。

 
実は体は防御反応があり,この炭水化物がなくなったら,代替えのものを使って脂肪を燃やしてエネル
 
ギーに変えようとする。代替えとはたんぱく質である。炭水化物がなくなった後は,大切な筋肉を食いつ
 
ぶしながら,エネルギーを作るはめに陥ってしまい
,鍛えるどころか筋肉を痛めることになってしまう。
 
 
 ということは,山登りにおいては,炭水化物を補給しながら歩くことで,膨大に蓄えた脂肪をも利用して,
 
エネルギー源とすることが可能となるのである。
 
 
 では,炭水化物とは何か?大きく分けると,でんぷん類糖類に分けられる。
でんぷん類 糖類
 
どんなもの
 
ごはん,もち,麺類,パン,いもなど 砂糖,あめ,チョコレート,キャラメル,ジュース
 
速効性
 
すぐには効かず,血糖値をゆっくり上げる。 すぐに効き,血糖値を上げる。
 
使う用途
 
腹持ちがよい食べ物で,朝食,行動食に
適している。ご飯や麺類は,パン,いもよ
り腹持ちがよい。
ばてた時に効く。しかし,運動前に食べ過ぎると
体は血糖値を下げてしまうので,かえって疲労し
やすくなる。


 などと難しく見てみたが,簡単にいうと,「腹が減った状態で歩かないこと」,
 
ばてたら,甘いものを口に入れると元気になる
ということである。
 
楽しく食べて,楽しく歩きましょう。(笑)
参考文献 「登山の運動生理学百科」山本正嘉著 東京新聞出版


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