2012.08.26 白嶽(白岳)
 
一人で登る


洲藻白嶽登山口〜60分〜西岩峰〜60分〜洲藻白嶽登山口
  
距離約3.5km 累積標高差450m 荷10kg 時間約2時間30分


岩のテラスから山々を眺める。

最近、白嶽で事件があった。
「18日、白嶽登山中の韓国人観光客28人のうち、
11人がスズメバチやアシナガバチに顔や手を刺され、7人が救急搬送された」

というものである。

白嶽に久しぶりの登りたいと思っていたのだが、
スズメバチの巣がある白嶽に向かうのはとんでもない。

しかし、いろいろ調べて見ると、一行は上見坂登山口から1時間くらいのところで
被害にあったとある。

なら、鳥居より上見坂側の登山道にスズメバチの巣があるのだろう。
気をつければ、洲藻登山口は大丈夫か。

あまりの天気のよさに覚悟を決める。

スズメバチの習性を鑑み、何かあったらすぐ下山と心を決め、白嶽に向かうことにした。
スズメバチ恐怖症だった私からすると、大胆な決断だ。

スズメバチは凶暴であるが、その凶暴性は巣の近くに何者かが接近したときと、
自分や仲間に危害が加えられたときにしか発揮しない。
いきなり、遠くから飛んできて、刺すということはまずない。
まずは敵の近くを旋回し、続いて敵と見なせばカチカチと攻撃前の警告音を発する。
つまり、スズメバチが執拗につきまとってきたら要注意である。
しかも、それが複数であれば、即撤退である。

スズメバチにも偵察役や、仕事をさぼってうろちょろしている奴もおり、
一匹だけがふらふら飛んできても、慌てて手で払ったりして、
攻撃されたと思わせないことが肝心である。

また、大きな声や大きな足音の振動はスズメバチを刺激することもある。
巣から出た偵察バチは、危険を察知すると、警報フェロモンを放出して、巣にいる
他のスズメバチ達に、緊急スクランブルを要請する。そしてこの警報フェロモンは
10種類の化学物質からなるのであるが、そのうち3つの物質が特に重要で、この
3つが同時に発せられることが警報フェロモンとなるのである。ABCの3つの
フェロモンが合図になるということは、ABが発せられても警報にはならず、まっ
たく正確に伝わる警報システムなのである。フェロモンはスズメバチにとって優れた
言語の役目を果たしている。そんなことを考えていると、スズメバチも闇雲に攻撃
するのではなく、理由があって攻撃するということがよくわかる。


また、黒い色をねらって攻撃することはよく知られている。
野生の動物を天敵と感知するためという説もある。

これらの習性を考えると、団体で歩くときは要注意である。
スズメバチを刺激しやすいという意味では、人数が多いほど不利になる。

う〜ん、スズメバチのことを語りだしたら止まらない・・・・

で、今日の歩き方は、

1 スズメバチに気づかれないようにひたすら静かに歩く。
2 いざ、何かあっても対応できるように、余裕を持って歩く。
3 スズメバチのホバリングに遭遇した時点で登山中止。


と、いう作戦である。改めて見ると、ようこんな作戦で登ったなあと思うが・・・

まあ、一週間前の事件なので、それなりの処置がしてあるかもと薄い期待を
して登山口に着くが、特にその事件についての掲示もない。
おまけに登山口には一台の車もない。
およよ、スズメバチ被害でみんな来ないのか・・・

登山口で今日の作戦を自分自身が確認し、登り始める。
歩き出すと、今日は風が強いことに気づく。
風は大きな味方である。
こちらの気配をたぶん消してくれる。
また、スズメバチの正確なホバリングを阻止してくれる・・・はず・・・

8月だというのに、涼しい登山道歩きとなる。
数日前の雨のおかげで、沢音が気持ちよく響く。

ああ、白嶽の登山道はやっぱりいいなあと久しぶりの感触である。
静かなゆっくり歩きを心がけながら、羽音に神経を研ぎ澄ます。

少しずつ少しずつ高度を上げていく。
鳥居まで到着したが、スズメバチとの遭遇はなかった。

さあ、ここからは急登となる。
気配を察しようと歩くが、スズメバチの気配はない。
時折、涼しい風が体に当たって気持ちよい。
8月の低山とは思えない心地よさ。
次第にスズメバチへの警戒は取れていった。

西岩峰に着くと、かなりの風が吹いている。
立っているのはちょっと怖い。
目に当たる風が強くて、まゆげがかゆい。
このまゆげがかゆくて目が開けられないのも久しぶりの経験だ。
目を開けようとして、自分の顔に筋肉が右に左に不自然に収縮する。
きっと、人には見せられない顔である。

西岩峰にたたずんでいると、スズメバチが飛び交っている。
上昇気流にのって山を越えているのか、不審な人間を見つけてこっちに
向かってきているのか、定かではない。とにかく風が強くて、思った方向に
飛べないようである。こっちに向かってきたスズメバチが、
ターンと風に殴られ、90度別の方向に飛ばされていく。

あまりの風の強さに岩にテラスに降りるが、ここでもスズメバチの姿は
よく目にした。刺激しないように、眺めを楽しんだ。

スズメバチの風評被害のせいか、久しぶりに誰とも会わない白嶽登山となった。
静かにに歩ければ島の山もまたいいなあと思った今日だった。

ただ、登山道に巣がなかったかどうか確信はもてない。単独で静かにあるけば
案外大丈夫かもという感じである。たまたま今日は巣を刺激しなかっただけか
もしれない。これから秋にかけて、スズメバチもマムシも攻撃性が高まる頃である。
自分なりの対策をとって、山を楽しみたいものである。

あ〜、いい山歩きだった。








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