2011.02.10 経ヶ岳〜舞岳
 一人で登る


八丁林道駐車場〜1時間40分〜経ヶ岳〜40分〜舞岳〜50分〜八丁林道駐車場
  
距離約6km 累積標高差750m 荷11kg 時間約4時間


経ヶ岳山頂周辺は雪と氷の世界
  
所用で福岡に出た。それも3連休。このチャンスを逃す手はない。
今、一番行きたい山はと考えると、経ヶ岳が浮かんできた。
福岡で早朝6時にレンタカーを借り、一路黒木へ。
今回、やっとETCカードなるものを作ってみた。
休日1000円の恩恵に、初めてあやかる。

ゆっくり一日、多良山系を歩いて、夜中のフェリーで帰るつもりだったが、
折しも暴風雪警報が出るような大荒れの天気。
急いで登って、最終の飛行機で帰れるように算段する。
そうなると、短い距離で我慢である。
金泉寺まで距離を伸ばして慌てて帰るよりも、舞岳ルートで下山して
ゆっくり歩いて、山を感じる歩きに変更することにした。

八丁林道駐車場に着く。何台か車があるかと見てみるが、
どうやら私が一番のり。この天気だもんなあ。
 

 
ホテルを出るときは、背広姿だったものだから、ここで山使用に着替えである。
背広姿でザックを抱えて移動するわけにはいかないので、
今回思いついたのが、ホテルに荷物を送る方法である。
送料は1000円程度、ホテルには事前に預かってもらえるか確認の電話を入れた。
そして、登った後も、宅急便で自宅に送る。
この方法だと、島からの荷物輸送をに悩まずに済み、気楽に山に足が向けられそうだ。

登山道を歩き出す。山小屋八丁からたなびく木をくべる煙。
この匂い、この木を焦がす香りが心をくすぐり、なんとも懐かしい心持ちにさせる。
黒木の里の平和な日常の営みを感じさせるのだ。
そしてこの人里の豊かな香りは、登山道を駆け上がり、
標高を上げていくに連れ、少しずつ少しずつ薄れて、やがて消えていく。
人里から自然の中への厳しさに変わっていく。

「手強いと称される経ヶ岳に登れるようになりたい。」
山登りを始めたときの、ひとつの目標だった。
初めて経ヶ岳に登ったとき、ペースも考えずにがむしゃらに登ったものだから、
大払谷で具合が悪くなった。恥ずかしながら、吐き気をもよおし、腹も下した。
休まないと足が出ないものだから、頂上まで2時間を要した。
完全に山に負けた、経ヶ岳との8年前の出会い。

 


それから、四季折々、私の山登りは経ヶ岳とともにあった。

大村在住時、4年間で50回程登った。
体と心を鍛え、つらいときにはその包み込む自然にたくさん癒してもらった。

登山道を歩いていると、当時のさまざまな記憶が蘇る。
登山道の岩に、曲がり角に、手をかける木々に、いろんな場面やいろいろな人々の顔や声がよぎる。

ただ、ただ歩くのが懐かしく、うれしいのである。
当時は、今週も経ヶ岳しか行く時間がないと内心愚痴をこぼしていたものだが、
今にして思えば、なんと贅沢な愚痴であろうか。

ツゲ尾に着くと、予想はしていたが、雪の世界。
正確にいうと、ずっと前から積もっていた雪が氷状になり、
その上にパウダーのように、今日の雪が降りかけられている感じである。
 

 
風の冷たさと横殴りの雪を楽しみながら、頂上を目指す。
頂上に着くが、今日はガスが立ちこめ、展望はなし。
でも十分。経ヶ岳山頂にまた来れた自分がうれしい。
  

  
下りはアイゼンを着けた。アイゼンは着けなくても大丈夫と登りは付けなかったが、
よく考えてみると、この冬、最初のアイゼン。
この期を逃しては付ける機会がなくなってしまう。

下りの氷道にはアイゼンは効果てき面。
歯がしっかり氷をとらえ、小気味よく歩を進めることができる。
 

  
 舞岳の下りに差し掛かる。
舞岳を下りに使うのは、実に4年ぶり。
あれっ、ここは尾根沿いだったか?尾根を巻くところだったか?
雪でルートが見えないものだから、曖昧な記憶を辿りながら歩くのも新鮮で楽しいものだ。

お気に入りの岩場で、雲よ晴れろと休憩するが、
雨はやまず、降りしきる。
また来るよと、そっと岩場を後にした。
  

  
久しぶりの舞岳の下り、その急勾配がうれしい。
当時よりゆっくりな歩みで、とにかく滑らないように用心しておりていく。
なかなか下りの筋肉を鍛えられているという実感を感じさせるこの道が大好きだった。

八丁林道駐車場に12時前に着いた。
駐車場で、湯を沸かし、昼食をとる。
そして、平谷温泉で冷えた体をゆっくり温めた。

「ああ、経ヶ岳に行きたい」とここ数ヶ月の思いが叶った。
しかし、歩いていることが、夢のようでもあるのだが、
意識は当時のものになっている。
帰ったら、まだ幼い子ども達が家に待っているかのような錯覚の中、
時間が戻ったような気分を味わった経ヶ岳、舞岳だった。




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