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朝も外は曇り。どうしようかと思いつつ、身支度をする。
車に荷物を積み込むと、結構降り出してきた。
息子に
「降ってきたからやめようかなあ」
と言うと、
「せっかく準備したんだから行けば・・・」
と言葉が返ってくる。
そうだなあ、行ってみるか。
駐車場に着くと、結構な雨あし。
有明山への登山道は、山腹と稜線歩きなので、沢の増水の心配をする必要がない。
雨の日でも安心して歩ける山である。
歩きながら、雨の日の歩きの楽しみは何かなあと考えてみる。
ひとつは、雨の日にしか味わえない色と音と香りである。
濡れた岩肌や木の幹はいつもとちがった色合いで光っている。
ザーと鳴り続ける雨が打つ音は、いつの間にか日常にいた意識から非日常への空想の中へといざなってくれる。
雨の日には土の匂いが一層濃くなる。
ひとつは、生き物たちがなりを潜め、自分と山のみの世界に浸れることである。
大嫌いなスズメバチも雨の中では出会うことがなく安心である。
耳のまわりを飛ぶわずらわしい羽虫も雨の日にはなりを潜めてくれる。
ひとつは、意識が登ることのみに集中することである。
ただ滑らないように前に進むことに集中する。
気がつくとさまざまな邪念が消えている。
もうひとつ、雨の日の楽しみは、山頂で見られる雲のスペクタクルである。
日にもよるが下界は雨でも、峰の雲が晴れて、幻想的な山の姿を楽しめることがある。
この雲の動きは見ていて飽きない美しいものだ。
今日の山頂も雨は小降りになり、雲の見え隠れが楽しめた。
雨の演出により、誰とも会うことの無かった山歩きもまたいいものである。
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