洲藻川源流〜(しらたけ)白岳
1人で登る  2009.02.07

 (登山道ではないコースがあります。コンパスと地図必携でルートを選びながら歩く必要があります。) 

  
場所 長崎県対馬市美津島町
地形図はここをクリック
断面図,概念図はここをクリック
標高 白嶽西岩峰519m
歩く標高差 累積 約700m 歩行距離 約7Km
所要時間 大人
5時間
洲藻登山口〜10分〜林道入り口〜15分〜沢分岐〜30分(ルート探しに時間を要す)〜沢からの登り〜60分(伐採のヒノキに四苦八苦)〜白嶽・上見坂登山道(洲藻表示板)〜45分〜白嶽神社鳥居〜30分〜白嶽西岩峰〜60〜洲藻登山口
駐車場 白嶽洲藻登山口に駐車可能
データ  
 
白嶽から上見坂に向かう登山道の途中に、「洲藻」への標識がある地点がある。
 
 
このルートで洲藻まで行けるのか試してみたいと以前から思っていた。やぶもまた楽しいこの冬場、登りにこのルートを探してみることにした。沢から地図とコンパスをたよりに歩いて、目指すはこの標識の地点である。

 
登山口に車を停め、今日は白嶽側ではなく、今来た道を歩き返す。10分ほど歩いて洲藻川の支流に沿ってさかのぼって行く林道に入る。数日前にまとまった量の雨が降っているので、水量もほどよく、穏やかな流れがとてもきれいである。沢音が心地よく響き渡る。林道を進むと、ほどなく左右の分岐が現れた。地図とコンパスで確認し、今日歩くルートとしては左の方が近づけそうなので、左のルートを選択する。

 
また10分ほど歩くと、左の沢に下りる道があった。ここから沢に入るか確認するためもうしばらくまっすぐ歩く。正面で顕著な尾根筋と突き当たったので、現在位置が確認できた。引き戻り、左の沢に下りることにした。今日は、このようにしばらくルートを離れて現在位置を確認して、戻って進むというような行程になりそうである。

 また、今日やっかいなのは、洲藻から目的の地点まで廃道状態ではあるが、登山道の名残があるかもしれないという点である。地形図だけをたよりに進めば間違いはないが、もしかしてこの道がその登山道かと思って混乱させられるかもしれない危惧がある。人間やぶよりも、やはり歩きやすい道を歩きたくなるのが人情である。

 
沢道に下りて、沢を右に左に徒渉しながら進む。そういえば沢を徒渉するのはどれだけぶりだろう。傾山以来、沢にはとんと縁がなかった。せせらぎを聞きながらの歩きは心地よい。

 
途中、右に入るはっきりした踏み跡があった。登山道入り口かとしばし確認タイム。しかし、ここを入ると目的とする場所へのルートとしては、無駄に歩く道となりそうである。このようなルートは通常作らないであろうと判断し、もうしばらく沢を進む。地図とコンパスを使い位置を確認するが、景色はまるで見えず、左右の勾配と谷の方向から現在位置を推定しながら歩いていく。沢も倒木が塞いでいたり、岩で荒れていたりして歩きづらくなってきた。

 
沢から少し左にそれた前方に空が見える。そこから、どこかの山が見えるかもしれないと思い、ルートを離れて山腹を歩く。大坂壇山の山塊が見えたので方向を確認する。植林がある場所にはところどころ、登山道では?と思わせる道が出てくる。しかし、しばらく歩くと道は消える。最後の頼りは、やはり地図とコンパスである。

 
沢に戻って再び詰めながら、右に登り始める山腹を探る。目的の標識まで、そう遠くないはずである。ここから、200mほど上がれば登山道に出るはずである。沢が詰まってきたので、山の登りに取り付くことにした。登り出したのは植林帯であるが、ヒノキが剪定、伐採され、四方八方に散乱していて。とても歩きにくい。枝を乗り越え、枝に腕や顔を打たれながらかき分けて必死に進む。

 
時間が経つとこのヒノキ地獄に嫌気が差してきた。もう藪こぎという状態ではなく、ヒノキの枝の中のラッセルである。少し避けると次の大きな枝が、それを乗り越えるとまた大きな枝が四方を囲む。転びでもすると、枝が足に刺さりそうだ。コンパスで歩きたい方向はわかっているのだが、枝の状態を見ながら進むと、行きたい方には進めない。少しずつ左よりにずれながら山腹を歩く。このずれから、現在位置の感覚が怪しくなってきた。たぶんこのあたりのはずという目安をつけて、あそこまで上がれば、どこかがわかると息を弾ませながら歩いていく。

 
やっとのことでヒノキの地獄から抜け出た。ほっとした。もうすぐ登山道のはずだ。が、登り上がった右にピークがあるぞ? ピーク? えっ、なんでここにピーク? そしてしばらく進むと小さな谷道がある。えっ、なんで谷? もう自分の中で混乱してしまった。地形図で確認する。自分が登っていたと思ったルートはひとつ前の山塊だったのか?ここからだと登山道まで結構あるぞ。 いやまて、そんなことはない。あのヒノキ地獄の前の現在位置確認は間違っていないはず・・・ 

 
自分の中での小パニックである。四方の地形を落ち着いてみるが、現在位置が特定できない。その瞬間、恐怖である。現在位置がわからない。迷ってしまった。一人の歩きはこんなときが難しい。いかんいかん、頭がパニックだ。気がつくと、突然の開けた場所。左は植林帯、右は自然林である。とにかく、一度座って、水を飲み、落ち着いて考えることにする。座ってみると、ここはなんともいい場所である。大きな木が広場の中央に主のようにそびえ、自然林が心地よい。ここにテント張るのもいいなあと想像しているうちに、気持ちも落ち着いてきた。とにかく北西方向に歩いていれば、いずれ登山道には出れるはずである。

 
気を取り直して登っていくと、尾根が見えてきた。あれっ、ここは、そうか。駆け上った尾根にはしっかり登山道があった。そして、目的としていた「洲藻」への標識の手前30mほどの地点だった。結局、たどりたかったルートを正しく歩いていたのである。それなのに、なぜに勘違いしたのかをじっくり地図を見て分析した。

 つまり、気づけば当たり前のことであるのだが、25000分の1の地図の等高線は10mの高さごとについている。今回の勘違いのきっかけになったのは、木々の中にあった10mに満たないピークの存在だった。おまけに中央に石が集めてあったりするものだから、すっかり顕著なピークだと思いこんでしまった。谷道についても同じである。よくよく見るとその谷の存在はかすかに地形図から読み取れた。一人というのは、ちょっとしたことで冷静さをなくすものだということをつくづく痛感し、反省をした。

 
迷って小パニックになったとき、もう一人での藪道ルート探しは止めなければという考えが頭をぐるぐるしていた。結局ルートを正しくだどっていんだとわかると、また、やってみようかと思っていたりする。山登りは、つくづく知的遊びであるなあと思う。さまざまな状況を処理して、判断し、選択していく繰り返しである。そして、その結果について、反省を繰り返して次回へと生かす、自分の進化が見てとれる遊びである。もちろん、それはすべて自己責任の世界でもある。

 
結局、この登山道にあった「洲藻」への表示については、現在はルートがないことがわかった。ヒノキの剪定で道はなく、沢も倒木などで荒れている。地形図とコンパス持参でなければ踏み込まない方が無難である。

 一時はどうなるかと思ったが、下山時は、次はどのルートに行こうかなと、考え初めている自分がいた。
 

 
駐車場から来た道を戻り、林道に入る。
 
 
 
せせらぎが心地よく、洲藻川の水は澄んでいる。林道の最初の分岐が出てきた。
 ここは左を進む。
 
しばらく林道を歩くと、沢に下りる分岐がまた出てきた。ここから沢沿いを歩くことにする。
 
 
沢沿いに進んで行く。ところどころ道の後があるが、すぐに消える。
 久しぶりに聞く沢音が耳に心地よく響く。
 
 
ヒノキの剪定地のラッセルが始まった。なかなか前に進めない。
このあたりから、現在位置の感覚が狂ってきた。
 

 
現在位置がわからなくて混乱したので、ここはザックを下ろして、気を落ち着けることにした。
この場所がなんとも木立の中の心地よい場所である。公園の中のような場所である。
ここにテント泊もいいなあと考えながら、気を落ち着ける。
 

 
登山道に戻ったあとは、白嶽西岩峰まで上がり、遅めの昼食とした。
未知ルート歩きは、心も緊張するのか、ここに着くまで空腹も感じなかった。
その状態で気を張ってがんばるうちに、無理がたたってバテてしまうという悪循環を生むのだろう。

焦ったときほど、座って休憩で、ちょっと口に入れる。
これは肝に銘じておこう。

またいい経験になった。
 
 

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