白嶽(しらたけ)
 1人で登る  2005.1.2
場所 長崎県対馬市
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標高 洲藻白嶽(すもしらたけ)
519m
歩く標高差 .累積470m 歩行距離 約3.8Km
所要時間 大人
約3時間半
登山口〜35分〜鳥居〜35分〜西岩峰〜10分〜眺めのよい岩テラス〜25分〜鳥居〜20分〜登山口
駐車場 登山口に7台ほど。あとは,途中の道などにじゃまにならないように駐車する。WCは洲藻の白嶽橋を渡ったところにきれいな公衆トイレあり。登山口にはないので要注意。
データ  幼い頃からずっと眺めてきた山。
 その山は,幼心に自然への畏怖を感じさせずにはいられないほどの威容を放っていた。
 石英斑岩の白い双耳岩峰は,ずっと昔からこの地の人々の生活をじっと見下ろしてきた。
 私自身,この山を眺めながら,春夏秋冬を感じ,さまざまな思いを巡らしながら,大人になった。
 人生の節目節目には,いつもこの山を眺めて思いにふけった。
 対馬が誇る霊峰「白嶽」。
 その姿から,古くから信仰の対象として崇められてきたこの山は,人々の生活とも繊細に結びついている。
 そして,麓には原生林があり,日本と大陸の植物が混在した深く貴重な自然を残している。

 
いつかは登ってみようと思いつつ,なかなかその機会がこなかった。
 そして,今日,やっと白嶽に登ることとする。


 
洲藻から車で入り,水源地を越え,洲藻川を横に見ながら標識通りに進むと,白嶽登山口に着く。
 この日は4台ほど停まっていたが,帰るときには10台以上の車があちこちにあった。

 
駐車場に車を停めると,すぐ前に滝がある。神聖な場所に踏みいるような威厳をもった滝だ。最初は植林された木の中の登山道を進む。登山道は整備され,階段状に木を横たえてあった。鳥の声を耳にしながら,進んでいく。やがて,階段状に道から大小の岩がごつごつとした道に変わる。この頃から,道はジクザクになり,路傍には天から落ちてきたような大きな岩が点在している。

 この日は前日の雪が残り,登山道の脇は白く化粧し,神聖な雰囲気を一層強いものにしていた。

 
白嶽神社の鳥居に到着する。まっすく行くと上見坂に,鳥居をくぐると,白嶽山頂に続く。白嶽神社の神事を行う人達であろうか,この日は家族でたくさんの荷物を持ち,この鳥居のあたりで拝む方々がおられた。塩と御神酒を備え,祈りを捧げていた。

 
鳥居をくぐると道は急登りとなる。木の根があらわになった道で,岩を登っていく。道は雪が氷ついていてとても滑りやすい。この岩場の道にはロープがしっかりつけてある。このロープは登山者用ではなく,山頂近くにある白嶽神社にお参りする方のために設置してあると聞いた。病気を治すがために白嶽神社に通う方もいるそうだ。

 
氷ついた道をロープを掴み,慎重に登っていくと,上から3人の方が降りてきた。どこのことばだろうと聴き入ってみる。どうやら,韓国語のようだ。
「アンニョハセヨ」
明るくおじさんが声をかけてくる。
近年,対馬への韓国の観光客が増えているらしい。この白嶽に登る韓国人も多いそうだ。考えてみれば,福岡よりも韓国が近いこの島である。今はビザも必要なく行き来できると聞く。

 
氷ついた道を登ると広場に着いた。ここからは西岩峰と東岩峰の間の岩場を登っていく。アイゼンをつけようかと思ったが,登りではまだ着けずに進んだ。何人かの人とすれ違う。みんな靴はスニーカー。そして驚いたことに数名,裸足で雪の岩場を歩いている。信仰のためにそうするのか,滑らないようにするためにそうするのかは定かでないが,島の人の凄さをちょっとかいま見た。そういう自分も島の人だが・・・・

 
岩場を登り,西岩峰を目指す。風が強くなった。道は雪道。行けるところまで行こうと思い,慎重に登る。そして,後少し。しかし,ここで迷う。雪で凍っているが,登るのは登れそうだ。しかし,下りは大丈夫か。西の岩峰はぐるっと一周するようにして登る。幅は50cmもないようなとても狭い道で断崖絶壁だ。雪で足を滑らせることは許されない。とても危ない道だが,昔から不思議と事故の話は聞かない。本土の山だと,鎖は必ず着いていそうな場所だが,それはなく,正直,肝を冷やした。正直,久しぶりに怖かった。雪の日でなければここまでなかった気もするが。

 
西岩峰に登ると,石が積んである。山頂に石を積むなどとんでもない。この石がくずれて人にあたったらどうするのだ。しかし,昔から石を持って登る風習があるらしい。標高を少しでも稼ぐとか,霊験あらたかなので台風でも石が崩れないから置くという話も聞いた。とんでもないという思いと,それでも神に守られてか,誰も怪我をしていないという事実を一緒に浮かべながらしばし考える。
ここ2年あちこちに山に登ってきたが,今までの常識では十分とらえられない山が白嶽である。

 
しばし山頂で風に吹かれ,絶景を堪能した後は,慎重に岩場を降りていく。この頃になると数名の方が登ってこられた。今日は無理して山頂には行かない人も多かったようだ。

 
広場まで降り,眺めのよい岩テラスに行き,眺めを楽しみながらおにぎりを食べた。
 横にはラジオを抱えたおじいさん,元気よく民謡を鳴らしている。

 昼食後,広場に戻ると,いつの間に集められたのか薪が寄せられ,焚き火を囲む姿があった。その傍らでは鈴をならしながら,神事が行われていた。

 
人々との生活と密着した山。それも白嶽の一面でもある。無病息災を願いお参りする人,縁結びを信じ訪れる人,大漁祈願に漁師も大勢でやってくるらしい。それほど,霊験あらたかに見える神秘的な山だ。

 この2年間,微々たるものではあるが,長崎,福岡,佐賀,熊本,大分の山に登ってきた。しかし,その山容と山頂での緊張感では,本土の山に決してひけをとらない白嶽である。九州百名山たるゆえんであろう。

 
 
洲藻から見た白嶽の姿。
この日はうっすらと白い雪をまとっている。
雪が少ない対馬では,とても貴重な白嶽の姿である。
 
 
ちょっとダートな道を進む。秘境に入っていくようだ。
登山道入り口に着く。
 
 
滝を眺めて,歩きだす。
 
 
大きな岩が点在する自然林の道。緩やかに標高を上げていく。
 
 
 
道はだんだん白くなる。
対馬で雪の中を歩くとは思わなかった。
 
 
白嶽神社の鳥居を過ぎると,木の根が向きだしの急坂となる。
 
 
ロープを掴んで登っていく。
 
 
 雪で凍った道を登りつめると,西岩峰と東岩峰の間に着く。
 
 
めざすは西岩峰。慎重に氷の道を行く。
 岩を回るようにして西岩峰の頂上を目指す。
 
 
そして,風が吹きすさぶ山頂に到着。
遮る物は何もない,数畳の山頂。

 
 
東岩峰の向こうに,対馬の山並みと玄界灘を眺める。
 
 
東岩峰と反対側。三角点が向かいの山のピークにある。
 
 
広場の近くでは,鈴を鳴らしながら新年の神事が行われていた。
 
 

下りは対馬では珍しい雪を眺めながら,ゆっくりと下山した。
 
 
霊峰「白嶽」
わが故郷の誇れる山であった。
 
 

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