成相山(なりあいやま)〜有明山(ありあけやま)
 一人で登る
  2009.01.24
清水山から見た有明山(左奥),右のピークが成相山
長崎県対馬市厳原町
標高 成相山 416m
有明山 585m
歩く標高差 .累積700m 歩行距離 約8Km
所要時間 大人
約4時間
八幡神社駐車場〜10分〜三の丸〜15分〜清水山(一の丸・本丸)〜25分〜有明山・成相山分岐〜15分〜成相山(416P)〜10分〜成相山三角点(392P)〜10分〜成相山(416P)〜15分〜有明山・成相山分岐〜30分〜有明山(山頂)〜60分〜八幡神社駐車場
駐車場 八幡神社に駐車できる。駐車料金400円が必要。ティアラにも駐車できる。90分無料、以降30分50円 。
データ  今日は厳しい寒さである。対馬市の朝の最低気温は、マイナス3度。
 朝起きると、風も強く、底冷えのする寒さだ。しかし、こんな日こそ山が楽しい。何が楽しいって、非日常が楽しめるのである。氷点下の山は、日常をちょっと越えた世界。寒いのはじっとしているときだけで、行動中は寒くはない。が、もちろん、凍えないための装備にぬかりはない。

 
今日は、有明山に登る途中に、成相山に寄ってみることにした。
 有明山に登るとき、稜線沿いの道に出るところで、成相山との分岐点がある。ここには、立派な標識があるので、道も立派にあると勘違いしそうだが、道はない。やぶ道である。

 標識のある分岐点を過ぎ、成相山への道へと分け入る。
最初の数十メートルは立派な道のようなので、この先も道が続いているのではと思って踏み跡をたどると、とても細い道となった。この細い道は北西側の山腹をたどっていく道のようである。行けるだけ行ってみようと歩いていくが、狭い狭い。途中から、尾根伝いに歩くやぶ道の中に突入することにした。尾根を意識しながら歩いていくと、意外に赤テープがいくつかある。なるべく枝に叩かれないように、ルートを選びながら上へ上へと足を進める。対馬の北西の強い風がようしゃなく吹き付ける。林の中にあってもその迫力は壮絶だ。たかが風であるが、その音と迫力は恐怖感を感じざるを得ない。なんとなく、一人で大丈夫やろかと不安にさせる風である。そんな不安な気持ちの折も折、目の前20mのところをイノシシが猛ダッシュ!「こっち来んな!」と心で願いながら、その後は、人間の存在に気づかせるために声をかけながら歩く。これだけ風があるのだから、人一人の足音など風で消されているだろうに、野生の動物はその気配に気づくからすごい。

 
歩を進めていくと、いつの間にか山頂に着いた。展望は木に囲まれて何もないが、木々の間で休憩できそうな雰囲気のよい場所である。そのまま、三角点がある北側に進む。7分ほど歩くと、目の前が開け、明るい場所に出た。木々が払われ、空がまぶしい場所だ。展望はないが、広い場所は開放感がある。

 
帰りは来たルートを忠実に追っていく。尾根を意識して下りればいいのだが、最初の取り付きで間違えそうである。やはり、こんな低山でも地形図とコンパスは必携。方向を逐次修正しながら下っていった。来たときにやぶ道に入った地点を強く意識しすぎていたため、出たい場所よりかなり先までやぶ道を歩いてしまった。後で考えると、一箇所のルート選択ミスだ。道がないと地形図を使うのがおもしろい。これは知的おもしろさである。帰りのミスを考えると、登るときから、小道には入らず、尾根伝いにやぶ道に入った方が得策のようであると感じた。

 
有明山山頂に着くと、気温はマイナス8度。風がすごい。その場にいるだけで顔が痛くなる。でも、せっかくなので、ツェルトを出して風が当たるところに設営してみた。設営といっても、木の幹にロープを張り、その間にツェルトを通すだけである。中に入ると、なんだかほっとする。風が当たらないだけで、冷静な自分に帰ることができる。中でカップうどんと紅茶を飲む。温かくて生き返る。たった薄いきれ一枚で、温度も3〜5度くらい違う。ツェルトは持っているだけではもったいないので、折りを見つけて使ってみようと思う。なんか、その中にいる非日常がまたいいのだ。

 さてと、ツェルトを片付けようと、たたんでみるが、強風の中、しかもススキの原の中。地面のクッションのせいか、収納袋に入るように小さくたためない。3回やったがだめだ。もう、なんとかそのままザックにつめこんだ。家に帰ってたたんでみると、うまくいく。寒さや風、地面の固さなどで、うまくいかないものだ。これまたいい経験になった。

 今日の新しい道は40分ほどの冒険であるが、ささやかでも冒険とは楽しいものである。
 
  
 
青い線は有明山への登山道。赤い線は道はないが、成相山へのルートである。
 
 
有明山の分岐から、成相山方面へ。最初は道がある。
よく見ると、有明山は距離が示してあり、成相山は距離表示がない。
ってことは、道がないという意味でもあるのか。
 
 
道がないが上を目指して歩いていく。風がようしゃなく吹き付ける。
やぶ道といっても、枝を上手によければさほど困難なく歩けた。
ただ、この時期限定のルートかなあと思う。
 

 
成相山山頂。眺めはないのだが、ほっと癒される空間である。
春の浅い頃、紅茶でも飲みながら、鳥のさえずりを楽しんでみたい場所だ。

 
 
北側に三角点を目指して歩く。目の前がぱっと開け、広い場所に出た。空が見えると開放感がある。
四等三角点があった。

 
 
木々が伐採されている中、ひとつの木だけが残してあった。
成相山の主のようでもある。
 
何だか、山師の心意気を感じた瞬間。
 

 
有明山山頂に着くと風が強い強い。
せっかくなので、風が当たる場所で、ツェルトを張ってみた。

ツェルトの中でほっとした時間を過ごす。
一枚の薄いきれに囲まれた空間があるだけで、心がほっとする。風にさらされていた風の強さが嘘のようである。
ビバークするときに、山中で風に打たれながら、一人身を横たえるのは、生きた心地がしないだろう。
その冷えが命をうばいかねない。
しかし、このツェルトひとつあれば、その命を救い、
この空間が落ち着きを取り戻させてくれる。
 
あんまり、居心地がいいので、昼寝でもしたくなったが、
理性が「おいおい、外はマイナス8度だぞ、やめとけ」
と告げた気がしてさすがにやめといた。
 

 
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