御嶽(御岳)(みたけ)〜平岳(ひらたけ)
 1人で登る  2008.2.9
 

目保呂ダムから見た御嶽  
場所 長崎県対馬市上県町 地形図はここをクリック
断面図,概念図はここをクリック
標高 御嶽479m
平岳458m
歩く標高差 累積 約1000m 歩行距離 約10Km
所要時間 大人5時間
御嶽公園〜20分〜林道終点〜30分〜お堂〜15分〜御嶽〜45分〜平岳〜35分〜ドウ坂登山口〜50分〜平岳・御嶽分岐〜30分〜お堂〜25分〜林道終点〜20分〜御嶽公園
駐車場 御嶽公園に10台ほど、林道終点にも5、6台は停めることができる。
データ  
 
対馬は下島と上島からなる。下島は白嶽・有明山・竜良山などが代表的であるが、上島と言えばこの御嶽が一番にあげられる。自然を色濃く残すという点から言うと、対馬で一番の山である。今は絶滅してしまった幻の鳥キタタキの生息地であり、現在もツシマヤマネコが生息する山として名高い。キタタキは体長が50cm近くもあり、その木をつつく音が斧で打つような音で、キツツキどころではない「木叩き」と称されるほどの音であったらしい。日本では対馬の御嶽を最後に1920年以降、生息は確認されていない。

 
キタタキ(剥製) ツシマヤマネコ オジロワシ

 また、オジロワシ・オオワシ・イヌワシの渡来地でもあり、対馬の自然を語る上で貴重な山となっており、鳥相が豊かであるため御嶽鳥類繁殖地として、国の天然記念物に指定されている。

 島に来て、ずっと楽しみにとっておいたが、とうとう今回登ってしまうことにした。

 
御嶽公園に車を停め、木の社をくぐって林道歩きをする。沢の横の緩やかな林道を歩いていくと、やがて林道終点にたどり着く。ここにも車を停めることができる。林道終点の木の鳥居をくぐると、ここに来てやっと土を踏む道となる。しばらくは木枠で作られた階段状の道を進むが、結構急な場所もあり、息を整えながら登る。道はずっと整備されていて、比較的歩きやすいが、急な傾斜の場所は下りの際は要注意。途中、ツシマヤマネコの生息地の保護林であることを示す看板があり、貴重な自然を残す山であることを再認識する。

 
林道終点から30分ほど歩くと、お堂の場所に出る。お堂の横をまっすぐ登っていくと、御嶽と平岳の分岐の尾根道に出る。左に折れて、10分ほど御嶽の山頂を目指す。この辺は大きな倒木が多く。森の輪廻を垣間見ることができる場所である。
 
 と、山頂から白衣を来た二人の女性が下りてきた。きっと地元の方でお参りに来られたのだろう。対馬で山に登る人は韓国からの旅行客ぐらいなので、きっとまた韓国の人と思われているだろうなあと思い、思いっきり日本語で
「こんにちは〜!寒いですねぇ!」
と声をかける。と、日本人と知ってちょっとびっくりしながら、
「ああ、あの〜、調査ですか?」
との質問。その質問に不意を喰らって、
「いや〜あの〜その〜、ただの山登りです。(笑)」
と答える。この山に登山者の格好をして登る日本人は、環境庁の職員か、大学の調査する人達が多いのだろう。なるほどと、御嶽の貴重な自然資源を感じた一幕だった。

 
山頂近くになると大きな石が点在する。多良で言えば遠目山近辺に似た感じ。今日3つ目の木の鳥居をくぐると山頂に出た。山頂は10名ほどゆっくりできそうな平地もあり、石の祠がいつくも祭られている。目保呂ダム方面と対馬の重々とした山並みが見えるはずだが、今日はかなりけぶっていて遠望は効かなかった。

 山頂を後にし、平岳を目指す。平岳までは平坦な尾根上を45分ほど歩く。地形図では、465mピーク付近が平岳と表記してあるが、感覚的にはその先の三角点がある457.8ピークを山頂と解釈して目標とする。この道は落ち葉を踏みしめて歩く、心地よい道である。途中多くの倒木が道をふさぐのでよけながら歩く。おおむね平坦で尾根から見下ろす両側の眺めも森の深さを感じさせ、対馬ではなかなか巡り会うことのできなかった山から山への縦走感を味わうことができる。北西の風が冷たく気温は−5度。さすがに耳が痛くなってきて、ニットの帽子を被って歩く。平岳に着く手前で右に下りる道がある。これはドウ坂登山口に通じる道である。今回はこの道は登り返し後に使うことにした。

 
平岳の三角点がある457.8ピークは平坦な場所にあり、眺めはない。通常は少しもとの方向に引き返してドウ坂に通じる登山口に向かうべきであるが、地形図を見ながら、このピークをまっすぐ進んで直接下りていくのが可能かを確かめようと思って、地形図に表示してある道をたどって見ることにした。歩き出すと、赤いテープが目印として巻いてある。地形図で確認して見ると目標としていく方向にずっと付いているので、テープにしたがって下りていく。ずっと使われていない道のようで、落ち葉がたくさん落ち、踏み跡だけだと迷い込む可能性大の道である。滑らないように気をつけながら、ゆっくり下りていくと、ドウ坂からの登山道と合流する。合流地点はツシマヤマネコの保護区の看板があるところとなる。

 
(平岳からたどった道は、2013年1月現在、テープがなく不明瞭となっている。)

 
合流してから、20分ほど下るとドウ坂登山口に出る。階段状に整備されており、ここから御嶽を往復すると心地よい山歩きの時間を過ごすことができる。通常は登りはじめの御嶽公園に向けて国道沿いを40分ほど歩くのであるが、あまりにも味気ないので、ここを折り返しとしまた登り始める。

 しばらくは急な坂もあるが、この急さが島ではなかなか味わえない傾斜で、なんだかうれしく思い、息をはずませながら登っていく。途中、小さな沢沿いに簡単な橋がかけてあるが、朽ち果てており、足をのせるのはやめておいた。

 
登山道にはシカ、ツシマテン、そしてたぶんツシマヤマネコの糞が落ちており、姿は見えずとも彼らの存在をフィールドサインで感じることができる。と、20mほど離れた場所で私の存在を察知した小動物が振り返りもせず一目散に駆け下りていった。テンやイタチではなく、もう少し大きく、一瞬見た後ろ姿はネコのようであった。一瞬の振り返りもなく、何の躊躇もなく駆け下りる姿は野生そのもので、「えっ、ツシマヤマネコ?」とあっけにとられた。事実は定かではないが、あれはきっとツシマヤマネコであったと思っている。こんな山中に野良猫は来ないはずと思いつつ、以前多良山系で標高800m付近で飼い猫のクロネコを見たのを思い出した。まあ、謎のままがロマンがあっていいかな。

 
平岳・御嶽の尾根道に出る最後の10分間は、胸を突く急登が待っていた。ふんばりふんばり登るのをうれしいと思う自分もまた変であるが、楽しい道なのである。

 もと来た道をゆっくり楽しみながら引き返し、御嶽公園に向かった。

 展望はほとんどないが、山を歩くことの楽しみを感じることができる御嶽〜平岳の稜線である。縦走路を歩いているという感触が心地よい。太古からの自然を残す貴重な山として大切にしなければと感じさせてくれる山だった。
 
 

 
 
御嶽公園に車を停めて、鳥居をくぐり林道を歩く。
 
 
20分ほどゆるやかな林道歩きとなる。今日は初めての山なので、
林道歩きの時点から地形図で現在位置と特定しながら歩く。
この積み重ねがいざというときに役立つ。

迷ってから地図を見て、今どこかを特定するには、視界のよい展望と
顕著な地形の特徴が必要であり、熟練者のみが可能な世界である。
 
まずは、現在どこにいるかを常に把握して歩くことが道迷いをしない大原則だ。
今回、私のシルバコンパスは氷点下5度を下回るとオイルが固まるのか、
針が動かないことがわかった。懐であたためて動かしながらの山行である。
そんなんじゃいかんよなあ。
(と思いつつ、調べてみると私のコンパスは使用可能温度0度〜40度だった。そうか仕様か・・・)
 
林道の終点地。ここにも駐車可能である。
 
 
整備された道を歩いていく。最初は急登もあるので、ゆっくり歩く。
 
 
ツシマヤマネコの保護林の看板を見て、しばらく行くとお堂に出る。
このお堂の正式な名前は、式内社島多国魂神社である。
 
 

お堂の横を通り、階段を上がって行く。
 
 

倒木がたくさんあり、幹の大きさが迫力ある。
 
 
御嶽と平岳を結ぶ稜線に出る。風倒木を越えて、山頂へ。
 
 
山頂近くには、大きな岩が点在する。鳥居をくぐって、山頂へ。
 
 
祠が祭られた御嶽山頂。
 
  
 
これから向かう平岳方面。
 
 

倒木を避けたり、越えたりしながら、平坦な稜線を歩く。
稜線だけに風が強く氷点下5度の気温。5度を下回ると耳や手が痛くなる。
 
 

ずっと歩いていたくなる道。落ち葉の足下はやさしく、霜柱がたった道をザックザックと音を立てて歩いていく。
 
 
御嶽から45分ほど歩くと、平岳の三角点457.8mに着く。
ここは、対馬に3つあるうちのひとつの一等三角点である。
 
平坦な場所であるが、展望はない。
今日はこのまままっすく進んで下りていくこととする。
 
 

足もとはすべりやすいが、テープを目印に地形図で方向を確認しながら下りていくと、
ヤマネコの看板がある場所に出る。ここが登山道との合流点である。
この合流した登山道は地形図には載っていない。

 
 (平岳からたどった道は、2013年1月現在、テープがなく不明瞭となっている。)
整備された登山道を下りていくと、ドウ坂登山口に出る。
今日はここからまた登り返しである。

 
 
登り返して行くに連れ、また気温は下がっていく。
とても静かな山である。途中で見た動物はきっと
ツシマヤマネコに違いない・・・・と思いたい。
 

 
稜線に出る最後の10分間の登りはなかなかの傾斜である。
こんな急な坂は自分を試されている気がする。
 
 
また、倒木や迫力ある木を眺め直しながらの道となった。 
 
 
南東側、目保呂ダムから見た御嶽と平岳。

自然豊かな心地よい山だった。

 
 
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