経ヶ岳(きょうがたけ)〜多良岳
 1人で登る
2009.12.28

雪化粧をうっすらと施した経ヶ岳
場所 長崎県大村市
長崎県高来町
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標高 経ヶ岳1078m
多良岳983m
歩く標高差 .累積1200m 歩行距離 約10Km
所要時間 大人
約6時間
黒木民宿〜1時間50分〜経ヶ岳〜30分〜中山越〜1時間30分〜多良岳〜15分〜金泉寺〜5分〜西野越〜40分〜八丁林道登山口〜25分〜黒木民宿
駐車場 黒木駐車場に駐車可。
データ  とても多忙な日々がやっと過ぎ、年末の休みに入った。とにかく島を出て、どこかの山に登ろう。明確にどこに登るかも決める間もないまま、フェリーに車を積んで島外へ。懐かしい山も歩きたい、そしてできれば雪を踏んでみたい。そんな願いだけを胸にしっかり抱いて、フェリーに乗り込む。

 今回は車で行くことにしたので、準備が楽だった。とにかくいるものを車に入れておけばいいのである。いつもはザックひとつが荷物の全てなので、必要なものを吟味・選別し、おまけにバランスを考えて上手に詰めこまなければならない。そのため準備に時間もかかり、その作業は数時間に及ぶ。しかし、今回は必要かなと思うものはどんどん車に乗せておけばいいので、さほど時間をかけない前日準備となった。荷物を車に入れながら、いつものザックひとつの旅はまことに不便ではあるのだが、パッキングの技術や必要なものを見極める力をつけてくれていることもつくづく実感した。不便は人に多くの知恵をつけてくれる。

 
午前4時半、フェリーの中で横になり、まどろみなから、まず行きたい山を考える。浮かんでくるのは、多良山系と九重連山。行程のまん中に福岡での所用もあるので、まずは多良山系に向かい、福岡での用事を済ませ、久住山系に向かうこととした。
福岡市内を過ぎて東背振から走らせるのは、大村に住んでいた頃にいつも通った道。大村から福岡または大分まで、この道が近いはずと回を重ねるごとに発見を繰り返し、裏道を極めていた。その道をたどりながらの懐かしい旅となった。対馬に転勤してからは、長崎に行くとしても飛行機で長崎空港経由となるので、実に3年ぶりの福岡から大村への下道である。鹿島を過ぎ、平谷に入り、トンネルを抜けて黒木の里へ向かう。なつかしい木々の香りと山の威容が心を打つ。今回は黒木民宿キャンプ場にテントを張ることにした。経ヶ岳の迫力ある姿が眼前にせまるキャンプ場である。多良山系の懐でテントを張れることが、それだけでなんとも幸せな気分にさせてくれた。

 
黒木キャンプ場に着いて、受付を済ませ、さっそくテントを設営する。今夜の天気予報は雨。気温は0度。ちょっと胸がわくわくする状況だ。つまり、このキャンプ場は雨だったとしても経ヶ岳方面は雪が降り積もる可能性があるということだ。ちょっと期待をしながらの夕食の準備である。

 
夕食は、レトルトカレーである。しかし、これがそんじょそこらのレトルトカレーではない。忘年会のプレゼント交換でゲットした、個性にあふれたレトルトカレーなのである。もらったときから、山で食べるのを楽しみにしていた、私にとって一番のクリスマスプレゼントである。ほっかほかのアルファ米に、お湯で10分近く温めたカレーをかける。あったかい白いご飯の湯気に、これまたあったかいカレーの湯気が立ち上る。0度近くの山の中、冷えた体を温めてくれる最高の夕食である。このカレー、あと2種類もあるので、また違う日に食べるのがこの旅の密かな楽しみとなった。

 
夜はテント内で0度前後。夜が更けてくると、雨の音がテントを叩くようになった。明日の朝、雪に変わってくれと願いつつ、眠りに落ちた。

 
翌朝、明るくなって、目をこすりながら、外を覗く。「おおっ!」眼前の光景に思わず息を呑む。予想通り、経ヶ岳方面は雪が降っていた。黒木の郷より高いところは雪がうっすらと積もっている。なんと一日目から、雪を踏みたいと思っていた今回の旅の願いがさっそく叶いそうである。多良の山の神様がようきたねえと言ってくれているようで、白くなった経ヶ岳を見るだけで、これから雪を踏めると思うだけでうれしい朝だった。

 
歩き慣れた道をたどりながら登り出す。四季折々のこの道の風景と思いが頭をよぎる。この道を通い続けた4年間はずっと心の中にある。大払谷にさしかかると、岩の上、木々の枝に雪が白い真綿のように降り積もっている。今日の荷はおそらく13kgほど。いつも20kg超の荷物をしょって登っているので、なんだか足が軽い。おまけに20kgを背負った速さの歩きとなっているので、疲れをさほど感じずに歩いている。昔はがむしゃらに1時間10分くらいで駆け上っていた道を、今回は1時間50分ほどもかけて歩いていた。

 
ツゲ尾につくと、雪が少し深くなった。ここから山頂までは霧氷がとてもきれいな一帯である。しかし、今日は、木々にはさほど霧氷はついていない。木々に雪が少ないと道の危険さを忘れてしまうところだが、今日の道は、一度凍った登山道の氷の上に昨日の雪が積もっているので、うっかりすると滑りそうになる。アイゼンはつけぬまま一歩一歩慎重に登っていった。

 
経ヶ岳山頂に着くと、山頂の様にびっくり。噂には聞いていたが、山頂の周囲の木々の伐採がひどい。展望はよくなったものの、切られた枝を見ると心が痛む。木々に守られていた山頂の崩壊が進みはしないかと心配になった。それでも久しぶりの経ヶ岳山頂。風は冷たく、多良岳方面の眺めもガスの中で、すっきりはしないのであるが、またここに来れたという喜びが体に満ちあふれる。そして、ガスに包まれた多良岳までの道が脳裏をよぎり、そこを一歩一歩歩けることがとても楽しみとなってきた。

 
経ヶ岳を後にすると、雪が登山道や木々の葉の上に積もっている。白い静寂の世界に酔いしれながら、一歩一歩を楽しんで歩いた。笹岳の横は、笹の上に積もった雪がとてもきれいで、しばし立ち止まって見とれてしまった。今更ながら、自然が作り出す景観の美しさはすばらしいと感じるこの道であった。

 
西岳を経て、多良岳へ。やっと遅い昼食をとった。氷と雪の道に気をつけながら金泉寺に向かう。立派になった金泉寺と、その工事のために作られた舗装路・・・ 経ヶ岳に続いて、複雑な気持ちとなる。

 金泉寺山小屋は閉まっていたが、建物の中から常連さん達の声が聞こえてきそうな感じがした。西野越を経て、下山する。一歩一歩を下る感触、谷間の風景が懐かしく、多良の歩きが終わってしまうのがなんとも寂しかった。

 
やはり、自分の中では多良が一番である。何度も登るうちに、その山の四季折々の風景とその時々の人生の思いが、溶け合ってしまっているのだろう。あの頃、そこにいた自分が、まだそこに存在していそうな錯覚に陥る。
振り返り振り返り、多良の山々にまた来るよと声をかける。今度来るときは、また自分自身はどんな人生を歩んでいるだろう。

そんな思いを巡らしながら、黒木民宿のテント場に向かった。
 

 
黒木キャンプ場から仰ぎ見る経ヶ岳。その山容は威風堂々。
 
 
夜はYちゃんからもらったレトルトカレー。これがうまかった。個性的なレトルトカレーで味も抜群。
今回の旅のスペシャルディナーである。
Yちゃんありがとうね。
  
スーパーで買いだしをすると年末のサービスなのだろう、生卵を6つくれた。せっかくなのでこれはゆでたまごに

  
  
朝、目覚めると、経ヶ岳は白く雪化粧をしている。青い空に白い雪。
山登りを愛する者がもっとも憧れる天気と景色である。

 
 
いつも立ち止まった木漏れ日の美しい場所を通過する。今日もやっぱり立ち止まる。
歩を追うごとに、白い雪の姿が目を楽しませるようになってきた。
  

  
登り出すと一回だけ、経ヶ岳の姿が眼前にせまる場所がある。
雪をまとった姿は、近まれば近まるほど、美しく迫力がある。
 
 

大払谷を過ぎて、ツゲ尾へ。ツゲ尾からはいつものことながら、風が冷たくなり、雪が深くなる。
  
  
経ヶ岳山頂に着く。展望はよいのだが、伐採された木々の枝が目に痛い。
  
  
経ヶ岳から多良岳へ。積もった雪を踏みしめながら歩く道。キュッ、キュッという雪の音が心地よい。
 
 
笹岳の横の笹に積もった雪は今日一番の美しい道となっていた。
 
 
西岳を経て、多良岳へ。多良への道も白く美しかった。多良権現でちょっと遅めの昼食をとる。
コンビニのおにぎりもひさしぶりだなあ。
 
 
建て変わった金泉寺。その工事のための道路も造られていた。
ちょっと複雑な気持ちがよぎる。

白い雪が美しいこの場所でしばしの休憩をとる。

 
 
黒木民宿キャンプ場でもう一泊。
翌朝、やわらかい朝陽に包まれた経ヶ岳に別れを告げて、
黒木の里を後にした。
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