郡岳(こおりだけ)〜経ヶ岳(きょうがたけ)〜五家原岳(ごかはらだけ) 縦走
一人で登る
(注:決して気軽に一人で行けるルートではありません。自己責任と万全な構え,下調べが必要なルートです。)
2006.11.03 |
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五家原岳山頂からの眺め |
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場所 |
長崎県大村市
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標高 |
郡岳 826m
経ヶ岳 1075m
五家原岳 1057m
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歩く標高差 |
.累積約1900m |
歩行距離 |
約21Km |
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所要時間 |
大人
約10時間半 |
郡岳西登山口〜1時間5分〜郡岳〜1時間10分〜遠目山〜1時間5分〜岩屋越〜1時間50分〜経ヶ岳〜1時間20分〜金泉寺〜1時間25分〜五家原岳〜1時間35分〜黒木八丁林道駐車場
もう少し細かく書くと
郡岳西登山口〜1時間5分〜郡岳〜30分〜遠目越〜35分〜遠目山〜25分〜春日越〜40分〜岩屋越〜30分〜狸だまり〜10分〜釜伏山〜1時間〜ツゲ尾〜20分〜経ヶ岳〜1時間10分〜西岳〜10分〜金泉寺〜50分〜中岳〜25分〜五家原岳〜25分〜横峰越〜55分〜五家原岳登山口〜15分〜〜黒木八丁林道駐車場
携帯の電波状況
私の携帯はauだが,「郡岳,遠目山,春日越,岩屋越,経ヶ岳,金泉寺,五家原岳から横峰越に下る途中」では携帯が通じた。(以前は通じなかった気がするが,天候にもよるかも)
通じなかった場所は,「五家原岳,黒木駐車場近辺」である。
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駐車場 |
郡岳西登山口には駐車場はない。前日夜に黒木に車を1台おき,当日朝,妻に車で送ってもらった。
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データ |
多良山系に登るようになって,ずっと気になっていた縦走路がある。
郡岳〜経ヶ岳〜五家原岳をつなぐ縦走路である。時間は10時間以上かかり,距離も20kmを越える。縦走路と行っても平坦な道ではなく小ピークの繰り返しで,累積すると標高差は2000m近くになる。以前,郡岳〜経ヶ岳まで縦走しことがある。このときは,足も結構疲れ,中山越から下りることにした。その当時,ネットでお知り合いになったSさんが,「あと,5kgやせたら,五家原までいけるかも」とおっしゃられた言葉もずっと心に残っていた。ふと,気づくと当時より5kgほど体重も落ちた。季節も秋。行くなら今だ!
意を決して,郡岳から経ヶ岳,五家原岳をつなぐ旧火山の火口壁をたどる縦走に挑戦することにした。
前時の夜に車は黒木にデポする。そして,早朝6時,郡岳西登山口まで妻に送ってもらう。まだ外は暗い。ヘッドランプをつけて準備万端。
「ほんとに,こんな闇の中で山に入ると?」
と心配そうな,あきれたような妻の声。
「達成するには,やるしかない。」
と不安を押し殺した私の声。
妻に別れを告げ,山道に入る。車はあっけなく消える。さっそうと登山道に入ったもののまったくの闇の世界に少々びびる。。イノシシがうようよいそうな郡岳。正直いってちょっと怖いがこの時間に出ないと明るいうちに下山が不可能になる。慎重に前を照らしながら進む。げっ,倒木が道をふさいでいる。明るいときはなんでもない倒木だが,ヘッドランプでは除けるのに難儀する。
時々,人間が通っているぞとわかるように声をあげながら進む。歩くのは郡岳の西側なので,なかなか明るくならない。鉄塔を過ぎ,山道に入ると少し明るくなってきて,ほっとする。そして,山の中で獣がザザッとなだれ駆けるような音。そして,周囲が明るくなると遠くで銃声の音。大造じいさんがかもでも打っているのか。おいおいここいらの狩猟開始は11/15じゃないのか。方向を考えると大野原の自衛隊での訓練かもしれない。
坊岩に着く頃には明るくなった。大村湾を眺め,郡岳山頂へ。山頂はちょうど朝日が射しかけた頃だった。あの朝日が西に沈む前に下山を完了しなければならない。少し緊張しながらも,この先が楽しみな一日が始まった。
郡岳から遠目山へ。この縦走路はところどころ両側を木々に囲まれ,登山道がその中を巡る美しい道がいくつもある。テープがところどころつけてはあるが,やはり何度か道をはずす。あれっ,と思ったら,前のテープまで引き返し,またテープを探しなおすのが無難である。道はわかっているつもりでも,なんどかあれっ?と思うことがあった。
大きな岩が見えだし,その岩をぬうように登ると,遠目山山頂である。しばし,休憩して,先を急ぐ。遠目山から岩屋越までは,直角に曲がらなければならない場所もあり,地図を見ながらしっかりルートを確認して進む必要がある。岩屋越に近づくと,岩尾根を通ったり,アップダウンがすこしきつくなる。しかし,木々に包まれたおとぎ話の中のような道と小鳥の声は心を癒してくれる。
岩屋越を経ると,アップダウンの繰り返しになる。狸だまりを経て,縦走路にぽこんと突き出た釜伏山に着く。ここからは経ヶ岳が見えるようになる。ツゲ尾まではもうすぐのようだがここからツゲ尾までが実は長い。ツゲ尾に着く前に,きついアップダウンが数ヶ所あり,ここでふんばり過ぎないようにペースを調整した。
ツゲ尾に着けばのいつもの通い慣れた道だ。しかし,6時から5時間歩いた足は,いつものように歩を進めてはくれない。経ヶ岳山頂はたくさんの方が休憩しておられた。振り返り見る郡岳からの道。そして,仰ぎ見る五家原までの縦走路。そう,時間的にはまだ中間地点である。10分ほど休んで出発。
笹岳までくると,ちょっと足が重い。一休み。5分くらい座ると力が湧いてくる。足もそれほどへたってはいない。これならいけそうだ。
西岳を経て,金泉寺へ。食欲はあまりないが,しっかりパンを腹に入れた。よし,最後の五家原までの登りだ。案外元気な気持ちと足にちょっと余裕を感じたのが間違いだった。足はまだ行けそうなのだが,ザックの重みで肩が痛い。10時間の山行を考えていつもより荷が重い。初め13kgだった荷物も今は10kgくらいになったはずだが,中岳の登りになると足が重い。やっとのことで中岳へ。金泉寺からこの中岳までが今日一番きつかった。
最後の五家原岳までの登りに気合いを入れる。うかうかしていると日が暮れる。ゆったり歩きをやめ,いつものペースの登り方に変えると案外調子が出てくる。あとどれくらいなどと考えるのをやめて,ひたすら歩を進めていると五家原岳の鉄塔が目の前に出た。
五家原岳山頂からの眺めは格別だ。朝7時に立っていた郡岳が遠くに見えている。今日歩いてきた道を一望する。ここで,ご褒美のコーヒータイム。ゆっくりしていると3時近くになった。さあ,下山下山。
下りは足の重くなった登りとはうってかわって,快調である。が,西の山の端に太陽がかかりはじめた。ヘッドランプはあるもののあまり暗くなって歩きたい道ではない。急げ急げで,4時15分に舗装道路に出た。山を下りた後のアスファルト歩きはいやなものだが,今日ばかりは明るいうちに舗装路が歩けることがうれしく感じる。
朝6時発,4時半完了の10時間半の山めぐり。ずっとやりたかったことがひとつ叶ったうれしさを感じることができた今日の山行だった。夕陽に明るく照らされてまぶしい経ヶ岳に「やったよ」と声をかけて帰路に着いた。
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暗い中,ヘッドランプをつけて出発。鉄塔のあたりはやっと明るくなりかけていた。
坊岩では朝の空気がすがすがしい。
ゆっくり眺めている暇はない。さあ,次,次。
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郡岳山頂には丁度朝日が昇っていた。
この太陽が沈むまでが勝負だ。
思わず,よろしくたのみますと太陽に向かって合掌する
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木々についているテープをよく確かめながら進む。
ついテープを見失うことが数回ある。
そのときは,進まず,戻ることを今日の鉄則とした。
以下の看板もある。気を引き締めて歩く。
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遠目山に着く。
遠目山を過ぎてしばらく行くと,黄色いテープがあった。
この方向に進むなの印である。
地形図で確認すると確かに直角に曲がる場所にこのテープがあった。
だが,ずっとあるとは限らない。地形図をしっかり持って歩く必要がある。
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左写真。春日越に着く。ここは,ダムの方へエスケープルートがとれる。
右写真。国見岳分岐。このあたりがどう進むかちょっと迷う場所でもある。
だからやっぱり地形図がいる。
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いくつかの岩尾根やアップダウンが出始める。
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岩屋越の手前は美しい縦走路が続く。
今日の道で一番心が癒される道である。
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岩屋越を過ぎると,アップダウンがきつくなってくる。
ここからツゲ尾までが気合いがいるところである。
しかし,気合いを入れずたんたんと息がきれない速さを心がけて登る。
ちょっとした登りだからとがんばることが,あとで疲労の原因となるからである。
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ツゲ尾を経て経ヶ岳へ向かう。
ツゲ尾から上は秋の装いである。
色づき始めた木々が「ようきたようきた」と出迎えてくれる。
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経ヶ岳山頂付近から振り返る歩いて来た道。
しかし,まだ時間的には半分。
心と体の緊張感は持続したままだ。
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金泉寺までの道は,秋色が濃くなっていた。
赤はまだ少ないが黄色があちこちにあふれはじめている。
笹岳横で,小休止。
休むと力が湧いてくる。
まだまだ行けるぞ。
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金泉寺を経て中岳へ。
思ったより,時間が押してきた。
この道が足が進まない。
ザックの肩の痛さが増してきた。
14時,中岳着。
「よし,もう少しだ。」
このもう少しだと確信できる瞬間,
人間が一番力がみなぎり充実できる時なのかもしれないと思う。
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五家原岳はすぐそこだ。歩き方の調整をやめ,一気にいつものペースで登り始める。
頂上のアンテナが眼前に。
太陽が山頂で輝いて待っていてくれた感じ。
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五家原岳山頂から,歩いてきた道を眺める。
一人だけのご褒美コーヒータイム。
今日は一人で長い歩きなので,ルート図を妻に渡して説明をしておき,
要所要所で妻に到着のメールを送った。
五家原岳だけが携帯電波不調。
後で聞くと妻はルート図を広げて,息子達にこう説明していたそうだ。
「今,ここに着いたというメールが来たから,ここまでは生きとったということや。
連絡が途絶えたら,残りの道を探すしかない。」
正しいのだが,シビアやなあ,お前達・・・
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横峰越を経て,急いで駆け下りる。
西の山の端に太陽がかかってきた。
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黒木の民家が見えてきた。
ずっと憧れていた縦走路を歩けたことの喜びを噛みしめる道。
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明るい陽を浴びた経ヶ岳に,無事下山のあいさつをして,帰路に着いた。
思ったよりも歩けた実感。
思ったよりも足が重かった実感。
思ったよりも自分の強さに気づいた実感。
思ったよりも自分の弱さに気づいた実感。
限界に近づきながら感じた実感は,新しい自分を発見できた実感である。
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