井原山〜雷山
夫婦で登る  2016.10.29

渓流の里登山口〜井原山〜雷山〜布巻林道  

井原山山頂。山に戻ってきたとうれしい気持ちの空間となる。
  
場所 佐賀市富士町 地形図はここをクリック
断面図,概念図はここをクリック
標高 井原山 982m
雷山 955m
歩く標高差 累積 約625m 歩行距離 約8Km
所要時間 大人6時間
(標準タイムの1.5倍)
 
渓流の里近く駐車場スペース〜5分〜渓流の里登山口〜40分〜鉄塔〜40分〜井原山〜80分〜944ピーク〜40分〜雷山〜8分〜古場分岐〜40分〜布巻林道〜10分〜雷山林道出合〜15分〜渓流の里近く駐車スペース
 
駐車場 雷山林道駐車場に数台の駐車スペースあり
データ  
 
足の骨折から2年弱、足の再手術から10ヶ月、ずっと入れていた金属のプレートやピンを抜いて1ヶ月半、ようやく自分本来の足になった。待ちに待った山登りを試してみよう。

 しかし、2年間山を闊歩しておらず、走ることもできなかったことは、体力がとてつもなく落ちていることを意味する。ゆるい山を徐々に試していこう。怪我するとしゃれにならない。用心、用心の山登り開始である。

 一人では心もとないので、妻に着いてきてもらうことにする。今の私の体力で歩ける速さと妻が歩ける速さはちょうど同じくらいだろう。

 
選んだ山は、初めての山、井原山。行ったことのある山よりも新しい山で、山登りの再開を喜びたい。初めての山に挑むのはなんと、4年ぶりである。久しぶりに、ネットや本を見て、ルートの確認をする。ああ、この時間もまた楽しかったこと思い出す。ルートを調べてみると、井原山だけでは短そうで、もう少し歩くために雷山まで縦走することにした。しかし、十分調べ上げる時間もなく、正式な地形図ももたず、ネットで手に入れた地図に磁北線を引いて準備する。地形図を見てあらたかたを把握しようとコンパスを取り出すと、なんと壊れている・・・ 2年近く使わずにバッグに入れたままだった。なんとか、応急処置をして、なんとかなるかの出発である。

 
雷山林道に車で行くと、少し道脇が広くなったところがあり、ここを駐車スペースとする。すでに一台の車が停まっていた。登山靴を履くと、身が引き締まる思いだ。登山靴に足を滑り込ませ、かかとに足をよせ、慎重に靴紐を結ぶ。腰バッグを点検し、ストックを持ち、ザックを車から降ろし・・・と忘れかけていたルーティーンのような所作を繰り返していると、妻は勝手に出発している。
「ちょ、ちょっ、待て。俺の復活登山やぞ。」
と訳の分からないことを行って呼び止めた。車をロックして歩き出すと、妻が戻り、
「杖忘れた、杖」
「杖っていうな、俺のストックを!」
と、いつものマイペースの妻である。

 
駐車スペースから、5分ほど歩くと登山口に到着する。ここからはしばらく舗装路歩きとなる。赤い屋根の家の横を通りすぎ、いくつかの別荘らしき建物の横を通過する。炭火の香りが心地よく、ふと息を吸い込むと、秋の匂いが体に染み渡る。舗装路をしばらく歩くと、やっと登山道らしき道となる。最初は岩を適当に敷きつめようなごろごろの道で、沢のように水が流れている登山道だ。足をひねらないように慎重に進むと、やがて植林帯の道となった。

 
足の方はというと、右足の内側のくるぶし近くが痛い。登山靴が硬くなってあたっているのか、くるぶしの位置が変わってしまったか。そのうちこなれるだろうと我慢の歩きとなる。

 
途中分岐があったが、久しぶりの初めての山なので、この道で合っているかと不安になり、地形図を確認する。方向は合っているので、もうすぐ送電線が上に見えれば正解である。ほどなく、送電線が頭上にかいま見えた。しばらくして立派な鉄塔が目の前に現れた。正しいルートを歩いていることに安堵する。ここまで通常25分のところだが40分を要した。まあ、今日は1.5倍ペースかな。2倍とならないだけまだいいかと思いながら歩き出す。

 
鉄塔を過ぎてからは、笹にはさまれたゆるやかな登山道を進む。それほど息もはずまず、一歩一歩を繰り出す心地よさがうれしい登り道である。春になればコバノミツバツツジが彩りをそえる道でもある。

 
地形図通り、ひどい急坂は出てこず、ずっと同じような傾斜の道を進む。妻は登りでふとももがきつくなってきたようで、
「あとどれくらいで着く?」
としきりに質問してくる。どの当たりがちゃんと地形図を見ながら歩いてなかったので、だいたいの周囲の様子と地形図を照らし合わせて、
「もう、ここや。あと10分」
と答える。これで妻は勢いづいた。
「ほら、山頂の楽しそうな声が聞こえてくるやろ。」
自信満々。地形図を正確に読めたことで私も鼻が高い。が、それは降りてくる登山者の声だった。こんな感じが何回が続き、あれっ、10分してもつかない。どうやら違う場所を現在地だと思っていたようだ。まあ、久しぶりだからこんなもんか。結局20分ほど歩いて、今度こそと言って5回目くらいに、やっと頂上にたどり着いた。

 
頂上は白い土があらわになったまぶしい山頂だ。何組の方が休憩されており、楽しい声が聞こえてくる。秋の風が心地よい。雨を心配していたが、ここでは晴れ間も見えてきた。妻は登りでふとももが痛いらしい。雷山の縦走を考えていたが、今日はここまでとなりそうだ。私は妻と逆で、登りは平気だが、足首の回りや踏ん張りが十分ではないので、下りがとても不安である。無理せず下山が今日の無難な選択か。

 
昼食をとり、今日はコーヒー豆をひいて、コーヒーを入れてみる。yashiさんから以前いれていただいてとてもおいしかっので、復活のお祝いに道具を揃えてみた。手動でコーヒー豆を挽く。そしてフィルターでドリップする。香りがよくて、とてもおいしい。ちなみに私は砂糖やミルクも入れるので、コーヒーの本当のおいしさはわかっていない気もするが。これは冬場時々楽しめそうだ。

 
さて、無理はせず下山しようとしまい出すと、妻が
「行ってみようか、雷山」
とのたまう。
「ええっ、無理やろ」と思いつつも、私はもっと歩きたい気分。地形図もよく確認せず、たぶんあれが雷山だろうと妻に指さす。
「あれくらいなら大丈夫?時間は?」
ええと、
「1時間ちょいかな」
とうら覚えの記憶をたどり答える。実はこの1時間、ネットで見た山慣れした人のタイムだった。本では標準時間1時間30分と書いてある。ということは、あらゃ、今日の私たちなら、2時間15分の道のりだった・・・ 今日のコースの断面図を見せて、5回くらい登り降りすれば着くやろうと伝えながら、縦走路に突入する。

 
前日が雨だったものだから、笹道が滑る滑る。とにかく何かをつかみながらゆっくりゆっくり降りてゆく。最初の下り道はつかむがないので結構難儀した。その後は、立木があったり、笹をまとめて掴んだりすれば、なんとか滑らずに歩けた。1時間くらい歩いて、
「もう、あと20分くらいじゃない」
と妻に話して、20分くらい歩くと、標識があり、「944ピーク」と書いてある。地形図で確認すると、
「げっ、あと、3分の1はある・・・」
944ピークを過ぎると、足が見えない笹藪の道となる。5、6分くらい下ると、ちょっと楽になるが、なかなかの笹道だった。

 
その後は緩やかな登り下りの道を歩き、雷山に着いた。結局、井原山から2時間10分。おっ、見事標準の1.5倍のペースだ。

 
雷山山頂は、井原山より広くて気持ちがよかった。ここで、またコーヒーを入れて、おかしをつまんで、ゆっくりと時間を過ごした。空は晴れ、温かな日射しが山頂を照らす。やっぱり、山はいいなあとしみじみ思う時間。

 帰りは、来た道をしばらく下り、古場の標識を右に折れ、下りに入る。
最初は笹道、やがて植林帯の根のはる道となる。下りはすべらないように用心、用心。ストックを使いながら、一歩一歩を慎重に下ろしていく。最後は妻に置いていかれながらの下りだった。

 
橋を渡り、布巻林道に出て、ほっとする。通常、林道の舗装路は歩くのがいやになるのだが、今日ばかりは、舗装路に出れば滑る心配はなく、正直ほっとした。気づけば山を8kmを歩くことができた。
 実に久しぶりのうれしい山登りだったが、気負うことなく、歩いてしまえば、骨折した記憶などなくなってしまいそうだった。しかし、完全ではないので、徐々に慣らして、体力をつけつつ、体重も落としていこう。

「気負わず、再開、山登り」

長く楽しむための選択である。
 
 
 
雷山林道のスペースに車を停めて歩き出す。渓流の里登山口に着く。
 
 
しばらく舗装路を歩くと、赤い屋根の家の横を通る。
 
 
 
 
ほどなく登山道に入る。最初は水が流れる道を歩く。
 
 
 
笹道を抜けると鉄塔に着く。金網の横に沿って登っていく。
 
 
 
緩やかな坂道を登っていく。春にはツツジがきれいな登山道。
 
 
 
井原山山頂に到着。秋の風が気持ちいい。
 
 
 
コーヒー豆を挽いて、入れる。
香りがとてもよくて、おいしい。
yashiさんのおかげです。
 

 
 
コーヒーを飲み終えると、足が痛いと言っていた妻が、雷山まで歩くと言う。
よし、行っちゃえ。
 

 
 
最初の下りが怖かった。滑らないように足をひねらないように、最新の注意を払って下りた。
 

 
 
笹の中のブナの木に癒やされながら、縦走路を進む。
 
 
 
944ピークにやっと着く。えっ、ここは縦走路の3分の2・・・
まだまだ、先はあるぞ。

 
 
 
944ピークからの福岡方面の眺め
 
 
 
944ピークの後は、笹藪に突入。ストックで足下が見えるようにかき分けながら進んだ。
 
 
 
美しい森と陽の光に癒やされる道。山歩きはいいなあとずっと感じる時間。
 

 
 
やっと着いた。雷山山頂に到着。
ここで、またまたコーヒー豆を挽き、香りを楽しみながら飲む。

 
 
 
再び来た道をたどり、古場の標識を右に下りていく。
植林帯を歩くが、木の根に足をとられないように慎重に歩く。
 

 
 
橋を渡った右に折れ、布巻林道を下っていくと、雷山林道との合流点に到着。
 車の駐車場所まで、舗装路を歩く。

 
  
 
ずっと遠くの世界にあった山歩きが、自らに戻ってきた。
歩ければ当たり前のようであるが、歩けることはありがたいことをずっと心に残しておこうと思う。
 
 心配してくださった山の仲間のみなさんと、しっかりサポートしてくれた妻に感謝の山再開である。

 
 

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