青空と雲

今「シティ・ポップ」という音楽ジャンルが脚光を浴びているらしい。書店でちょうどよい案内書を見つけたので買ってみた。

シティ・ポップ 1973-2019、ミュージック・マガジン、2019

本書によると、シティ・ポップとは次のような音楽ジャンル。

70年代の日本で作られるようになった都会的で洗練されたポップ・ソング」。都市生活の価値観や感情を歌った新しい音楽

私の感覚では、70年代の前半は「フォーク」、後半は「ニューミュージック」の時代。「シティ・ポップ」は80年代の音楽。私は高校生だった。

そのイメージは、海岸沿いのドライブや華やかな街の散歩に似合う音楽。曲風は洋楽のAORとも重なる。

その定義に従い、本書を参考にしながら、お気に入りのシティ・ポップを集めてみた。この本はだいぶ前に買っていた。自分のお気に入りのプレイリストを作るのに思いのほか時間がかかってしまった。

選んだ楽曲は、二つの時代に分かれる。高校から大学時代の80年代の半ばから後半によく聴いていた音楽と、『烏兎の庭』を始めてから図書館で借りて、繰り返し聴くようになった音楽。前者に入るアーティストは菊池桃子飯島真理オフコース麗美、杉山清貴。

2012年に集中して80年代の女性ポップスを借りた。きっかけはたぶん、2011年に聴いた太田裕美『Feelin' Summer』。このアルバムは大好きで夏が近づくと必ず聴く。「シティ・ポップ」は夏に似合う。上記のアーティスト以外はこの頃に知った人が多い。

あまりに定番すぎる大滝詠一や山下達郎、竹内まりや、松任谷由実は外した。

お気に入りを集めてみると林哲司作曲の作品が多くなった。彼が80年代のミュージック・シーンを牽引していたことは今更強調する必要もないだろう。作詞家では松本隆は別格として康珍化と売野雅勇も好き。

「シティ・ポップ」と聴いてまず思い浮かぶのはアルバムは菊池桃子のデビュー・アルバム『Ocean Side』。全曲が林哲司の作曲。

ところで、本書では最近著書を読んだ松永良平が選盤を監修している。本を買ったときには気づかなかった。列挙されたアルバムを見て、あらためて彼の懐の広さに感心した。


街中に住んだことはない。リゾート地や海岸沿いに住んだこともない。そういう意味では「City Home」は私の生活史にはない。私はずっと「郊外」に住んできた。

大人になって自分の住処として見つけた場所も、そういう場所からは遠い「郊外」だった。

だから、いわゆる「シティ・ポップ」の音楽を聴くと、どこか遠くへ行った気になる。

深夜の高速道路や埠頭の端、夏休みをのんびり過ごせるリゾート地や波の照り返しがまぶしい海岸沿いの道、摩天楼の立ち並ぶ大都会の真ん中や、高級ブランドのブティックが並ぶ歩行者天国など。

ついでに書けば、「ひと夏のロマンス」も「避暑地の出来事」の経験もない。

「シティ・ポップ」はいつまでも私の"imagination"のなかにある。


曲順は順不同。表示は歌手名、曲名、アルバム名。アルバムは私が持っているものの名前を記した。()内は作詞・作曲担当。


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