| 【flower】 |
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| SCENE 1 (璃璃夢) どーしよう?! ![]() |
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「ど、どどど、どーしよう?!」 その日。 町へお買いものに出ていたワタシは、今日が何の日だったのかすっかり忘れてたの! 今日はたしか、カエデのお誕生日だったのかな? ワタシね、前にカエデとそのことをお話ししてたとき、思わず「プレゼントしてあげるね!」 って言っちゃったのに……今の今ままですっかり忘れてたの……。急いでお財布の中身を たしかめてみたけれど……お財布にはたったの50円しか入っていませんでした。 「ど、どどど、どーしよう?! これじゃあ、なんにも買えないよぉ! どうしよう、どうしたらいいのかなぁ……」 もう、ワタシのばかばかばか。 今日がカエデのお誕生日だって知ってたら、新しいリボンもマンガもガマンしてプレゼント を買ってたのに……。こうなったらお家に戻って、フランケンにまたおこづかいもらってこよう かな……。でもでも、フランケンのことだから――「お嬢さま、だからいつもこのグレモリが申しているでしょうに。おこづかいはちゃんと計画を立てて、ほんとうに必要なものだけを……」 とかなんとか言って、いつものおせっきょうが始まるに決まってるもん。 じゃあ……にいさまはどうかな? にいさまは璃璃夢にいつも優しくしてくれるから、おねだりすればきっとおこづかいの一つ や二つ……って、それはもっとダメだよ! にーさまには、璃璃夢が“じこかんり”のできないおんなのこだって思われたくないもんっ! それからワタシはいろいろ考えたんだけど、けっきょくなんにも思いつかなかったの。 だからね? こういうとき、むかしの人は言いました。 「さんにんよればなんとかかんとか」! 一人で考えるからダメなんだよね。 みんなでいっしょに考えればきっとなんとかなるなる! |
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| SCENE 2 (菊依) 不思議な顔ぶれ |
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璃璃夢ちゃんと出会ったのは、菊依がちょうど買い出しにでかけていたときのことでした。 せっかくのお休みですもの、今夜は腕によりをかけて秋の食材を活かしたお夕飯を―― と思って町に出かけたところ、見覚えのある女の子が菊依を見て、「おーい、きくえー!」と名前を呼んできたのです。 「あら♪ 璃璃夢ちゃん」 璃璃夢ちゃんは菊依に駆け寄るとむんずと腕をつかみ、そのまま近くのカフェテラスへと 菊依をひきずっていきました。あらあら、どうしましょうちいにいさま。菊依ったらこんな小さな 女の子にナンパされてしまいましたよ♪ 外に張り出したカフェテラスの一角には、璃璃夢ちゃんの他にもお馴染みの顔がひとつ、 ふたつ、みっつ……。 「え、ええっと……本日はおひがらもよく」 「レディース・エーン・ジェントルメーンなのだー!」 ――なんて、とんちんかんな挨拶をしたのは逢ちゃんと苺ちゃんのお二人です。二人とも 町へお買い物にでも来ていたのでしょうか? いつもと比べてめかしこんでいる姿がなんとも 可愛らしいです♪ 「……こんにちは、菊依さん」 そしてもう一人は……あらあらあら。珍しいこともあったものです。いつもならお姉さんの 杏奈ちゃんと一緒にいることの多い、妹の若菜ちゃんでした。菊依とはたまに顔を合わせて お話しをすることもありますが、それでもこの中では浮いちゃって見えますね……。 「こんにちは。……もしかして、若菜ちゃんもですか?」 「はい。今日は一人でお出かけしてたんですけど……そこで璃璃夢ちゃんに出会って」 有無を言わさず連れてこられたんでしょうねぇ。 「ところで璃璃夢ちゃん、いちごちゃんたちに何のごようなのだ? こう見えても苺ちゃん、 けっこう忙しいから手短にすませてほしいのだ」 「あ……それは私も。杏奈ちゃんと待ち合わせしていますから」 「うん。じゃあ言うけど……その前に、今日は何の日かみんな知ってる?」 |
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| SCENE 3 (苺) シンキング・ターイムなのだっ! ![]() |
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にゃはははー♪ 璃璃夢ちゃんったらおまぬけなのだっ! 今日が楓ちゃんのお誕生日だってことくらい、いちごちゃんはちゃーんと知ってたのだ。 でも璃璃夢ちゃんは困っているようだったから……しかたない、ここはいちごちゃんが一 肌脱いであげるの! いちごちゃんがいれば鬼に金棒、のれんに腕押し、ぶたさんに真珠 なのだー! にゃはははは♪ 「ありがとうイチゴー! ワタシうれしいよぉ、『このさいイチゴでもいいや』って思ってつれて きたかいがあったみたい」 …………いちごちゃん、帰ってもいい? 「あ、あの苺ちゃん。璃璃夢ちゃんも悪気があって言ってるわけじゃないと思うから…… だから、ね?」 ……むむむ。若菜ちゃんがそう言うなら仕方ないのだ。苺ちゃんはもうお子さまじゃないか ら、ここはガマンガマン。オトナの女は“かんだい”でなければいけないのだ。 「だけど、お金がないことには始まらないのだ。璃璃夢ちゃん、今どれだけ持ってるの?」 「えーっとね、50円!」 ……ご、50円とはまたスゴイ予算なのだ。50円で買えるものと言ったら……お菓子くらい しか思い浮かばない。でもお菓子と言っても、買えるものなんてたかが知れているから…… う〜〜ん、難しいのだ〜〜〜〜 「じゃあ、お金のかからないプレゼントはどうかな? たとえばね……楓ちゃんに歌を歌って あげるとか」 若菜ちゃん、それナイスアイデアなのだ! 「いちごちゃんもそれに賛成なのだ! 璃璃夢ちゃん、こうなったらバースデーソングを歌 ってあげるのだ! もしなんだったら、いちごちゃんもいっしょに歌ってあげちゃうぞ?」 「う〜〜〜〜ん、お歌かぁ。でもワタシのお歌って、カエデあんまり好きそうじゃないし」 璃璃夢ちゃんはそう言うけれど、上手とか下手は関係ないの。 心を込めて歌えば、きっと相手も嬉しく思ってくれるってこと、いちごちゃんは知ってるよ? ……そうだよね、兄っちゥ 「あらあら、じゃあ璃璃夢ちゃんはどんな歌が歌えるのですか?」 「キクエなら知ってるかなぁ、えっとねー“ヘビメタ”! ワタシ、メタリカとかずのーけいさつ とかのお歌がとくいなの」 ……ヘビメタ? ヘビメタってどんな歌なのだ? う〜〜〜〜ん、わからないのだ〜〜〜〜〜〜?! だけど菊依ちゃんや若菜ちゃんは知ってたみたいで、「歌はやめましょうか」なんて真剣な お顔で話してたの。あにっちなら、ヘビメタを知ってるのかな? よぉし、こんど聞いてみるのだ〜! |
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| SCENE 4 (菊依) そんな時には…… ![]() |
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結局……これといった意見も出ないまま、時間だけがすぎていきました。 璃璃夢ちゃんには悪いですけれど、そろそろ買い物に向かわないとお夕飯の準備が遅れ てしまいます。 ですから……菊依は若菜ちゃんにそっと耳打ちをしました。 (若菜ちゃん、申し訳ないのですがお手持ちに余裕はございますか?) (……え、ええと、少しくらいなら。でも……どうするんですか? 菊依ちゃん) (それはですね〜、菊依にお任せです♪) 今日は奮発して松茸でも――と思いましたが、まあこれも何かのご縁でしょう。 松茸の代わりは他で補うとして、今は…… 「璃璃夢ちゃん、でしたらお花はいかがですか? この時期はガーベラが定番なんです。 赤やピンクの花を咲かせるガーベラは、きっと楓ちゃんにも似合いますよー♪」 「でもキクエ? ワタシそんなにお金もってないよ? どーすんの、ドロボーでもするの?」 「り、璃璃夢ちゃん……そんなのダメだよ……」 「ふっふ〜ん♪ だってワタシ悪魔だもんっ」 「こら、そんなことは菊依が許しません。……あのですね、璃璃夢ちゃん? なにも一人で 買うことはないんですよ?」 袖振り合うのも多少のなんとやら。 時間にも余裕がないことですし、すぐに向かうとしましょう――そう、花屋に。 |
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| SCENE 5 (逢) One for All/All for One ![]() |
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菊依ちゃんの一言で、お話は終わったみたい……。 そのとき、菊依ちゃんは何かを思いついたらしくて、璃璃夢ちゃんを連れ、みんなでお花屋 さんに行きました……。店の前では鮮やかな色をした花々がいっせいに咲き誇っていて、あたしは思わず……見惚れちゃいそうになるの。 その中でも特にバスケットにつめこまれた赤やピンクの綺麗な花が……目に付きました。 菊依ちゃんが言ったガーベラって……もしかして、あの花のこと……なのかな? みんなで楓ちゃんーのプレゼントを考えていたとき……あたしはずっと黙っていたの……。 50円で買えるプレゼントなんて……ぜんぜん、思いつかなかったから……。 だから……若菜ちゃんが「歌を歌ってみたら」と提案したときも……わたしは首をこくん、 こくんって振ることしかできなかったの。 ……それが、ほんの少しだけ……くやしかった……かな? 璃璃夢ちゃんが私に相談してくれた時はね……すごく嬉しかったよ。 困っているなら、あたしが力になってあげるよ……って、あの時はそう思えたのに、結局、 あたしは何もしてあげられなかったの。 「すいませ〜ん、これをいただけますか? ……ええ、はい、誕生日用に……」 菊依ちゃんが買ったのはやっぱり、真っ赤なガーベラだったの。 あれだけ綺麗な赤色なら……楓ちゃんもきっと喜んでくれるよね? ……でも、その花束に付いたお値段……とっても高く見えるのは気のせい……なのかな? 「――さて、プレゼントはこれで買えたわけで・す・が……どうせなら皆さん、この際みんなで楓ちゃんにお祝いをしてあげるというのはどうでしょうか?」 ……ああ、そうか。菊依ちゃんは最初からそのつもり、だったんだね……。 あたしにも、やっと分かっちゃった。だけど璃璃夢ちゃんだけはわかっていないようで、お 口をポカーンって開けたまま……。 「え? え? え? なになになに? どーいうこと?」 「……あ、あのね……璃璃夢ちゃん、実はね……」 事態をのみこめていなかった璃璃夢ちゃんが、なんだかちょっぴり可笑しくて……あたし は璃璃夢ちゃんに説明しました。すると璃璃夢ちゃんのね、顔がぱぁーっと明るくなって…… 「ありがとー、アイーーーー! ワタシとってもとっても嬉しいよぉ!!」 感激して、ぎゅーって抱きついてきたの。 ……でも、嬉しいのはあたしもいっしょ……だよ。 ねぇ、あに……。誰かを喜ばせてあげることって、こんなに……こんなに嬉しいこと…… なんだね。 |
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| SCENE 6 (若菜 & 杏奈) 風の短剣に息吹を乗せて ![]() ![]() |
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「おまたせ若菜、……あら、珍しいわね。若菜が菊依ちゃんたちと一緒なんて」 若菜たちが花屋を後にしてしばらく経つと、杏奈ちゃんがやって来ました。 「……いろいろあったんです。それより杏奈ちゃん、今から少し手伝ってもらえますか?」 「別に構わないけれど、なにかしら? ……あ、もしかして魔法――ね?」 さすがは杏奈ちゃん、若菜の言いたいことをすぐに察してくれました。 「ウフフフッ……そんなの顔を見れば一目瞭然よ。それで、何をすればいいのかしら?」 「ありがとう杏奈ちゃん。えっと……これから〈風精〉を喚ぼうと思うんです」 〈風精〉――世界を支える四大元素の一つを司るもの。 ある錬金術師が書物の中に書き記したそれは、木々の梢を鳴らして吹き渡る、風の乙女 〈シルフィード〉とも呼ばれています。 暴れん坊のサラマンドルや気むずかしいウンディーネ、お調子者のノームたちとは違って、 好奇心が旺盛な彼女たちなら、若菜たちのお願いを快く引き受けてくれそうだから。 杏奈ちゃんは〈風精〉を喚ぶと聞いて不思議な顔をしたけれど、でも「面白そうね」と微笑 んで協力してくれることになりました。そんな杏奈ちゃんの笑顔を目の当たりにすると、若菜 はいつも――「きっとうまくいくんだ」って自信が何処からともなく沸いてくるんです。 「じゃあ……璃璃夢ちゃん、お花を貸してください。あと――悪いけれど……その……」 「うん、わかってる。ワカナたちが魔法を使うあいだはリングを外すんだよね?」 「ごめんね、璃璃夢ちゃん。じゃあお願いします」 璃璃夢ちゃん自身は気付いてないみたいだけど、彼女が嵌めている指輪はとても古くて、 強い力が篭っています。そんなのがすぐ近くにあると知ったら、〈風精〉たちは驚いて逃げ出 しちゃうかもしれないから……。 「じゃあ若菜、始めるわよ」 「はい、杏奈ちゃん」 いち、にの、さんで目を閉じ、祈りを捧げるときのように心をおだやかに保ちます。 すると、次第に体がすーっと透き通っていくような、そんな感覚が体を支配していきます。 そして同時に、杏奈ちゃんの声が耳ではなく心のほうに直接、響いてきました。 『――Fiat firmamentum per Elohim. Fiat verbum halitus meus.Invocare tibi,Conventus Sylvorum.』 歌うように紡がれる呪文を、重ねるように響き合わせ。 『風の短剣に息吹を乗せて吹く、東の風の門から黄色の光が伸び、風を運ぶ』 囁くような乙女達の息吹は、やがて言葉となって聞えてきます。 若菜や杏奈ちゃんの喚ぶ声に応え、風の乙女たちは一人、また一人と集まってきました。 次第に呪文は重なり、若菜と杏奈ちゃんは同時に風の乙女たちに告げます。 『わが心の声を聞け、風の乙女たちよ――』 その時一人の風の乙女が、さらうように若菜の手からガーベラの花束を受け取り、いたず らそうな笑顔を浮かべて流れさっていくイメージが、閉じたはずの目に映りました。 その表情ははどこか――杏奈ちゃんの笑顔にも似て。 だから、「きっとうまくいくんだ」って――若菜にはそう思えました。 |
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| SCENE 7 (楓) 風のおくりもの ![]() |
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それは、あにさまと手をつないで歩いていたときのことでした。 ぴゅうと強い風がふいておもわず目を閉じた瞬間、耳元でだれかがくすくす笑うこえが聞 えてきました。びっくりして目を開けたけれど、でも楓のとなりにはあにさましかいなくて…… あにさまに聞いても、そんな声は知らないって言うから……なんだか恐くなって、楓はあにさまの手をぎゅっと握ったです。 も、もしかしたら、おばけだなんてこと……ないですよね? 「……あれれ? これ、なんですか?」 そのとき、ふいに気が付きました。 あにさまとつないだ手とは逆の手に、楓はなにかをぎゅって握り締めていたんです。 それは真っ赤なお花ばかりの花束でした。 あにさまもその花束に気付いて、「どうしたの?」ってお尋ねになりますが……ううん、楓 もこんな花束は知らないです。いったいどうしたのかな……って思って花束の中をのぞいて みると、中には小さなカードが入ってました。そのカードの表にはお習字の見本みたいなき れいな字で楓の名前が書いてあって、どこかで見たような気がしたけれど……その時は思 い出せませんでした。 そのカードは二つ折りになっていて、恐る恐る開いてみるとそこには―――― |
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アイコン素材:「陰陽龍」さんより借用