top > library > lb3


LB3:「要約率に関する考え方」


要約率に関する考え方

 パソコン要約筆記と言われるように、「要約」という言葉について、いろいろと論議がされます。
 ここでは、どのように要約するかではなく、どれくらい要約すべきなのかという点を説明します。

 昨今、パソコン要約筆記のシステムや、技能が高まり、100%に近い音声内容を文字化する事が
出来ます。
 しかし、反面、無駄な文字が多すぎて、目が回る読むのに疲れると言ったような不満の声も
聞かれます。では、どれくらいの要約が適しているのかとい点が問題になりますが、これは、受益者
によって大きく異なります。
 多くを要約してほしいと願う方は、「単語や要点をまとめて表示してほしい。」「解りにくい部分は
言い換えて書いて欲しい」
と言い、要約しないで欲しいと願う者は、「はなし方や、『え〜』、
『その〜』と言ったような、話し手の癖まで伝えて欲しい」
という要望をする方もいます。

 では、その違いはどこから起きているのでしょうか。
 要素として、
  ・失聴年令・・・・・・・・・・・ 聴力を失った(障害を持った)年令
  ・日本語の理解力・・・・・ 文章力(一般学校、ろう学校の違いも含む)
  ・手話の理解力・・・・・・・ 手話によるコミュニケーションを身につけている
  ・年令・・・・・・・・・・・・・・  年令差(成人)
  ・動体視力・・・・・・・・・・  動くものを見る力、年令にも左右される
  ・残存聴力・・・・・・・・・・  聴力での音声の取得の度合(補装具可)
 などがあると思います。

 各傾向として、次のようになると思われます。
      
項目 低要約 要 約 度 高要約
失聴年令 <高年齢            低年齢>
日本語の理解力 <高い 低い>
手話の理解力 <低い 高い>
年令(成人) <若年 高齢>
動体視力 <高い 低い>
残存聴力 <多い 少ない>

 では、具体的にどの様な方がどの程度の要約を求めるのでしょうか。
 現在は、まだサンプリングを行った検証をしていませんが、次のような結果が予想されます。
 
  文例:私はリンゴ、ミカン、バナナ、サクランボとか果物が大好きで、特に、
      ミカンは大好きですね。なんというか、あの甘酸っぱいのがいいんですよ。


  この様な原文を段階的に次のように要約してみました。
   1.原文のまま表示
   2.私は、リンゴなど果物が好きで、特にミカンが大好きです。甘酸っぱいのがいいですね。
   3.私は、果物が大好きで、特にミカンが大好きです。甘酸っぱいのがいい。
   4.私は果物で特に甘酸っぱいミカンが大好きです。
   5.甘酸っぱいミカンが大好きです。

  ”1”を好む方は、
    ・若年から中年で聴力の障害が比較的軽い方
    ・一般の学校を卒業または在校している若年の方
    ・手話の読みとりが困難で健聴者とのコミュニケーションの多い社会環境にいる方

  ”3”程度を好む方は、
    ・聴力の度合いに関係なく、文章力がある程度ある方
    ・手話と併用して利用する方
    ・手話、または要約筆記のどちらかをメインにし、補助として利用される方
    ・ある程度高齢な中途失聴者

  ”5”を好む方
    ・文章が苦手な方
    ・高齢で、文字を読むことが面倒な方(動体視力が落ちている方)
    ・ほとんど手話を見るだけで、単語など確認として、要約筆記を利用する方


 以上のように、いままで係わって来た聴覚障害者の傾向から、予測した内容と成っています。
 現状での、これらの比率や結果は異なるかもしれませんが、利用者によってニーズが異なる
 事を理解し、一部の参加されている聴覚障害者の意見や、キャプショナーの判断だけで、
 要約率を判断しないよう、気を付けましょう。

 また、不特定の聴覚障害者がいる現場では、「標準の要約」という、ガイドラインができると
 いいですね。


 ・*HIRO*・