LB3:「要約率に関する考え方」
◆ | 要約率に関する考え方 | ||||||||||||||||||||||||||||
パソコン要約筆記と言われるように、「要約」という言葉について、いろいろと論議がされます。 ここでは、どのように要約するかではなく、どれくらい要約すべきなのかという点を説明します。 昨今、パソコン要約筆記のシステムや、技能が高まり、100%に近い音声内容を文字化する事が 出来ます。 しかし、反面、無駄な文字が多すぎて、目が回る。読むのに疲れると言ったような不満の声も 聞かれます。では、どれくらいの要約が適しているのかとい点が問題になりますが、これは、受益者 によって大きく異なります。 多くを要約してほしいと願う方は、「単語や要点をまとめて表示してほしい。」「解りにくい部分は 言い換えて書いて欲しい」と言い、要約しないで欲しいと願う者は、「はなし方や、『え〜』、 『その〜』と言ったような、話し手の癖まで伝えて欲しい」という要望をする方もいます。 では、その違いはどこから起きているのでしょうか。 要素として、 ・失聴年令・・・・・・・・・・・ 聴力を失った(障害を持った)年令 ・日本語の理解力・・・・・ 文章力(一般学校、ろう学校の違いも含む) ・手話の理解力・・・・・・・ 手話によるコミュニケーションを身につけている ・年令・・・・・・・・・・・・・・ 年令差(成人) ・動体視力・・・・・・・・・・ 動くものを見る力、年令にも左右される ・残存聴力・・・・・・・・・・ 聴力での音声の取得の度合(補装具可) などがあると思います。 各傾向として、次のようになると思われます。
では、具体的にどの様な方がどの程度の要約を求めるのでしょうか。 現在は、まだサンプリングを行った検証をしていませんが、次のような結果が予想されます。 文例:私はリンゴ、ミカン、バナナ、サクランボとか果物が大好きで、特に、 ミカンは大好きですね。なんというか、あの甘酸っぱいのがいいんですよ。 この様な原文を段階的に次のように要約してみました。 1.原文のまま表示 2.私は、リンゴなど果物が好きで、特にミカンが大好きです。甘酸っぱいのがいいですね。 3.私は、果物が大好きで、特にミカンが大好きです。甘酸っぱいのがいい。 4.私は果物で特に甘酸っぱいミカンが大好きです。 5.甘酸っぱいミカンが大好きです。 ”1”を好む方は、 ・若年から中年で聴力の障害が比較的軽い方 ・一般の学校を卒業または在校している若年の方 ・手話の読みとりが困難で健聴者とのコミュニケーションの多い社会環境にいる方 ”3”程度を好む方は、 ・聴力の度合いに関係なく、文章力がある程度ある方 ・手話と併用して利用する方 ・手話、または要約筆記のどちらかをメインにし、補助として利用される方 ・ある程度高齢な中途失聴者 ”5”を好む方 ・文章が苦手な方 ・高齢で、文字を読むことが面倒な方(動体視力が落ちている方) ・ほとんど手話を見るだけで、単語など確認として、要約筆記を利用する方 以上のように、いままで係わって来た聴覚障害者の傾向から、予測した内容と成っています。 現状での、これらの比率や結果は異なるかもしれませんが、利用者によってニーズが異なる 事を理解し、一部の参加されている聴覚障害者の意見や、キャプショナーの判断だけで、 要約率を判断しないよう、気を付けましょう。 また、不特定の聴覚障害者がいる現場では、「標準の要約」という、ガイドラインができると いいですね。 |