Bob Dylan
 ボブ・ディランの記念すべき最初のアルバム。ここに納められている曲のうち、ディラン自身の作は2曲だけで、外の曲は当時のトラディショナル・フォークなどです。「朝日があたる家」とか「ペギー・オー」とか外のアーティストも歌っている歌がディランの声で聴けます。

 多分ニューヨークのフォーク・クラブなどでディランが持ち歌にしていた曲と録音したものでしょう。つまりここではディランが当時どんな曲を歌っていたのか、デビュー当時はどんな歌い方をしていたのかが分かる貴重なアルバムと言えます。
 のほほんとした表情のジャケット写真とは裏腹に、その声は老成していて迫力があり、歌声は地の底から絞り出すような苦悩に満ちています。弱冠20歳の時の録音とは思えないほどの迫力で、デビュー当時からディランの歌唱法が完成されていたことを窺わせます。
 若いんだからもっと明るく前向きなハッピーソングを歌ってもよさそうなものですが、デビュー当時からディランは世界の苦悩を一身に背負ったような存在だったんですね。



The Freewheelin' Bob Dylan
 ボブ・ディランの2枚目のアルバム。1963年、ディラン21歳の時の作品です。1枚目の「ボブ・ディラン」はほとんどがトラディショナル・ミュージック等のカバーだったので、オリジナル・アルバムとしては、この「フリーホイーリン」がデビューアルバムと言っていいと思います。
ディランを代表する「風に吹かれて」が1曲目に納められています。「ライク・ア・ローリング・ストーン」と並んでディランのもっとも有名な曲ですが、私が中学生の時(30年も前!)、初めて聴いたときは、なんちゅうしわがれた声でぶっきらぼうな歌い方なんだ!と思いました。ギターも単調なストロークだけだし、音も残響がなくキラキラしたところが全くない音で、何とも地味な印象でした。

 これがあの有名な「風に吹かれて」か!。とういう感動もありましたが、正直言って、ベスト・アルバムに入っていた「ミスター・タンブリンマン」や「マイ・バック・ペイジス」などの方がすぐに耳に入ってきて好きでした。
 反戦フォークの名曲とされている「風に吹かれて」ですが、今聴くとそれほど過激な内容でもありません。どちらかというとナイーブというか、「友よ、その答えは風に舞っている」と、なんだか無常観を歌ったような歌詞になっています。
 この曲はPPMが取り上げて大ヒットしたため、ディランがアルバムに入れるのをためらったほどで、今でこそ知らぬ者のいないディランも、当時は無名の若者だったと言うことです。
 
 プロテストソングとしては「戦争の親玉」などの方がハッキリとした主張を聞くことが出来ますが、歌の出来としては明確な主張を打ち出したものより、「風に吹かれて」や「激しい雨が降る」などのような、胸の内の主張を言外に臭わせたものの方が優れていて、後年まで歌い継がれることになりました。
 私自身も、「激しい雨が降る」などはとても好きな歌で、すべての歌い出しが「どこへ行ってたの?、青い目の息子。どこへ行ってたの?、私のかわいい坊や」で始まる歌詞は、以後何のことを歌っているかハッキリと分からないまでも、意味深長な言葉がちりばめられていて聴く者の想像力をチクチクと刺激されます。
 サビのAnd it's a hard ,and it's a hard, and it's a hard, and it's a hard rain's-a gonna fall.と言うところも力強くて思わず力が入ります。
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Another Side Of Bob Dylan
 前作「時代は変わる」ほどのとんがったプロテストソングは影を潜め、変わって自分の内面を歌った内証的な歌が多くなっています。
 「時代は変わる」で鋭く体制を攻撃する歌を歌い、60年代の怒れる若者の代弁者となったディランですが、早くもその地位にうんざりしてきたのか、このアルバムでは求められる姿と自分の姿の相克に悩む姿が描かれています。
その代表的な歌がアルバムの最後に収められた「It Ain't Me Babe(悲しきベイブ)」です。以後ディランのコンサートで良く取り上げられることになったこの曲は、一見恋人から無理な役割を押しつけられてうんざりしている男の歌に見えますが、ここで歌われている精神は普遍的なものです。
 どんな世界であっても、人間は本当の自分の姿を理解されることは少なく、周囲が「この人はこうあって欲しい」と勝手に望む姿を期待されることがほとんどです。
 有名になってフォークの神様等と祭り上げられる生活は、ディランが望んでいたものとはえらく違っていたことでしょう。そんな周囲に向かってディランが、「俺じゃない。違う、違う、違う、アンタが捜しているのは、俺じゃないんだ」と歌う姿は、ある意味皮肉なシーンですが、歌の内容が誰にも訪れる普遍的な悩みに置き換えることができることから、万人に受け入れられる名曲になり得たのでしょう。私も良くコピーして歌ったものです。
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Blood On The Tracks
「血の轍」
 1975年。このレコードが発売されたとき、私は中学1年生でした。フォークソングがニューミュージックと名前を変えようとしていた頃、吉田拓郎をよく聴いていた私は、拓郎が敬愛しているボブ・ディランとはどんな人なんだろうと思って聴き始めました。
 以後30年、ディランはいろんな変遷を遂げ、音楽シーンから忘れ去られようとした時もあります。
 しかし、70年代ディランがもっとも輝いていた時のこのCD「血の轍」は、ディランの長いディスコグラフィーの中でも最高傑作の評価が高いものです。

 フォーク調というか、アコースティックギターが中心のアレンジで、ディランの渋い歌声を存分に味わうことができます。今ではすっかり声がしわがれてしまって、よれよれ歌うのが定番になってしまっていますが、70年代半ばのこのころは、ほどよく枯れた歌声が自信に満ちていて、力強く感じられます。
 当初、バンドサウンドで録音されていたものを、発売直前になってディランが気に入らないと言いだし、大半の曲が録音しなされたという話が伝わっていますが、気まぐれなディランの性格を象徴するような逸話です。
 いつも注目を浴びていた歌詞も、よりいっそう深みを増して、過去・現在・未来の交錯した物語が脈絡なく語られていきます。ディランはニューヨークで時系列にこだわらずに歌詞を書く方法を学んだそうですが、個々の歌詞の意味は不可解で理解不能でも、言葉から受ける印象は、不思議な世界の映像をリアルに見せてくれるような、すばらしい歌詞になっています。
 初めて聴いてから30年たった今、何度聴き返しても新しい発見がある傑作アルバムです。
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Bob Dylan

discography
 私がこれまで聴いてきたBob Dylanのアルバムについて感想を述べたものです。いつ完成するか分かりませんが、順次時系列に更新する予定ですので、ご期待ください。
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