砥石の選び方

私が長く天然砥石を販売してきて、砥石を選ぶ上での注意点や
私の思う事を少し書きましたので、砥石を購入する上での参考にして
頂ければと思います。
まず、天然砥石とは・・・2億5千万年前に火山などにより放散虫と言う
石英と粘度が陸地から赤道近くの深海底まで吹き飛ばされ、千年に1ミリ
と言う極めて穏やかな速度で積もったものが長い年月を経て、掘り
起こされ今に至ります。
一言で天然砥石と言いましても、仕上げ砥、中砥、荒砥などに
分かれています。
その中でも中山、奥殿などの山の種類、その山の中でも合さ、巣板、内曇り
などの層の種類、その種類の中でも梨地、蓮華、紅葉、カラスなどの
特別銘柄など色々な種類が有ります。
これでは、天然砥石を初めて買う方やあまり知識が無い方などは、どれを
選んで良いのか解りません。
砥石を長く販売している私達でさえ解らない部分がまだ多くあります。
どんなに良い色をしていても、どんなに綺麗に見える砥石でも研いで見ると
全然想像していた物と違う砥石や、ヒビ、欠けが多く見た目にもあまり良い
とは思わない砥石がとても良い砥石で、素晴しく切れ味の良い砥石、
あるいは砥石の上の方は良かったが、砥石を長く使い半分位使ったら、
地金が多すぎて使えなくなってしまったなど、
天然砥石には見た目では解らない所や、同じ山の
砥石でも一つ一つ違う砥石なのだと言う事を忘れないで下さい。
では何故、そんな事をしてまでも天然砥石を買う方がいるのか?
それは人造砥石には無い、刃先を硬くする作用や刃先の色、
それになんと言っても切れ味が素晴しいなどの利点が有ります。
だからと言って人造砥石が悪い訳では有りません。
人造砥石などでも素晴しい砥石は有りますし、人造砥石の良い点は同じ種類
の砥石を何丁買っても品質が均一で当たりハズレが無いなどの利点が有ります。
まず砥石を選ぶ上で大事な事は、
何を研ぐのかです。包丁、鉋、鑿、ナイフ、刀など色々な種類が
ありますが、包丁の中には中砥で十分仕上がる物も有りますし、
刀などは違う種類の仕上げ砥を4〜5丁も使う方もいます。
次に砥石の硬さですがこれはその人によって軟らかい方が好きな人、
硬い方が好きな人など色々好みが有りますので一概には言えませんが、
私が思うに最終仕上げに使う砥石は硬めの砥石が良いと思います。
硬めの砥石の方が砥面を合せる回数が少なく、まるっ刃に
なりずらくなり、柔らか目の砥石に比べて硬い砥石の方が目が詰まっていて
(砥粒が細かい)研磨力が有るので初心者の人ほど硬めの砥石を使った方が
良いのではないかと思います。
次に、「地金を引かない砥石が良い」とは解っていますが、全く地金を
引かない砥石は稀で、ほとんどの砥石には地金は入っていますので、
名倉を使って地金を引きずらくさせたり、研ぐ長さ(ストローク)を
短くしたり、工夫をして研ぐ事をオススメします。
よく、中山産の砥石が良いと言われるのは、全体的に地金が少なく
しかも素晴しい切れ味に仕上がる砥石が多いからです。だからと言って
全て良い砥石と言う訳では有りませんが・・・。
次に鋼の種類ですが、鋼によっては軟らかく研ぎやすい鋼から硬く
研ぎずらい鋼があります。
刃物に鋼の種類が書いてある刃物も有りますが、大体は書いて有りませんので
刃物を購入される時にお店の方などに鋼の種類などを確認される事を
オススメします。一般に白紙は柔らかく、ハイスなどは硬い種類に入ります。
大まかではありますが、以上の点を参考に砥石を選んで頂ければと思います。
これは私の考えなので間違っている点なども有るかと思いますが、その点は
ご了承下さい。
お客様によく、中山の戸前は有りますか?と聞かれる事がありますが簡単には
見分け割れる物ではありません。
お店によっては、これがそうだよ。とか言われる所がありますが、ほとんどが
でたらめで戸前層ではない事が多いです。。
戸前層とは、簡単に言うと大取れした中心部の良い砥石の事を指しているようですが、
砥石を掘った方にしか解らないそうです。
私も含め長年、砥石を販売している方にも解らないそうです。
層を気にせず良い砥石を見つける方が良いのでは、と私は思います。
最後に砥石の管理についてですが、使った後は砥石の汚れを洗い流して、
水を良く拭き取りタオルなどで包んでおく事をオススメします。
ヒビの入った砥石、割れそうな砥石などは砥面以外の所を漆やカシュウ
などを塗って保管して置くと割れ防止などになります。
以上の事を気をつけて砥石をお買い求め下さい。
きっと貴方の自信や力になってくれる事でしょう。