≪寸描≫             戻る

  POMが縁あって当家に寄寓することになって以来、16年と少々、

ドッグイヤーで換算、人で言うなら、所謂 「傘寿」に相当するらしいが、

いまもってまことに元気そのものである。

  両親は、両隣の血統書つきで数々の賜杯を有した「ポインター」と、

「ビーグル」であった。

  当家の庭で、その生を授かった模様で、母系が優性であったらしく

外形は、「ビーグル」でありながらも、腹部には丸い斑点を有し、言う 

ところの「こまた」のきれあがったスタイルで跳躍力も抜群である。

  毎日々、飽きもせず庭に張ったロープを飛び越して遊んでいるが、

昨今は些かその力にも翳りがでてきたのか、時として後脚をロープに

ひっかける醜態を演じ、見られたのにきずくと、心なしか恥ずかしげに、

庭の隅に隠れるのが噴飯もの。 かって脱走名犬の名をほしいままに

していた面影を失いつつある。

  とはいえ、母系「ビーグル」の血は脈々と、未だその衰えをみせず、

旺盛な好奇心で、そこかしこに、ところきらわず穴を穿ち、球根を掘り

出し≪ポンちゃん!駄目でしょッ≫と、時ならぬ悲鳴をあげさせる等々、

「老いて益々壮ん」な老犬である。

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