狂技エアロの女・NO6
(2010.10.13)

ジャンク

斉藤静江はおもむろに下を向き、バックからハンカチを取り出し
目頭をおさえ始めたのである。

予想外の展開に正木はびっくりした。
最近は会話らしい会話もないまま時間が過ぎていただけに、
何か気の触る事でもしたのではないかと思っていた。
この斉藤静江確かに女らしくとても気が利くのだが、気の強さは人一倍普段の行動からは滲み溢れていた。
その為斉藤静江のこういったタイプの涙は正木もとまどいを隠せなかった。

正木は「どうしたの?」との慌てて斉藤静江に向かって聞いた。
彼女は、しばらく鼻をすすったまま何も話さなかったが、すぐに、
大きいな深呼吸をして、目の前のコーヒーを一口飲んだ。

そして正木の顔を見て先に結論を話した。
それは・・・
お金を貸して欲しいと言うのだ!
金額は100万!

理由はこうだ
学生時代の友達で2年前にOLを辞めて看護の道に進み、そして今年看護学校を後数ヶ月で卒業を迎えるのだが、
一緒に暮らしていた彼から、暴力を普段からうけていて、最近殴られた左目の視力が落ちて
病院に行ったら失明する可能性が出てきて、その手術費を貸してくれないかと言うのだ。


それを聞いて、正木はいたって冷静になれた。それは
今まで斉藤静江に色々お金を使わせてきた漬けががきたなと感じただけだった。

正木との飲食代、交通費等・・・総額100万は超えてる。
そのお金は彼女の好意で自分自身の遊びであったとしても、
充分正木も楽しんだではないか。
それにここで彼女を助けておけば、二度とこの様な話しはしてこないだろと正木は考えた。
正木にとってこの斉藤静江の話しが本当か嘘かはすでに問題ではなかった。

それに斉藤静江の叔父は元市議会議員、更に地主で金持ち。社会的信用性は
ある。ここで借用書と印鑑をもらえば問題ないだろう。

正木は2時間後、自分の貯金通帳から80万を引き出し、残りを消費者金融から借りて現金100万を斉藤静江に渡し、来月末に全額支払う約束の借用書を書いてもらった。
正木はここで何故返済日が来月末なのかとか、何故手術費に100万もかかるのとか、余計な事は聞かなかった。
斉藤静江には信用してる事を示すのが一番だと考えた。斉藤静江は100万入りの封筒ををバックにしまうと、有り難うと言って乗ってき来た車で帰った。

この斉藤静江との金の貸し借りが後でとんでもない展開を引き起こす・・・


その日の午後4時頃・・・・

ここはとある空港のロビー・・・・・1人の女性が座っていた。
Tシャツ姿でデニムにヒール姿で大きめのサングラスに首にはスカーフを巻いて
すらっと伸びた足はモデルを思わせる。

しかしその女は震えて、今にも死にそうに怯えていた。周りから普通をよそうのに
精一杯で逆にそれがかえって普通に見えない。
更に彼女のTシャツの袖からはバラと蛇の刺青が見えていた。

その時向こうから私服警官がやってきた。

彼女はその警官に抱えられて空港を後に車に乗せられた。
向かった先は市内中心部のビジネスホテル・・・
その警官は部屋に着くなり彼女の服を脱がせた。
そしてぐったりしてる彼女をベットに寝かせ、安定剤をビタミン入りの水で彼女に飲ませた後、タバコを一本吸ってしばらくして帰った。
その晩彼女は死んだように眠った・・・・

翌日11時過ぎ、彼女は軽い頭痛と共に昨日の警官からの携帯で目を覚ます。
携帯で一分ほど話をして彼女はシャワーを浴び、警官が起きたら飲むようにとあったメモ書きをみて、また安定剤をビタミン入りの水で飲んだ。そして支払い済みのホテルを後にした。
2分ほど歩いてると後ろから、シルバーのBMWがクラクションを鳴らす、
彼女はその車を待っていたかのように乗った。運転手は昨日の警官だった。
車の中で2人は無言状態が続く、だが2人は堅く手を握り合っていた。
途中警官が用意していたハンバーガーを食べる。
具合は大分よくなったらしい。

彼女は空港に到着するまで旅行先の沖縄で大麻をやっていた、それが少し質の悪いやつで
昨日こちらの空港に着いてから具合が悪くなったのだ。しかもその大麻は今運転中の警官からもらった物だった。

一時間ほどして、車は目的地に着いた。
彼女は警官が用意してくれたスポーツバックをもらって、
じゃ2時間後といって彼は去っていった。
その目的地の建物内のロッカー室で彼女は右方の刺青が見えないように四角い大きめのシップみたいな物を念入りに張った。
そして深い深呼吸をし、軽く背伸びをして・・・・・スタジオに入った。
そしてCDをセットし、センターに進み、みんなの前で明るく挨拶を始めた。

その彼女の名は清水香織(30)、職業エアロビクスインストラクター。

清水香織は以前勤めていたFCを右肩に入れた刺青のためクビになり、今日ここの新しいFCでの初仕事であった。

そしてその清水香織の右後ろに正木はいた。しらないFCで正木ががそこをキープするにはスタジオ内いい雰囲気ではないが、
正木はこの清水香織とはクビになるFCで一緒で、
今日初レッスンがあるから応援に来てと清水香織からメールが届いていた。
スタジオは正木のように駆けつけた前のFCの会員と
初めて見るここの会員で異様な雰囲気に包まれ、レッスンは始まった。

実は正木はこの清水香織とFCで一緒だっただけではなく、長谷部良子と付き合う前に
短い期間だったが付き合っていた事がある、それで彼女の事はここの誰よりも詳しい。


清水香織は現在3年間も別居中の旦那がいて、今は裁判中だ。
子供は5才で旦那側にいる。
つまり警官とは、お互い不倫関係。

肩の刺青は2人の絆を確かめ合うためにグアムで警官と2人で入れた物で
バラと蛇の刺青はこちらの生々しいタイプではなく、少し可愛らしい感じの物だ。

2年前、
正木は前々から清水香織が俺に興味を示していたのは分かっていた。
レッスン中も明らかに俺を意識しているのを感じた。
彼女も自分に自信があったに違いない。
正木は清水香織に興味がなかった訳ではないが、

正木はいつも大事な所で彼女の話しをそらし、
二人っきりになるタイミングをずらしていたのは、
これほどにいい女でも、正木は単純に別居中とはいえ彼女は結婚している事が最大の壁になっていたからだ。

しかしその俺の理由も彼女のある悲惨な過去の話で一変し付き合う事になる!


続く・・・・・

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