Natural Trumpet

ナチュラルトランペットの勧め

ハイドンやモーツァルトの曲の中に出てくるトランペットのパートに満足しない奏者はプロ・アマ問わず多いでしょう。
特に活躍もしないし、ただでさえ大きな音で吹いていない上に、PPなどでは必要以上の緊張を強いられ、活躍する木管楽器やホルン程参加している気分になれないからではないでしょうか?
しかし、ハイドンやモーツァルト・ベートーヴェンはトランペットを必要としていたのです。
現在のオーケストラで使われている楽器の中でトランペットだけが250年の歴史の中で大きく形を変えてきました、17世紀・18世紀時代のオーケストラで使われていたトランペットは現在の楽器の倍の長さ、ピストンなど無く、自然倍音しか出ないナチュラルトランペットでした。古典派の時代ではバロック時代ほど名手も存在しなくド・ミ・ソの自然倍音を中心に書かれましたが、現在の楽器の倍の長さがあることから、音には響きが多くティンパニーと共にオーケストラの中では大変重要な役割を果たしていました。

バロック・古楽器の開拓者の一人、N・アーノンクールはこう述べています。

「ナチュラル・トランペットだけが歴史的な響きを持っています。理由は、トランペットは単なる楽器であるだけでなく、ある種のシンボルでもあって、全てのファンファーレ動機音型があるひとつの響きを要求するものであるからです。もし仮にモダン・トランペットで「高らかに鳴り響く」音を要求された場合、それは大きすぎる音量で演奏されることになります。それを正しい音量で演奏すると今度はファンファーレとしての性格が失われてしまいます。ナチュラル・トランペットを使えばこうした問題は起きないのです。」

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       ナチュラルトランペットを使う事によるメリット・デメリット
作曲者が書いた指示通りの音量で演奏できる事、現在の楽器でハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンが書いた通りの音量、特にff(大きく)で演奏してしまうと
トランペットだけがとても大きな音いになってしまいます、そして音量を押さえてしまうと他の楽器とスピード感が合わなくなり、アンサンブルが困難になってしまいます。
ナチュラルトランペットはベルも少し小さく、大きな音もオーケストラの中で良く響き、ffも弦楽器とボーイングに合わせたスピードで演奏できます。
作曲者が意識していた音量やスピード感での演奏は、今までのモダン楽器の演奏とは比較にならないほど面白いです。

しかし演奏の習得は簡単ではありません、当時のオリジナルの楽器は全くの管にベルを付けたシンプルな物で演奏にはかなりの熟練が必要でした。現在コピーで作られている物は音程を調整し、演奏を比較的簡単に出来るように殆んどの楽器に補正孔が付いています。
オリジナル楽器での演奏に情熱を向けた奏者達の研究で3つ、又は4つの穴を開け、出難かった音や音程が不安定な音も綺麗に演奏出来る様になりました。

共にスイスの製作者 エッガーの楽器、共にC管。
上が4つ穴式(イギリス式)、元々のナチュラルトランペットはこの形で補正孔はありませんでした、
現在は4つの穴が開いており、音によって全部塞ぐか、どれか一つを開けて音程を調整します。
4つ穴式はイギリス、アメリカ・で多く使われ、日本で演奏する方の多くもこちらの様です。

下は3つ穴式(ドイツ式)4つ穴に比べ出しやすい音の数が若干減りますが、操作性に優れ、バロック物等の早いパッセージも比較的演奏しやすいです。 ソリストで活躍しているR・フリードリッヒやN・エクルンドも
エッガーのこのモデルを使っています。

補正孔の部分写真、左が4つ穴、右が3つ穴。3つ穴のもう一つの穴は
裏側に開いています。 エッガーの3つ穴は若干指の場所が変えられるように幾つか開いており、不必要な穴はネジで閉じています。

山形交響楽団では8年がかりで取り組んでいるモーツァルト交響曲全曲公演のほか、山形交響楽団のCDでは古典から初期ロマン派までの曲の多くで古楽器を使っています。

トランペットに限らずホルン・トロンボーンも古楽器で演奏します。