車のイグニッション・キーを捻った時から新しい旅立ちが始まります。 また、いつも通い慣れた道を少し外れて見ると意外な発見をしたりする ものです。 私は、年数回の長距離旅行の他に、日帰りのドライブや自分の足を使っ た散策も楽しんでいます。 近場でもちょっとした旅と洒落込むと結構楽しいものです。 そんな中で、またあれこれ起こった事を「藤次郎放蕩記」として書き綴 って行きたいと思います… −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 2001/09の話。 藤次郎放蕩記 第22話 「只登る、只降る」  武蔵の国の”武蔵”の言葉の由来は、その昔日本武尊が東征のおり、 その武具を奥多摩の御岳山(みたけさん)に隠したことから由来するそ うで、それ以来、御岳山は日本の山岳信仰の始まりの地と言われている。  …でも、なんでこんな所にわざわざ隠すかねぇ…秩父の三峯山と言い、 本当にこのお方は山奥に出没しては伝説を残す人だなぁ。  と言うわけで、言って参りました奥多摩は御岳山に。  相模の国からは、JR横浜線,JR中央線,JR青梅線に乗り継いで 行きます。この日は三連休の中日ですが、いずれの車内もハイキングや 登山装備の人々でごった返していました。  今回の行程は只登る、只降るだけです。従いまして、JR御岳駅から 歩いて行きました。  今回は、奥多摩の山の様子を知るためなので、荷物は最小にして、も ちろん調理などしないのでストーブなどは無し、コンビニでおにぎりと お茶の缶を買って20リットルのヒップバックに詰め込みます。水も5 00ミリリットルのペットボトルを2本用意しただけです。  駅からケーブルカー駅までは緩やかな車道なので、一気に歩きます。  途中、二回ほどケーブルカー駅に向かうハイキング客を満載したバス に抜かれました。  ケーブルカー駅に着くと、そこにはケーブルカー乗車待ちの長蛇の列 が…駅の垂れ幕を見ると薪能がどうとか…どうやら、まずいときに来 たようです。  登山道の入り口にある鳥居の横で休憩をして、ケーブルカー駅を見て いましたが、乗車待ちの列は臨時便を出しているにも関わらず、減るど ころかどんどん長くなっていく一方です。  一息入れてから、登山道を登り始めます。登山道は単調な急勾配の舗 装路で、しかも、コンクリートに沢庵石を埋め込んでいるタイプです。  この沢庵石に足を取られるのが嫌なので、次の一歩を考えながら出さ なければいけないと言う歩き方になります。  前回の高尾〜小仏峠〜高尾山に行ったときの反省から、体力づくりを 始めたおかげか、今回は人に抜かれることはなく、また、息が上がるこ ともなかったです。ただ、単調な上り坂だったため、20分または100 メートル登る毎に数分の休憩を入れていくことにしました。  歩きながら周りの鬱蒼と茂った立派な木々見ながら登っていきます。 耳を澄ますと、カラスの鳴き声が…説明が難しいのですが、林の中独特 の音もしくは、町にいると聞くことができない野鳥の声を期待していた だけに、残念です。  …ふと、木に数字の書かれたプレートが付けられているのに気が付き ました。プレートの番号は登る毎に数字が減っていきます。「…まさか、 御岳神社が0になっているわけないだろうな?」と、思いつつ登ってい くと、プレートの番号0は、ケーブルカーの山頂駅でした。  御岳神社のある山頂付近は一つの町であり、多くの宿泊所があります。 ここに登ってくる途中で、自動車とすれ違いましたから、さっき登って きたコンクリートで舗装された登山道は、ここにすむ人々の生活道路な のでしょう。  御岳神社に参拝し、そこで昼食を採りました。  社殿から一段下がったところに宝物殿があり、そこの前に畠山重忠と 言う源平期の源氏の武将の像があります。「そう言えば、畠山氏の領地 ってこの辺だったような…」と思いつつコンビニのおにぎりを頬張って いました。  この御岳神社は、関東の多くの武将達が子孫繁栄や武勲を祈願しに訪 れています。  ここに”貧乏除け”と言うお守りがあるとガイドブックに書いてあっ たので、それを買おうと探しましたが、ありませんでした…残念です。  昼食後、暫くその場で休憩して奥社殿に向かいます。  他の人達がロックガーデンに向かうのに対して、その途中の道の脇に ある鳥居をくぐりました。  そこからは、人があまり通らないような山道が続いています。今まで 人の手で舗装された道ばかり歩いていたので、「そおこなくっちゃ!」 と独り言を言いながら、ポケットに入れていた軍手を手にはめました。  時には手足をフルに使い、奥社殿目指して登っていきます…そして、 着いた先には…小さな質素な社が…道標も破壊されていて、社殿に掲 げられた看板の字がかすれて読めなかったのですが、高度計や地図から 見るとここが奥社殿のようです。  後から来たおじさんと「…ここが奥社殿?」と言いながら、呆然と見 ていました。  …だいたい、奥社と言う場所にちゃんとした社殿があると期待しすぎ るのは、元々最初に奥社と言う物を見たのが金比羅様の奥社だったため に、その後、丹沢の大山山や筑波山などの奥社をいくつか見れば納得す る筈なのに、未だに”奥社”と言う物に期待するのは悪い癖だと思いま す。  奥社殿の横で暫く休憩してから、JR御岳駅に向かって降り始めます。  しかし、奥社殿から降りる途中で右足が腓返りを起こしました。  狭い道を、後から来る人に道を明け渡しながら、必死に腓返りに効く ツボを押したり、マッサージをしたりして居ました…きっと、奥社を馬 鹿にした報いだと思います…  なんとか御岳神社のそばの展望台まで戻り、足をマッサージした結果、 普通に歩けるまで回復したので、そのまま暫く展望台で休息しました。  見回すと、かなりの人出で、明らかにケーブルカーで登ってきたと思 われるような何も装備していない親子連れや、私のような簡単なハイキ ング装備の人、これから日の出山方面向かうと思われる装備の人、トレ ッキング装備の人…あんまり高尾山山頂と変わらない風景です。  さて帰ろうと、歩き出すと足は何事もなかったかのように進みます。  ケーブルカー山頂駅でケーブルカーに乗ろうかと暫く迷いましたが、 足は何ともなかったので、そのまま登ってきた登山道を下山します。  麓のケーブルカー駅を過ぎて、バス停まで来ましたが、まだ大丈夫で した。じゃあ、そのままJR御岳駅まで歩こうと言うことで、そのまま 歩いて行きました。  JR御岳駅は既に混雑しており、当然上りの電車は荷物を床に置く余 裕すらありませんでした。結局、立川駅まで立っていました。  家に帰って、持っていた500ミリリットルのペットボトル1本を完 全に飲みきっていませんでした。これは、今回の天候が曇りというのと 気温が涼しかったからでしょう… まぁ、前回がハイドロパックに浮かれて水を飲みすぎたのですが… −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  まあ、今回はこんなとこで…(^^;) 以上、藤次郎でした。