車のイグニッション・キーを捻った時から新しい旅立ちが始まります。 また、いつも通い慣れた道を少し外れて見ると意外な発見をしたりする ものです。 私は、年数回の長距離旅行の他に、日帰りのドライブや自分の足を使っ た散策も楽しんでいます。 近場でもちょっとした旅と洒落込むと結構楽しいものです。 そんな中で、またあれこれ起こった事を「藤次郎放蕩記」として書き綴 って行きたいと思います… −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 藤次郎放蕩記 第6話 「赤城山 VS 榛名山」  GWのある日、私は父を愛車に乗せて赤城山目指して出発しました。  その日はGW中の平日で、今日学校または仕事がある人は昨日の内に 帰ってきているし、休みの人は出先でのんびりしているだろうから、道 路はかなり空いていると考え出発しました。  案の定、環状7号および関越自動車道は空いていて、渋滞にあうこと なく、すんなり前橋ICを降りることができました。  前橋市街でも渋滞にあうことなく赤城山の登山道路に向かって愛車は 走って行きました。  前橋市街は晴れていましたが、赤城山頂はどんより雲がかかっていま した。  関越自動車道で群馬に入ると、赤城山は目の前に見えますが、この日 は雲がかかってぜんぜん見えず、前橋市街に入ってようやく見える程度 でした…  私の一族は昔から赤城山の麓に住んでいて、赤城山を信仰していまし た。  今でも赤城山の麓には、私の一族の本家があり、一族の多くが住んで います。  そう言った意味から、私は父を連れてきました。(と言うのは建前で、 実は道案内に連れてきました…(^^;)  赤城山の麓に道路を跨いだ大きな鳥居があります。これは、赤城山頂 の赤城神社の鳥居でありまして、同時にここから赤城登山道路(有料) の始まりを示しています。  私は、この鳥居の手前で右折し、一旦大胡に向かいました。  なぜ大胡に向かうかと言うと、大胡から赤城山に少し登ると、ここに も赤城神社があり、ここから(国定)忠次温泉,赤城温泉を経由して赤 城山頂の小沼にたどり着く旧道があるからです。  赤城山の麓の赤城神社で参拝し、これからの道中の無事を祈願しまし た。  神社の境内はそんなに大きくありませんでしたが、いかにも霊験あら たかな感じがしました。  境内の札所に面白い札を見つけました。  「航空母艦赤城関係者一同」  おそらく、戦争中の空母”赤城”の元乗組員や遺族がこの神社に奉納 したものでしょう…  私は地図上で、旧道で山頂にいける自信がありますが、父が旧道では 山頂に行けないと言い張るので、行ける所まで登ってみると宥めて、と りあえず、赤城温泉目指して出発しました。  赤城温泉までは2車線程の幅の道路がありましたが、赤城温泉を過ぎ ると急に道路が狭くなりました。  父は引き返せと言うが、途中数台の車とすれ違うので、「車が通るの なら大丈夫」と父の言葉を無視して登りつづけました。  登るに従い景色はどんどん暗くなって行き、標高1800メートル付 近で雷が鳴り始めました。  そして、小雨が降り始めました。  それでも、私は狭く急カーブの続く道を愛車で駆け上がりました。  車に付けた簡易気圧計が高度2000メートルを指す頃、道は下り坂 に転じ、見る見るうちに視界が開けてきました。  少し行くと、目の前に沼が見えてきました。  地図から判断すると、これは”小沼”の様です。  沼の脇を抜けると見晴らしがいい所に展望台がありました。  車を止めて展望台の看板を見ると、やはり”小沼”でした。  ”小沼”を出発してしばらく行くと、”赤城山ビジターセンター”が ありました。  この”赤城山ビジターセンター”は、”赤城山”の四季折々の自然を 紹介していて、赤城山に住む野生動物や植物の展示をしていました。  一息入れて出発します。”大沼”湖畔に沿って行くと、”大沼”の中 に突き出すように”赤城神社”があります。  ”赤城神社”の祭神は私は知りません。神社にある縁起を書いた看板 によると、赤城山自身と、皇族の何人からしいです…  また、神殿の幕に葵の紋があることから、徳川家とも関係があるよう です。  それから、神事の項を見ると、赤城山の山開きは、5月8日…すると、 私達は、山開きの前に山に入ったことになります。  神殿で参拝し終わって、土産物屋で買い物をしていると、さっきまで 小雨だったのが、本降りになってきました。  急いで車に戻り、車中に入ると、土砂降りになりました。  もう少しこの辺をうろうろしたかったのですか、仕方が無いので山を 降りる事にしました。  帰りは有料道路を使う事にしました、なぜなら、私の愛車は重いので、 さっき登って来た狭い急カーブが続く道を下る自身がなかったのです。  有料道路をすんなりと下り、先程の大鳥居を潜り、そのまま進んで一 旦前橋市街に戻ります。  本当は、次の目的地は榛名山なので、大鳥居を潜って渋川方面に抜け るのが近いのですが、前橋に美味しい味噌づけ屋があるので、戻る事に しました。(赤城山に登る前に行けばいいと思っている御仁も居られる でしょうが、登る前にはまだ店が開いていなかったのです)  前橋市街に戻る途中、道の両側に「手打ち蕎麦」と書かれている店を 何軒も見つけました。  「”信州(長野県)の蕎麦に、上州(群馬県)のうどん”とはよく聞 くが、赤城山麓で蕎麦が採れるとは聞いたことがないし、蕎麦が名物と も聞いたことがない」 と、父は首を捻っていました…  ”たむら屋”と言う味噌づけ屋で味噌づけを沢山買い込むと、榛名山 を目指して国道17号を渋川方面に走りだしました。  下界は晴れていて日差しがまぶしく、車の中でクーラーをかける程の 暑さでした。  伊香保温泉と言う看板を見つけ、左折します。  左折すると間もなく道が上り坂になりました。  見ると、榛名山の山頂は晴れていました…では、赤城山は…と言うと、 まだどんよりした雨雲を頂いていました。  伊香保温泉街を通過し、つづら折りの坂を登って行くと、車窓の外に は、水上を初めとする山々が、まだその頂に白い雪を乗せてまるで屏風 の様にそそり立っているのが見えました。  私も、しばし車を止めて眺めたいと思いましたが、道沿いにある展望 台は軒並み満車状態でした。  どこか開いている所は無いかと探している内に、とうとう榛名山を登 りきってしまいました。  水上の山々を見るのを一旦諦め、榛名湖に向かいます。  榛名湖畔に着くと、そこはまだ桜の花が満開でした。しかし、普段見 慣れている”ソメイヨシノ”ではなく、さりとて”山桜”でもない…  花の感じはほぼ”山桜”なのだが、色が赤っぽいのです。  しかし、奇麗な桜の咲く湖畔にたたずみ、しばし憩うのは気分がいい!  多少名残惜しいですが榛名湖畔を出発し、さっきの道を再び戻ります。  今度は、運よく開いている展望台を見つけ車を止め、目の前に広がる 山々に見入っていました…  展望台を出発し、家路に着きます。  伊香保温泉街から高崎方面に進路を替え、高崎に向かうその道で、今 度は道の両側に「手打ちうどん」と書かれている店を何軒も見つけまし た。  「赤城の蕎麦に、榛名のうどん…」 なんとなく、この両山は張り合っているように思えて、可笑しくなりま した。  信号待ちをしている間に、赤城山,榛名山をもう一度振り返ると、榛 名山は、奇麗に晴れているのに対し、赤城山はまだ雲をかぶっていまし た。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  まあ、今回はこんなとこで…(^^;) 以上、藤次郎でした。