見なれておきたい珍獣


あえて、いきなり写真を(笑)!

これが、彼岸の頃
見つけてくれ、といわんばかりのタイミングで
玄関に現れた珍獣――
セスジスズメの幼虫である。


他のコーナーでも何回か書いたとおり、
まったくの無毒・無害だ。

むしろ神経が細かい種のようで、
驚かせたり、急に触ったりすると
恐怖のために、食べた葉を吐いてしまうことがある。

しかし、奇抜なファッションセンスと
図体の大きさ(体長約90ミリ)、
尻にある、大きなツノ故にか、
ひどく恐れられることがあるようである。

さて、
貴志祐介さんの『天使の囀り』という小説で
下記のような一節がある。
(貴志さんは、「日本ホラー小説大賞」デビューの作家さんだが、
生物とは――という、哲学もどきを考えさせられる話が多い。)

――アイアイというサルがいる。
「♪アーイアイ アーイアイ おさるさんだよ♪」
という唱歌でも歌われるために、
愛くるしい動物だと誤解されがちである。

しかし、アイアイの現物が現れたら、
ほとんどの人が悲鳴を上げて逃げるであろう。
異様な感じのする巨大な目、猛禽のような鋭い指などが
不気味きわまりない外見を形成している。

このために、現地では『悪魔の猿』
と呼ばれて迫害を受け、急激に絶滅に向かった。
もしも、アイアイがコアラのような
ポピュラーな外見を持っていたら、
こんな憂き目に合うことは絶対なかっただろう――

セスジスズメも、奇妙な外見のために、
まったく不合理な避けられ方をしている節がある。
アイアイと似た運命をたどって、
20年後にレッドデータブックに載っていた、
なんていうことになるのが怖い。

異質に感じるのは「他に類を見ない」から、
というのが大きいと言われる。
つまり、慣れてしまえば、
異質感から生じる嫌悪は、克服できると言えよう。

分布の広いセスジスズメは、
都内でも気をつければけっこう見つかる。
見なれておくと、いざ本物に会ったときに
”いつか見た、華麗でかわいげのあるあの虫”、と映るかもしれない。

2005.10.16
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