両方の視線が合わない 斜視の話


  原稿提供:視能訓練士 小笹さん 2003年 6月
 斜視とは、両方の視線が合っていない状態とそれに伴う両眼視(お互いの眼から入った情報を統合してみること)の異常があるものを言います。
片方の眼が内に向いているものを内斜視、外に向いているものを外斜視、上下にずれているものを上斜視と呼び分けています。
 眼は4本の直筋と2本の斜筋の均等な緊張でまっすぐな位置にありますが、筋肉の異常や神経支配の異常などがあるとバランスがくずれ斜視の原因となります。(麻痺性斜視)
また、ある程度以上の遠視があると、未矯正の場合にはピントを合わせるのに伴い眼が内によるもの(調節性内斜視)や、片眼の視力不良により両眼視ができずに斜視になるもの(斜視弱視)などがあげられますが、今のところ原因不明による斜視が大半を占めております。
「遺伝でしょうか?」と心配される人が多いのですが、そうでもあり、そうでもなしと、言ったところでしょうか。
原因がハッキリしないものに関しては、「顔が左右対称の人がいないのと同じかな??」と説明しております。
 治療法としては眼の筋肉の位置を手術で移動させたり、短くして筋肉の力を調整しまっすぐにする方法や、遠視が原因であれば眼鏡の装用が治療となります。
しかしこれは、視線を合わせるための治療であり、両眼視異常の治療のほんのわずか、両眼の視線があっているものしかクリアできていませんので、これと平行して視能訓練を行います。
人は2つの眼を気づかずに1つとして使っています。左右別々に入ってくる情報をまず受けけ取り(同時視)次のその二つを重ね合わせ(融像)立体として見えること(立体視)を頭の中で行っています。
これが両眼視と呼ばれている中身で、立体視まで認知できるものを両眼視が良いといいます。
これも視力と同じで生直後から良好なものはなく完成には生後半年くらいまでかかると言われております。
 さて、斜視がある場合には、もともとこの両眼視のないものや、弱いもの、以前はあったが壊れてしまった状態であり、せっかく眼の位置が良くなったのに両方の眼の重ね合わせ(両眼視)が不良であるためにまたずれていってしまわないようにするため、両眼視ができるよう視能訓練はおこなわれます。
また、この訓練によって眼の位置が良くなる場合もありますので術前にも積極的に行われています。
 両眼視の良い眼がずれれば、物が二つに見えるはずですが人はそれを不快と感じ あの手この手で、片方の眼からの情報を消したり、二つにならないようずれた眼の位置で重ね合わせたりします。
訓練はこれを正常化させ、両眼視機能の増強や、獲得をめざします。
斜視の検査、訓練も自覚的応答によることが多く、検査や訓練を待たずに乳幼児期に手術をすることも少なからずありますが、眼位矯正も視能訓練の一つですので心配無用です。
 片方の眼しか使っていなくても立体感があるよと聞きますが、それは大きいものは近くにあり、小さいものは遠くにあるという経験による遠近感であると考えられます。
 昔は視脳訓練という字を当てていた意味がわかっていただけましたでしょうか。

これで、両方の視線が合わない 斜視の話のページを終わります。


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