報告:2009新潟ロービジョン研究会


安藤@新潟です。
 7月4日に行った新潟ロービジョン研究会は10年目を迎え、「心のケア」がメインテーマでした。
 「心のケア」、やろうと思って必ずできるものではないが,やろうと思わなければ,決してできません(参加者の感想から)。世の中全体、「想像する」「思い遣る」ということが欠如している現在、このテーマの持つ意義は大きいと思います。
 鳥取県・兵庫県・和歌山県・岐阜県・愛知県・静岡県・東京都・埼玉県・宮城県・福島県・山形県など新潟県内外から、参加者は150名を超え会場は熱気に溢れました。  多くの収穫と、出会いがありました。 ここに報告致します。

********************************** 報告 『新潟ロービジョン研究会2009』   1)講演要約
 テーマ「ロービジョンケアは心のケアから」
 日時:平成21年7月4日(土) 
 場所:済生会新潟第二病院 10階会議室 

【プログラム】
 14:00 開場 機器展示
 14:30〜展示品アピール
 14:45〜特別講演
 「ロービジョンケアにおける心療眼科の役割」
  座長 張替 涼子(新潟大学眼科)
  講師 気賀沢 一輝(杏林大学;心療眼科)
 「心と病気ー病は気から、とは本当だろうか?」
  座長 安藤 伸朗(済生会新潟第二病院眼科)
  講師 櫻井 浩治(新潟大学名誉教授;精神科)
 16:20〜休憩 機器展示
 17:00〜「新潟盲学校」
 学校紹介 田中宏幸(新潟盲学校教論)
 盲学校に入学して 竹熊有可(新潟盲学校)
 17:20〜シンポジウム「ロービジョンケアは心のケアから」
  司会:加藤 聡(東京大学眼科准教授)
     安藤 伸朗(済生会新潟第二病院眼科)
 シンポジスト
  西脇 友紀(もり眼科医院;視能訓練士)
  高林 雅子(順天堂大学;心理カウンセラー)
  小島 紀代子(NPO法人オアシス・視覚障害リハビリ外来;相談室相談員)
  竹熊 有可(新潟盲学校)
  内山 博貴(福祉介護士)
  稲垣 吉彦(アットイーズ;東京)
 コメンテーター
  櫻井 浩治(新潟大学名誉教授;精神科)
  気賀沢 一輝(杏林大学;心療眼科)
 18:30 終了
 <機器展示>
  東海光学、タイムズコーポレーション、アットイーズ(東京)、新潟眼鏡院

【特別講演】
 「ロービジョンケアにおける心療眼科の役割」
  気賀沢 一輝 (杏林大眼科) 
 2年前に井上眼科病院の若倉先生と「心療眼科研究会」を立ち上げました。ロージョン患者の心理的ケアはその主要なテーマです。
 ロービジョンケアに専門的なメンタルケアを導入するには二つの方法があります。一つは精神医学の専門家との連携であり、もう一つは眼科医療従事者がメンタルケアの基本的技術を身につけることです。後者のためまず始めることは、精神医学の豊富な財産の中から眼科に応用できるものを探し出すことです。
 今回は、カウンセリングのパイオニアである「ロジャーズの来談者中心療法」、「ベックの認知療法」、「森田正馬の森田療法」のエッセンスを紹介しました。 
 「失明告知」は癌の告知と似ており、精神腫瘍学の成果の中から応用可能な部分を紹介しました。  ロービジョンケアは治療的な専門医療が限界に達してから導入されることが多いので、「EBMを補完するNBM(物語りに基づく医療)」の役割についても解説しました。
 略歴
  1977年 慶應義塾大学医学部卒業
  1979年 慶應義塾大学医学部眼科助手
  1988年 東海大学医学部眼科講師
  1996年 東海大学医学部眼科助教授
  2000年 同退職
  現在    杏林大医学部眼科非常勤講師
         横浜相原病院(精神科病院)非常勤医師
心療眼科研究会世話人代表

 医療従事者はメンタルケア、精神医学の基本を知らなすぎるために、救える患者も救っていないのではないか、というフレーズが印象に残りました。「心療眼科」という新しいジャンルを紹介してもらいました。

【特別講演】
 「心と病気ー病は気から、とは本当だろうか?」
  櫻井 浩治 (新潟大学名誉教授;精神科)
 「心身医学」とは、心身相関の医学であり、患者中心の医学です。つまり、心身の障害を持った人を、その障害の部分だけを診るのではなく、障害を持ったその人の精神的苦悩は勿論、その家族の苦悩をも診る、という全人医療を、「障害者を診る基本的態度」として主張する医学です。
 したがって、障害を持つ人の心理、医療機関を渡り歩く、など特別な行動をとる患者の心理、心理的な影響で起こる身体の障害(心身症)や、医療者によって引き起こされる身体の障害(医原性疾患)、などが具体的な研究内容になります。
 例えば、心理的影響で起こる身体障害としては、検査上、何ら異常所見がないにもかかわらず、瞼が垂れる症状や、声が出なくなる症状、あるいは歩行が困難になったり、めまいが出たり、痛みがとれないなどの症状があり、抜毛症や摂食障害のように行動の異常からの身体障害もあります。
 更には心理的なストレスの結果として、円形脱毛症や胃潰瘍、高血圧など、検査上でも異常のある様々な身体障害が生じます。いわゆる自律神経失調症といわれる状態は、上に挙げたものとこれの中間の位置にあります。こうした症状はまた、実際の身体障害に重なるようにして現れる場合もあるのです。
 このような自分の意思とは無関係に生じる、心理的原因による身体症状や障害、及びその周辺を、私の臨床経験をもとにお話しました。
 自己紹介
  昭和11年1月生(旧姓 塚田)
  昭和39年、新潟大学医学部卒。慶応義塾大学医学部精神神経学教室入局、精神科専攻。
   新潟大学定年退職後、新潟医療福祉大学に勤務。現在河渡病院デイケア病棟に務めている。
  平成10年第39回日本心身医学会総会会長。
  医学博士。
 一般的著書に「源氏物語の心の世界」(近代文芸社)「乞食(こつじき)の歌―慈愛と行動の人良寛」(考古堂)「句集独楽」(オリオン印刷)などがある。

 心身医学(ひとは心身一如の存在)の立場から、心身の障害を持った人を、その障害の部分だけを診るのではなく、障害を持ったその人の精神的苦悩は勿論、その家族の苦悩をも診る、という「障害者を診る基本的態度」について、ユーモアたっぷりにお話して頂きました。

【盲学校紹介】
 「新潟盲学校の紹介」 田中 宏幸(新潟盲学校教諭)
  新潟盲学校は視覚に障がいのある方々、教育関係者等への相談支援センター校として、県内全域を対象に相談会・継続的支援・研修会・理解啓発事業を展開しています。今後とも医療・福祉・教育関係機関等と連携しながら、一層の相談支援事業の充実を図り、目や見え方に心配のある方々へのお力になれればと考えています。お気軽にご相談ください。

 「盲学校に入学して」 竹熊 有可(新潟盲学校専攻科理療科1年)
  高校一年の時に網膜色素変性症と診断され、病気や視覚障害について何も情報を持っていなかったため、進路について悩みました。盲学校入学も考えましたが、私が視覚障害者になることをどうしても受け入れられない両親の気持ちを考え、つとめて晴眼者のようにふるまいました。
  結婚後夫が精神病を発病、私も看病疲れで鬱病になり、親の援助や生活保護を受けて過ごしました。 発病から10年ほどで夫も私も体調が上向き、夫は仕事を始めましたが、体調維持と対人関係がうまくいかず長続きしません。もう私も40歳を過ぎたのだから、親に遠慮するのをやめて、夫の代わりに自分が働こうと決意し、新潟盲学校に入学しました。
  入学してみて、盲学校の体制が大変充実していることに驚きました。これだけの社会資源を、多くの視覚障害者が利用していないという事実を、本当にもったいないことだと思います。私も盲学校進学を決断するまでに長い時間を要しましたが、決断さえできれば、こんなにも自立への道が整えられているのですから、多くの人に活用してもらいたいものだと思います。

【シンポジウム】
 小島 紀代子(視覚障害リハビリテーション外来・NPO法人オアシス)
  「視覚障害リハビリ外来」では、悩みや困ることの問いかけと傾聴から「こころのケア」がはじまり、必要な情報、道具、生活の知恵や工夫を一緒に考え、同じように苦しんだ仲間が集うオアシスの各種教室・講習会につなげます。明るく生きている仲間との出会い、できなくなったことができた喜びは、大きなこころのケアとなり、こころも体も考え方も変化します。
  しかし、なかなか立ち直れない人、家に閉じこもっている人など、もっと多くの「人や機関、資源」がつながるシステムが、「希望」につながると思います。
 略歴
  新潟市に生まれる。
  1962年 新潟県立新潟中央高校卒
  1983年 新潟市社会事業協会信楽園病院総務課勤務 現在嘱託職員
  1994年 信楽園病院視覚障害リハビリ外来 嘱託員
  1995年 新潟県中途視覚障害者のリハビリテーションを推進する会事務局員
  2001年 新潟いのちの電話 認定相談員 現在休部
  2007年 NPO法人障害者自立支援センターオアシス事務局員
        電話相談・こころの相談室相談員 

 内山 博貴(福祉介護士)
  左目に自打球を当て、視力が完全に戻らないと言われた時、「普通の生活は送れないのでは?」「就職はできないのでは?」と暗い未来しか想像できない状態でした。手術が終わると同室の方が、私は頼んでいないのに看護師さんを二人くらい集め、私の進路について病室でワイワイ話したり、看護師さんは、「目の勉強してみる?高校じゃ習わないでしょ?」と本を貸してくれたりしました。そんな何気ない入院生活でも私にはとても和やかで、凄く居心地のいいものでした。落ち込んでいた私を前向きにしてくれる貴重な時間で、目の怪我という現実を受け入れるきっかけなりました。
 略歴 
  2001年 夏の全国高校野球新潟県予選準々決勝で、左眼受傷(外傷性黄斑円孔)         済生会新潟第二病院に入院、手術を受ける。
  2004年 福祉専門学校を卒業後、地元の福祉施設に勤める。

 高林 雅子(順天堂大学;心理カウンセラー)
  視力や視野を失うということは、単に重要な身体機能の喪失というだけではなく、大きな心理的変化、すなわち不安や怒りなどの心理的葛藤や、将来への不安、経済的不安、家族や周囲の人々との役割変化・関係性の緊張などを生じさせる。
  そのため不便な視機能を補うためだけのロービジョンケアでは患者の支援は不十分といえる。支援の視点を、身体の部分的な機能だけでなく、その人全体として捉え、その人が生きていく上で、どのような問題があるのか、どのような可能性があるのか、何が必要であるのか、患者・家族とともに考えるプロセスが重要であると考える。
 略歴 
  1982年  東京女子大学文理学部卒業
  2000年  東洋英和女学院大学大学院人間科学研究科卒業
  2004年  順天堂大学大学院医学研究科博士課程修了 医学博士(順天堂大学)
  2004年  順天堂大学眼科学教室非常勤講師、
         立教大学兼任講師(リハビリテーション心理学) 現在に至る
  2009年より水戸医療センター眼科ロービジョン外来、相談スタッフも兼任
  主な著書「中途視覚障害者のストレスと心理臨床」(共著)など

 稲垣 吉彦(有限会社アットイーズ取締役社長) 
  一人のロービジョン患者としての立場でお話をさせて頂きました。私自身は現在いわゆる視覚障害者ですが、視覚障害者である以前に、一人の人間であり、社会人であり続けたいと考えています。
  ロービジョン患者であっても視覚障害者であっても、同じ一人の人間であるということを、ケアする人たちと当事者双方で共有し、共感できることが、ロービジョンケアにおける心のケアの第一歩ではないかと思います。
略歴 
  1964年 千葉県出身
  1988年 明治大学政治経済学部経済学科卒業後、株式会社京葉銀行入行。
  1996年 「原田氏病」という「ぶどう膜炎」で視覚障害になったのをきっかけに同行を退職し、筑波技術短期大学情報処理学科へ入学。
   卒業後、株式会社ラビットで業務全般の管理、企業・団体向けの営業を担当。
   杏林大学病院、東京大学医学部付属病院、国立病院東京医療センターのロービジョン外来開設時に、パソコン導入コンサルティングを行う。
  2005年 株式会社ラビット退職。
  2006年 有限会社アットイーズ設立。
    同年8月「見えなくなってはじめに読む本」を出版。
  現在、視覚障害者向け情報補償機器の販売・サポートを行う会社を経営する傍ら、個人的には医療期間や福祉施設からの紹介を受け、ボランティアでロービジョン患者に対するカウンセリングを行っている。

 西脇 友紀(もり眼科医院;視能訓練士)
  視能訓練士の職責は「正確な視機能評価」と「少しでも見やすい視体験の提示」です。リハビリテーションは、新しい技術・動作を生活に取込む過程でもあり、患者さんの心の状態が影響します。
しかし私たち視能訓練士の多くは、患者さんの心の問題に対応するための「技術」を持ち合わせていないのが現状です。そのことを認識したうえで、患者さんの「物語」を全力で聴き、受け止め、寄り添う姿勢が求められるのではないかと思います。
 略歴
  1998年3月 国立小児病院附属視能訓練学院卒業
    同年4月 杏林大学医学部付属病院眼科
  1999年1月 杏林アイセンター ロービジョンルーム
  2002年4月 杏林大学医学研究生(〜07年3月)  
  2005年10月 もり眼科医院
  2007年5月 NPO法人障害者自立支援センターオアシス視覚障害者のためのリハビリテーション外来

 竹熊 有可(新潟盲学校)
  25歳の時国立身体障害者リハビリテーションセンター病院で生活訓練を受けました。面談と訓練が並行して行われるため、訓練が単なる授業に終わらず、問題を解決する方法として、速やかに生活に取り入れていくことができました。
  眼科の患者会を作らないかと声をかけていただき、ロービジョン患者の会を設立、その後日本網膜色素変性症協会の設立へとつながっていきました。『仲間作り』は、重要な心のケアの一つでした。すぐ諦めていた自分の思いを、具体的に行動に移すことができるようになったのです。
 略歴
  1967年 新潟県加茂市生まれ
  1990年 お茶の水女子大学文教育学部哲学科卒業
  同年11月 小野塚印刷株式会社入社
  1992年 網膜色素変性症により障害者手帳2種5級取得
  1994年 日本網膜色素変性症協会(JRPS)設立、会長就任
    同年 結婚
  1995年 小野塚印刷を退社
  1996年 長女出産
  1999年 鬱病発症
  2000年 日本網膜色素変性症協会 会長を退任
    同年 株式会社加賀田組入社
  2001年 加賀田組を退社
  2002年 障害者手帳1種1級
  2009年 新潟盲学校専攻科理療科に入学


【参加者の感想】
会場に入ったとたん、あまりの人の多さにびっくりしてしまいました。すごい熱気でした。 講演や、シンポジウムの内容もよかったし、いろんな立場の方々からお話をお聞きできたのが、とても勉強になりました。 視覚障害があっても、立派に頑張っている人が沢山いられることや、視覚障害のあるひとの為に、親身になってくれる人が沢山いられるということが、嬉しく思いました。 シンポジストの、西脇さんのお話の中で、患者さんの話を、まずよく聞くことを心がけていらっしゃると話されていたと思います。 私は、子供が弱視で、子供が小さい頃は本当にわからないことだらけで、不安でいっぱいでした。 でも、それをなかなか人に打ち明けられずかなりマイナス思考になっていたと思います。 お医者さんや視能訓練士、同じ視覚障害を持つ方々の言葉にずいぶん励まされました。 どんな状況でも、それを聞いてくれる人がいる、一緒に頑張ろうと言ってくれる人がいるということが、どれだけ励みになるかを身をもって感じました。 今は、私がそうしてもらったように、誰かの役にたてたらいいなと思っています。 有意義な研究会をありがとうございました。 新潟県長岡市 家族
この前の盲学校でのセミナーから参加させていただきまして、大学時代からいかに患者側でない医療提供側の都合で診療していたことを反省しているところです。 自院で可能な診療と手術は患者さんと病院に迷惑がかからないようにやっているつもりですが、気賀沢先生のお話聞くと時間と人的余裕もない状況で実際どうしたらいいのかという思いをもってしまいました。 大学等で回復困難とされた患者さんの身障者の申請などは努めてやっているともりですが、ロービジョン外来をきちんとやる余裕はないのが現状です。 ルーペで対処できるようなような患者さんだけでも自院で対応できればと思っていますが、気賀沢先生の講演で出てきたソクラテス的対話法等の手法がよくわかりませんでした。 最近、数字とビデオがないとお話が頭に入らなくなってきており、心療眼科外来とロービジョン外来の診察風景と解説をビデオで見れたらと思いました。 新潟県 眼科医
楽しい会でした。 「こころのケア」についてはプライマリーロービジョンケアを考える上で避けて通れないと感じ先週の心療眼科研究会と今回の会に参加したというわけです。 とくに母の臨終と父の容態変化を通じ、医学の限界と家族の心理を思い知らされました。 まだとくにコメントできる程学べておりません。今後精進したいと思っております。 今後ともご指導のほどよろしくお願い申しあげます。 埼玉県 眼科医
毎度のことながら、事前の打ち合わせ、研究会、その後の食事等を通して、大変勉強になりました。 特に今回はロービジョンカウンセリングで、わたしの能力を超えていると思えるケースを複数かかえていたことから、バーンアウト寸前という状態で参加させていただいたので、正直なところ演者のみなさまの熱い気持ちが痛く感じる部分もありました。 多くの素晴らしい出会いがあり、わたしは本当に人に恵まれていると実感しております。 さて今回の研究会の感想ですが、最後に安藤先生がまとめておられたとおり、「心のケア」はあえて声高に唱えることではなく、ロービジョンケアに携わる全ての人たちが、その根底に常に意識すべき基本要素であるような気がします。 その土台の上に、それぞれの立場の専門性が積み上げられ、うまく連携し会えれば、充実したロービジョンケアが実現するのではないかと思います。 千葉県 男性
大変有意義な一日になりした。講師の先生方のお話も勉強になりました。 シンポジウムは少しではなく、とても勉強になりました。 私の仕事でも、なぜ利用者の方はその行動をとるのか?表面に現れていない原因があるのではないか? それを探し出す方法は?そこに通じるものがありました。 繰り返しますが、とても勉強になりました。 新潟県村上市 男性 介護福祉士
貴重な経験をさせて戴き有難うございました。 一年前に戻ることが出来なくなって来ている自分との葛藤の日々を悲しみ、精神的に落ち込んでいます。 今回の貴病院の研究会のテーマに魅力を感じて、どうしても参加したくてリスクを感じながら参加させていただきました。 でも参加させていただき、得るものが多くて、本当に、こちらこそ感謝しています。 帰りですが、暗くなってくるしとても不安でしたが、新潟大学工学部学生の渡辺君と彼のお友達が車で、ホテルまで送ってくれました。本当に人の親切を身にしみた旅でした。 兵庫県 女性
1)気賀沢一輝先生の講演は私にとって、日ごろの相談の中で常に思っていたことがそのままだったのでとても共感できました。 私は大学でも歴史学科でしたので、心理学を学んだのは子どもが中学生の時にたまたま見つけた心理学講座を一年間受講しただけ。 あとは関係の本を録音してもらったりして読んでいるだけ。 ピア・カウンセリングも途中までしか受講していませんが、経験の中で認知療法(私の中では現実置き換えとか、気づきといった云い方だったのですが)と森田療法に近い方法を理想と考えていたので、肯定されたような気がして嬉しく思いました。
2)櫻井先生はとてもユーモアのある話し方で、中身もわかりやすく、ぜひまた機会をいただきたいなと思います。
3)その他のかたがたの講演の中で特に竹熊ゆかさんのお話が私にはとても心に残りました。  彼女とは私が静岡支部を立ち上げたいと準備していた頃からのつきあいでした。 世界大会を目指して頑張ろうという矢先に彼女がドクターストップで会長を辞任すると聞いたとき、またご主人の病の噂も聞いて、胸を痛めていました。でも、今回、彼女の口からはっきりとその頃の事情を知らされ、彼女が立ち直ったことを本当にうれしく思いました。 実は彼女の両親と私の両親は似ています。 私の両親もいまだに私の障害を受け入れることができず、私は親類の葬式にも出ていません。 またずっと親の言うことを聞く「良い子」で育ってきた私にとって、両親の呪縛を解くことが一番の難関でもありました。彼女は一足先に呪縛を解いたようです。私も呪縛を自ら解くようにしなくちゃいけないと思いました。 静岡県 女性
私にとっては、93年5月に日経新聞に小野塚ゆかさん(現:竹熊有加さん)がJRPSを発足させてくださったのが、RP患者の集う場を作ってくださったことです。 これは、私ども患者にとって、勇気と希望を与えてくださいました。 そんな中で、小野塚さんも苦悩の中で、葛藤されていたことを改めて、多くの聴衆の前で発表され、目頭が熱い思いをしました。 私たち患者・障害者にとって、場・サロン等が心のよりどころとなり、心のリハビリへとつながるような気がします。 和歌山県 男性
今回のテーマは私にとって仕事に対する姿勢はこれで良いのか?それを確認する意味もありました。 自分の職業感、資質、パーソナリティ、人生観も今の自分を見つめ直すことそれができる機会と参加させていただきました。 日頃勉強不足ですがそれなりに胸をなでおろしたり、うなずけることもあり少しこれでいいのだという自信にもなりましした。なかなか自らを客観的に置くことができにくい年ごろになりました。 岐阜の地で連携しているとろから実行、行動に移していこうと強く感じてまいりました。 今後ともご指導のほどよろしくお願い申し上げます。 @全体的感想  講師の先生、シンポジストの方々!!ご口演は参加者に感銘を与えてくださいました。 それぞれの立場からご自分の中で昇華をされておられる活動の実践をうかがい知ることができ満足でした。 「ありがとうございました」 岐阜市 視能訓練士
参加させていただいた感想を一言で表せば、「素晴らしい研究会」と感じました。 疾患を抱える患者と、医療行為を行う医者。 それだけでは解決できないいろいろな問題があり、その間で努力されている医療従事者、教育者、家族、サポーターと言った人たちが一堂に会し、多方面ららの意見や取り組み、意見が交わされ、情報を得ることもできる場が創られているということに。 あえて要望と問われれば、「これからも、研究会の輪に、一人でも多くの医療関係者の方が係わってくださり、多くの地域にネットワークができれば。」と思わされました。 そして、櫻井先生のお言葉にあったような、「患者の会と医療関係者は、協力関係(敵対ではなく)にあるべき。」といった社会の実現に繋がることを期待したいと思いました。 初めての参加ということと、今、私自身(息子)が直面している問題とは多少テーマに相違もあるため、抽象的な感想等になり、お恥ずかしい限りですが、ご報告させていただきます。 今後とも、よろしくお願いいたします。 新潟市 家族
とてもナチュラルな感じで様々な立場の人が集まり、それでいておおらかな雰囲気が漂っているところが、素敵な会だなと強い印象を受けました。 東京 眼科医
まず、人の心身を扱う医療であたりまえのはずの心のケアが見過ごされていることに対して、ひとりひとりが何が必要かを考え、模索し行動していることを実感し、素晴らしいと思いました。 各自が行動することは、物事を変えてゆく土壌、基礎体力を作るうえで必要不可欠なことだと思います。 しかし、多くの人に関係する物事をかえてゆくためには広い視野と作戦と実行力だけではなく、より多くの力を結集する求心力が必要です。 そのためには、この研究会のように多くの人がそれぞれの意見を出しあい、よく耳を傾け、率直に話し合う場を作り上げ、継続することが大切です。 ところで、反対意見についても述べさせていただこうと思います。 私は「30分ゆっくり話を聴く時間が取れないほど眼科医は忙しくない」という意見に賛成ではありません。「よい医者なら」誰にでもできるはず、と患者さんに期待していただくことは、現場の医師とのすれ違いや例えば今の担当医への不信感を生んでしまうのではないかと心配です。 とりあえず、この一点だけ感想をお送りします。繰り返し、素晴らしい会を、ありがとうございました。 東京 眼科医
「新潟ロービジョン研究会2009」では、たいへんありがとうございました。 当相談支援センターも相談に来られた方々への心のケアができるように、信頼できるサポート機関となれるように、研修、活動の充実を図っていかなければいけないとお話を伺いながら、切に感じました。 新潟盲学校 教諭
久し振りに出席させて戴き、頭がリフレッシュ出来る勉強会でした。 心療眼科的眼科診療を常々心がけている積もりですが、つい患者さんが多いと余り話が聴けなくて、 ぞんざいな対応になってしまうのを反省しました。 ロービジョンには興味はあっても、患者さんからのご希望が中々聞かれません。 患者さんが多くて、先生に話すのが遠慮される、と言われたことがあります。 看護婦さんや受付の人に気を付けて貰って、私にフィードバック出来るような体制を作ろうと思います。 福島県 眼科医
偉い先生方が多いところでの演者でしたのでとても緊張し、難しいテーマは、力のない私にはたいへんでした。長年尽力されている専門の先生のご講演は、勉強させられました。有難うございました。 桜井先生とお席が近かったので、良寛さまのお話や、いのちの電話のお話などさせていただき、桜井先生の隠れフアンとしては、本当に嬉しいでした。 新潟市 女性
心のケアはやろうと思って必ずできるものではないが,やろうと思わなければ,決してできない,と思います。なので,関係者全員が,心のケアの大切さを,まずは言葉だけでも,知っておく必要があると思いました。勝手ながら,学生たちの動機付けに研究会を活用させて頂きたいと思っています。 今後とも,どうぞよろしくお願いします。 新潟大学工学部 教員
日頃、ロービジョンケアについては何をどのようにすればよいか考えているつもりでも、どうしても考えが自分とその周辺部だけの閉鎖的で偏りがちになってしまうため、医療・福祉関係者だけでな患者とその家族など広く意見を聞くことができる研究会は、私にとって学びの場である教室そのものす。 兵庫県 女性
新潟ロービジョン研究会2009では大変お世話になり、ありがとうございました。 今年も共感したり、新たな疑問が生まれたり、有意義な時間を過ごさせていただきました。 今回、最も共感したのは竹熊さんの演題で、彼女の障害をめぐって両親がケンカをする姿に、両親の深い悲しみを感じて、彼女が「ふつう」を演じたというくだりです。私自身も竹熊さんと全く同じ経験をした一人なので、子供のころの感情がよみがえって少し辛くなりました。 私はロービジョンとなった人が抱える悲しみや、みじめさ、恥ずかしさ、時に自分に対する信頼さえ失うといったことは、医学的に異常とされる眼にあるわけではなく、ロージジョン者と家族、医療福祉関係者、学校、職場など「社会との関係性」の中にあると体験的に知っています。 リハビリテーションの定義は「残存能力を開発し、それを社会に適応させる」ということになっています。しかし、心理的葛藤も含めた障害の原因が「社会との関係性」にあるとすれば、この考え方はあまりに一方的過ぎると感じます。 私はリハビリテーションを否定はしませんが、ロービジョンケアにたずさわる先生方には、古い定義に固執することなく、ロービジョンケアを発展させて欲しいと思います。 新潟県長岡市 男性
大変お世話になりました。 ご期待にそえる話ができたかわかりませんが、ご容赦ください。 研究会でのいろいろな話は、心の問題について多面的に考える契機になったと思います。 皆さんこの会に、それぞれに深い思いを抱いて参加しているようですね。 大変勉強になりました。ありがとうございました。 新潟市 視能訓練士
こうして知らない人たちと少しずつ知り合いになり、その人達からまた元気をもらう、という形で、 日々の暮らしの充実感を得ることができる幸せを、今噛みしめております。 そして、私もまた別の人へその恩返しをできればいいなと考えております。 お誘い頂き、感謝!感謝!です。 茨城県 眼科医
今回の研究会の参加は三回目になりますが、ますますの研究会のご盛況、嬉しく思いました。 気賀沢先生、櫻井先生のご講演は、私にとっても癒しになりました。 勤務している病院の性質上、期限付きの書類の提出やら予算のことやら、日常業務以外の仕事が、 「上から降ってくる」なかで疲弊しておりましたが、研究会でのお話やその後のおしゃべりで、 すっかり元気になって戻って参りました! 埼玉県 視能訓練士
さまざまな立場から、さまざまな率直な意見の言える、この研究会のすばらしさと継続してきた力を 改めて感じました。本当にありがとうございました。 心のケアということで、私の専門領域である心理支援について、話をさせていただきました。これまで約20年ちかく関わってきて、近頃ますます、私自身、心理支援とは?心のケアとは?と感じています。 特別なことではなく、ちょっとしたお互いの心配りや気遣いなどのささやかなやり取りの中で、 「あったかい気持ち」や「ほっこりした気持ち」になれること。 それは、心理支援、心のケアという以前の、共に生きる人間としての当たり前のことができていれば、特別に必要ないのでは、と思っています。ただ、それが見過ごされていることが、現実なのでしょうか。 ひとりひとりが、「繋げる」という気持ちでいれば、専門職による「すみわけ」はなくなるのではないかと思います。支援ということを点ではなく、面で考えたいと思うこのごろです。 思春期の子どもたちへの支援や家族の支援には、心理支援は特に重要なことと思っています。 感想というか、雑感になってしまいましたが、本当にありがとうございました。 茨城県 女性
私自身、30年前に、22歳で網膜色素変性症を眼科医により告知された時の衝撃と、 眼科医の告知の仕方の無遠慮で、心のこもっていなかったことが、いつも心に残っています。 眼科領域におけるすべてのケアは、眼科医の告知により始まると思っていますので、眼科医である気賀沢先生が「失明告知は癌の告知と似ている」と話して頂いたことはなんだかとってもうれしく思いました。 「何げない一言で、心持ちが変わる」と、どの先生かがおっしゃっておられましたが、心のケアは、難しい知識や技術より、ただ、その人のことを、真剣に思い、言葉を聞いてあげることがポイントだと改めて感じました。 その意味で、オアシスの小島さんの話は、 当事者としてとっても興味深く聞かせていただきました。やはり、同じ境遇を持った患者が、心のケアに携わることは大切で、「ピア・カウンセリング」なども重要かなと思っています。 静岡県 男性
先日は、拙い話を発表する機会を与えていただき、ありがとうございました。 JRPSを中途半端な形で辞めてしまったことがずっと心にかかっていましたが、あのような機会を与えられ、自分の歩みを振り返ることができて、一つの区切りをつけることができたことを本当に喜んでいます。ありがとうございました。 今回の「心のケア」は、とても関心の高いテーマだったと思います。 千葉大名誉教授の安達恵美子先生が、「告知」は重要なテーマだと言っておられ、学会でも徐々に告知の問題を取り上げる流れがあるとお聞きしていました。 ロービジョン患者に対して、あれほど多くの方が関心を持って、熱意を持ってロービジョンの問題に関わってくださっていることを、心強く感じました。 また、新しい方々との出会い、懐かしい方々とのうれしい再会も多くあり、これも感謝なことでした。 発表では「治療を目指す」と言いましたが、担任から盲学校教員になることを勧められ、その方向で考えているところです。今後ともよろしくお願いします。感謝をこめて 新潟市 女性
今まで心療内科という診療科の存在を知っておりましたが、心療眼科という名前は初耳でした。 おそらく、心因性の疾患を診察するのだろうと予想していましたが、講演を拝聴し、心因性疾患を断するだけではなく、そのような症状に至るまでの過程においてどのような問題が生じたのか、また患者自身がその原因とどのように向き合えるかといった患者の内面までをもフォローする診療科目であると感じました。 患者の立場に立てば、器質的に問題がないのに、なぜこのような症状が生じるのだろうかと不安が大きくなることもうなずけます。「なぜ?」「どうして?」と次第に不安感や焦燥感が強くなり、他の部位も具合が悪くなることにもつながるでしょう。 そのようなとき、カウンセリングを受けることによって、気持ちが楽になり、原因を解消したり、動を改善したりすることにつながり、徐々に苦痛から脱することでしょう。 カウンセリングには様々なタイプがあります。 しかし、その根本は、カウンセリングを受ける人が自分自身の内的なひずみを自覚し、自分自身で歩を歩き出すことができるようになるための援助だと考えています。 医療現場においても変化が生まれ始めてきたように感じました。 新潟盲学校 教諭
集まった人たちの想いが熱く、私は吹き飛ばされような思いでいました。 やはり実際に経験している人たちの言葉は、一つ一つ重みがあります。勉強にもなりました。 今、私は統合失調症の人たちのリハビリテーションに関わっていて、その一人ひとりへの関わり方に改めて考えさえられていますすし、血液透析が日本に導入された初期の頃から、信楽園の透析医療を通していろいろ経験してきましたが、まだまだ患者さんや家族が背負い、解決を待つさまざまな医療上の問題が、身の回りにあることを、改めて痛感させられました。 全人医療について言えば、先生がおっしゃるように医療従事者の当然の姿勢で、声高に叫ばなくなってしかるべきことなのですが、不幸にして今は、一層、どこかで叫んでいなければならない時代なのだと思います。 心身医療では、精神科医は芝居の「黒子」のように下でしっかりと手助けしていく役割でしかないし、それができるような実力をつけるべき、というのが、私の考えです。 新潟市 精神科医
本当にたくさんの方からお声をかけていただき、励ましのお言葉や、アドバイスをいただけたことを、今後、私どもの心の支えにさせて頂きたいと思います。 誠に勝手な感想かとは思いますが、参加させて頂いて感じたことを書かせて頂きたいと思います。
特別講演 (気賀沢先生)  事前に抄録を読ませて頂いて衝撃を受けました。「心療眼科」という科があることに驚きました。  眼科にかかっているけど、心のケアをしてもらってもいいんだなぁって、安心したのを覚えています。  問題解決装置の存在と大切さ、上手に傾聴することの大切さを知りいました。  ついつい娘に先回りして、指示したりしていたことを反省しました。
特別講演 (櫻井先生)  とにかく楽しかったです。笑いは最大の治療法なのかもしれませんね。  ストレスでメタボになっているとパンツのゴムが伸びちゃいますね。  時々、いい深呼吸をしておなかをすっきりさせるように心がけます。  私自身、元気でいられるように上手にメタボ脱出作戦をします。カウンセリングありがとうございました。
盲学校紹介   小西校長先生にもご挨拶頂きまして恐縮いたしました。  とても熱心に内側と外側に情報発信されているんですね。  ○○盲学校も先生方とアイディアを出し合って盛り上げていけたらいいなと感じました。  竹熊さんのお話は、保護者としてかなりの衝撃がありました。  なかなか言葉に出すことのできない思いを聞かせて頂いて、娘や息子の本当の心の内を感じることができたように思います。娘や息子は、親や大人達に気を遣っていると思います。  娘は、「皆さんのご迷惑にならないように頑張ります。」と、とある授業で感想を書いたことがあります。  いつも、自分は何もできないとか、自分のせいで迷惑をかけている、申し訳ないと思っているようです。親がいっぱいいっぱいでは、子供は何も言い出せませんよね。  竹熊さんの力強いお話を聞くことができて、親としていつか我が子もこんなに立派な姿になって  くれるのかもしれないと希望を持つことができました。といいましても、竹熊さんの方が  私より先輩です。女性として、母として立派な姿に私自身目標にしたいと思いました。  お話ありがとうございました。
シンポジスト   4分間という短い時間の中で多くのことをお話し頂きましてありがとうございました。  米子のメンバーに「ロービジョンケア」と「視能訓練士さん」について聞いてみました。  どちらも「それは何ですか?聞いたことないです。」という返事でした。 鳥取県 女性
今回の研究会では出来るだけなにか発言しようと決めておりましたが、話をした内容はまるでまとまっておらず、もっと心理の院生らしい発言ができなかったものかと反省しております。 ただ皆さんの前で「頑張る!」と宣言させて頂いたことは今後の自分の成長に繋がるものと思っております。 茨城県 男性
ロービジョンの学会、研究会でいつも思うのですが、ケアする側のハードルが高い気がします。 ロービジョンで困っている方、ロービジョンケアに一生懸命取り組んでいる方のお話はためになりますが、いざ、ケアを行おうと考えると、「私にできるのだろうか」「ロービジョンの方のケアを最後までできるのだろうか」「何から始めたらいいのだろうか」と悩み、一歩が踏み出せない方もたくさんいると思います。 ロービジョンでケアを受けていない方がたくさんいる現況ではマンパワーが必要ではと思います。気軽に誰でも参加できるケアはないものかと思います。 新潟市 眼科医
今回の研究会&懇親会を振り返って考えたことを書いてみます。
◎気賀沢先生の特別講演  ・ロジャーズのカウンセリングの技法をはじめとする精神科・心理臨床の技法や療法のお話は、対人援助の理論的枠組みを振り返るとてもよい機会になりました。 ・EBMかNBMか……?ではなく、EBMとNBMを組み合わせていくことが重要で、NBMの質的研究が眼科・ロービジョン領域でも求められているのだろうと思いました。  Cf) イギリスのオックスフォード大学のDIPEx(Database of Individual Patient Experience)の日本版としていくつかの癌疾患の患者の語りの収集が日本でも近年始められていますが、ロービジョンに関係する目の疾患で似たような取り組みをある程度体系的・組織的におこなってみるというのも必要なのかな?と最近考えているところです(ただ、考えているだけなのですが……)。
◎桜井先生の特別講演  ・最後のスライド「医療者と患者の態度」は、日頃の援助業務を省みるという点で勉強になりました。 ・援助者と患者との関係もまた相互作用なわけで、では患者に情報を正しく受け止めてもらうにはどんな工夫があるといいか、不安をうまく伝えられる患者になるためにはどんなことをしたらいいか?などなど、考えさせられることが多いなあと思いました。
◎新潟盲学校の紹介  ・「専攻科に入学して卒業し、国家試験も合格して資格を取ったけれど就職先がない、収入が得られるような仕事がない」という相談をしばしば受けます。  個々の相談事例には個々の事情や背景があるのですが、一方で、「ヘルスキーパー 雇用者の皆様へ」という資料を作っている新潟盲学校の取り組みは、県内各地で展開している相談会のお話とあわせて参考になりました。
◎シンポジウム  ・医療領域での援助も含めた多角的な援助を考えていく必要がある時、患者経験を持っているからこそできること、視能訓練士だからこそできること・得意なこと、医師だからこそできることをお互いに出し合い、(たとえ初歩的と受け取られそうなことでも)わからないことを忌憚なく教えてもらえるあいだがらをどう作っていくか、どう広げていくかが大事なんだろうなあということを改めて考えながら皆さんのお話を聞かせていただきました。 ・とくに3人の患者体験者のお話は、ロービジョンの患者といっても視機能や疾患や、年齢、生活状況などが個々に違うわけで、人くくりでロービジョンの人は……と語れること/語れないことがあるということを示しつつ、いっぽうでロービジョンとつき合いながら自分なりに生活をして(数十年の)人生をやっていくという点では人類共通することなんだろうということも表現しているようで印象的でした。  (つくづく、「これって異文化理解の枠組みと重なるなあ」と思いながら聞いておりました。)
◎全体を通して  ・肢体不自由のリハビリテーション科にソーシャルワーカー(社会福祉士)がいたり、総合病院の医療福祉相談室にソーシャルワーカーがいたりするのと同じように、眼科領域に比較的強いソーシャルワーカーがいて、いろいろな意味でつなぎ役を果たすというのが、これからのロービジョンケアを考える時の1つの姿なのかなあと思いました(手前味噌のような発想で申し訳ないのですが……)。 ・ロービジョンケアをいつから始めるか……? そのタイミングがずれてしまうことで、困惑や葛藤や挫折感を長く引きずってしまう患者もいるのかな、と改めて考えました。 以上、これから考えるネタをいろいろといただけた研修会で、みなさんが毎年続けて参加される意味が実感できました。私も都合がつけばぜひまた参加させていただきたいと思います。 宮城県 女性
新潟ロービジョン研究会ではいくつものよい話を聞けました。以下、思いつくままに。  気賀沢先生 心療眼科の意義が理解できました。まずは、気質的疾患の除外を確実にできるだけ眼科医としての力が必要と感じました。カウンセリングでの非指示の重要性と自己再編成いう言葉に驚きました。認知療法で、認知のゆがみを感じた場合、うつ病を疑うことの重要性に気づきました。  櫻井先生 「気」により身体症状がおこりうること、またその起こり方についてクリアに話されていました。  田中さん 盲学校に対する偏見、誤解を解くような明快な紹介でした。  竹熊さん ご自身の成長に伴う気持ちの変遷を赤裸々に語られたことに感動を覚えました。  小島さん NPO法人で行われていることの心のケアとして、直接的なケアと間接的なケアがあることがはじめてわかりました。  内山さん 実際に視力を低下した人の気持ちがどのようなのかを明るく話してくれました。  高林さん 心理的な変化を具体的に話していただきました。  稲垣さん この方の話は何度も聞いていたのですが、改めて元気の沸く話でした。  西脇さん 心のケアに対するORTの役割が少しわかってきたがしました。多くのORTの人に聞いていただきたいです。  竹熊さん 仲間つくりの重要性がわかりました。これは身体障害者でなくても、人間誰にでも言えることと改めて思いました。 東京 眼科医
 今回の研究会では眼科診療に精神医学的アプローチを加え、ロービジョンのこころの問題に取り組んでおられる杏林大学の気賀沢一輝先生の特別講演をはじめ、視能訓練士、心理学者、民間の支援組織、それぞれの立場から、ロービジョンのこころのケアに対する考察がありました。それぞれに興味深い内容ではありましたが、いづれの立場もロービジョン者に対するアプローチであるという点では共通していたと思います。ロービジョンケアもリハビリテーション医療の一部であるとするなら「残存能力を開発し、それを社会に適応させる」という医学的リハビリテーションの定義からすると、これは当たり前なのかも知れません。でも、本当にそれだけで「こころのケア」は成立するのでしょうか?僕にはそんな疑問が残る研究会になりました。  ロービジョンケアを実践する上で、こころの問題は避けて通れない要素の一つであると思います。過去には弱視者問題研究会など当事者団体が、「見えない、見えにくいことを理解してもらうためには」と言葉を変えて自身のこころの問題に対する取り組みをしてきました。ここで注目しなければいけないのは、彼らは自身を変えるだけでは心理的葛藤から逃れられないことを体験的に知っていたということです。だからこそ外の世界に対する働きかけを重視したと言えるでしょう。 研究会後半のシンポジウムで、2009年春から新潟盲学校専攻理療科の学生となった竹熊有可さんが、網膜色素変性症を発病してから現在までを両親との関係を中心に、その時々の心象風景を語られました。彼女の発病をめぐって「オマエの血筋が悪い!」と父親が母親をののしるところから始まる夫婦ゲンカ。盲学校という言葉さえ毛嫌いし、「お前をマッサージ師にするくらいなら私は死ぬ」とまで言った母親の期待を裏切らないために、つとめて晴眼者を演じていたという彼女の姿は僕自身の子供の頃とも重なって、聞いていてツラくなりました。  彼女や僕を苦しめた原因は何だったのでしょう?医学的に異常とされた眼だったのでしょうか?僕の答えはノーです。理由は先にあげた弱視者問題研究会の人たちが考えたと同様に「社会との関係性」から苦悩は生まれると考えるからです。みなさんはどう考えますか?感じますか? 西脇ユキさんは視能訓練士の立場から、ロービジョン者のQOLは単純に測れない、ロービジョンケアにおいては単純化されたゴールを医療が決めるのではなく、ロービジョン者自身がゴールを決めるのが望ましいと発言されました。これには僕も共感しました。 「新潟ロービジョン研究会」も今年で10回を数えるそうですが、今年も満員の会場からは、参加されているみなさんの熱意と意欲を感じました。参加されたみなさん、御苦労さまでした。今回もぐうたらな僕が勉強するためのモチベーションをいただきました。ありがとうございました。 新潟県長岡市 男性
今年も有意義な会をありがとうございました。 私には気賀沢先生のお話が非常にためになり、ご紹介いただいた文献は早速注文しました。 ある眼科医が「開業医にはロービジョン患者が来ない」とおっしゃったのがとても印象的でした。 眼科医にはいまだに「ほとんど見えない状態で、打ち萎れた患者」しかロービジョンケアの対象として認識されていないのであろうということを再度認識した次第です。 新潟市 眼科医
特に今回の新潟ロービジョン研究会機器展示については来場者の方も多く、 お陰様で皆様に弊社の新しい機器を知っていただく良い機会になりました。 今回のテーマでもある「ロービジョンケアは心のケアから」ということに関しましては、 患者さんや視覚障害者の方のお気持ちを全力で受け止め、 真剣に話し合うという意見など、皆様の意識の高さを感じました。 古来より心と体は一体であると言われている通り、あらためて心のケアの重要性を認識し、 私自身初心に帰ることができました。 新潟ロービジョン研究会に参加できたことを心よりお礼申し上げます 兵庫県 機器展示
特別講演「ロービジョンケアにおける心療眼科の役割」を聞き、心療眼科の概要を知ることができました。 眼科の懐がより広く、深くなり、今まで以上に安心して治療を受けられる方が増えるのではないかと思います。 私自身は医療関係者でありませんが、視覚障害のある方に接する機会は多いので、今回得られた知識を生かしていきたいと思います。 ありがとうございました。 東京 男性
この度の新潟ロービジョン研究会2009は立ち見の方が出るほど大勢の方々が集い盛況で、 10年という節目でもありメモリアルにふさわしい研究会だったなと思いました。 機器展示につきまして、どのブースも賑わい講演前に展示品の購入だけで来た方もおりました。 研究会プログラム最初の展示品アピールが効果的だったようです。 休憩時間も少し長めでしたので皆様は各ブースをくまなく見れたようです。 この度の研究会で気になった点ですが、数十名の方が立ち見で講演をお聞きになりました。 立っている方で気分が悪くなり講演途中でお帰りになった方がおりました。 会場の収容人数も限界に達しているのでしょうか? ただ、休憩終了後の後半の時間帯は会場からお帰りになった方もおり、立ち見も殆ど無くそれなりにバランスが取れたようでもありました。 次回の新潟ロービジョン研究会は参加人数多数の場合、立ち見の案内が必要と思います。 その後も展示品の購入者やお問い合わせも参りまして仕事も増え、御礼申し上げます。 新潟市 機器展示
テーマはロービジョンは心のケアからというテーマで、強く残ったものは2つあります。 一つ目は精神科という位置付けについてです。先生もお話された内容に、ある疾患について専門のと精神科が協力した結果、病状が良くなった例があるというものがありました。もちろんいくつかのが協力することは多々あるのだと思いますが、それは身体の機能的にのみ注意が向く場合が多いかといます。 心についてケアすることは非常に難しいことなのだなと思いました。 二つ目は看護師の参入についてです。今回も会場に何人かいらっしゃっていたのかもしれませんが、今回の課題に看護師の存在は必要不可欠かと思いました。特に入院などをする場合は、看護師と関わることが多いと考えるからです。もちろん、基本的には看護師は全ての患者に対して対等に接しなければならないため、どこまで介入するのかと言う点などで問題が生じるかもしれません。例えば、ある患者さんの話をある看護師が時間を設けて聞いたとします。この話を所定の時間外にされた場合どう対処するのか、というものです。話を聞く以上、一定の個人情報、それに付随する感情情報を知ることは避けられません。しかしながら、看護師の治療構造・治療枠と言うものをしっかり構築し、看護全体が共通認識の上で患者に対してけじめを付けられれば、可能かと考えました。 私は工学部である為、実際の現場については素人のわけですが、今回考えたことを書かせて頂きました。 見当違いのことが含まれていましたら、どうかお見過ごし下さい。 様々な方面で心の問題が話されるようになってきたように思われますが、専門外の私としては難しく思われることも多くあります。今回のような機会は、私のような者も気軽に学べるいい機会だと思っております。研究会に参加できてよかったです。ありがとうございました。 新潟大学工学部 学生
このような学びの場に参加することの少ない私にとりましては、 得ることの多い時を過ごす事ができ、心から感謝しております。ガイドヘルパーさんと互いに尊厳をもって、「つれて行っていただきました。」ではなく、「一緒に行ってきました。」といえる充実の時でした。 とくに心療眼科の先生方や視能訓練士さん、心理関係者、それぞれ専門職のかたがたが、突然の事故や病気で視覚に障害をいただき、立ち上がれずに沈み込んでいる人たちと、真剣に向き合ってくださっていることを知り、心から感謝です。 「視覚障害者のリハビリテーションとは、できない事をできるようにすることである」と話された件についてですが、私は障害の種別や程度に関わらず「尊厳」であると思っております。 ある時から障害者としての新たな生活を始めるわけですが、視力を失うばかりでなく、仕事、職場をさらねばならなくなったり、ともすれば家族までをも失なってしまうのです。 目が不自由になることで、一人で歩く事に極度の不安をおぼえ、自らが歩きたい時に自由に目的地まで外出できなくなることと、書字読字が不自由になるという二つの大きなハンディが生じます。 それに加えて家事動作がおっくうになってきます。 白杖歩行練習や盲導犬と一緒に歩くこと、それに点字やパソコンをはじめとした電子機器 操作練習などで、 見えなくなったことで新たに獲得したこれらの事柄が、職場復帰、 社会復帰へとステップアップしていくのだと思います。 しかし、職場復帰ができたから「喪失感」が軽減するのでしょうか。 どん底と、その淵との間を行きつもどりつしています。 自分らしさ[私が私であること」 を確認できているならば、何もできなくてもいいじゃありませんか。 一人で外出ができるとか、パソコンのスペシャリストなどということは「尊厳」を確認するための、一つの方法、手段なのではないでしょうか? 視覚障害者のリハビリテーションとは、できないことをできるようにすることであるというのではなく、視覚障害者の歩行訓練とは、家事動作訓練とはと、言い換えていただくならば納得できます。 書きもらしてはならないことがありました。当事者の語られたメッセージには流された涙の重たさと、彼らをとりまく人々の「思いやり」という愛の重たさを感じずにはいられませんでした。 今回の企画と講演された方々に、心から拍手をおくります。 新潟市 女性

4)質疑応答  研究会の後に参加者から頂いた興味深い質問と、その回答を紹介致します。
  回答者:気賀沢 一輝(杏林大学;心療眼科)
> 1人の患者にかける診察時間(カウンセリングに用いる時間)はどれくらいですか?
 返答:カウンセリング、心療眼科的アプローチは、一人の患者さんに対し、最初のうちは30分から1時間、次第に減少していく傾向があります。
> 1日に何人の患者を診察するのですか?
 返答:私の個人的な診察スタイルを申し上げますと、一般診療(ある開業クリニックで)は一日に60人から70人診察します。基本的には、午前3時間、午後3時間です。眼科の患者さんのすべてに長時間のカウンセリング、心療眼科的アプローチを実行しているわけではありませんし、その必要もないように思います。ただ、必要な患者さんが新患でいらした場合は、予約制の患者さんにはお許しをいただいて、30分前後時間をかけます。再診は、特別な時間(通常の診察時間帯の前後とか)を設定して、ゆっくり対応します。
 大学病院(杏林アイセンター)の神経眼科外来(心療眼科も含む)の場合は、そのような患者さんが集まっていますので、4時間で8人、すなわち1時間に2人というペースです。杏林アイセンターでは2人の医師が同時に並列で診療しています。ただ、患者さんが多い場合は、後ろにずれ込んだり、一人の時間が短くなったりします。
> カウンセリングを拒む患者、あるいは精神科医師に紹介されることを拒む患者に対してどのような対処をしていますか?
 返答:眼科におけるカウンセリングは、これからカウンセリングを行います、と言う具合に始まるのではなく、一般診療の中で自然に移行していくものですから、拒否されることはありません。 精神科受診を拒む人に対しては、中等症以上のうつ病が疑われる人には、しっかりと説得して背中を押します。
 うつ病ではなく、神経症レベルの人は、カウンセリング、認知療法、森田療法のテクニックを使いながら、疾病利得に注意を払いながら眼科で本人がその気になるまで(時期が熟するまで)キープしていきます。 この方法が、心療眼科的アプローチです。  もう少し詳しくは、文献をお読みいただけましたら幸いです(「視覚と目の異常感への心療眼科的アプローチ」気賀沢一輝 神経眼科 25:11−17、2008)
> 「ソクラテス的対話法」について、解説して下さい。
 返答: 「ソクラテス式質問法」とは、治療者が患者に異議を唱えたり、治療者の視点を取り入れるように患者を説得するのではなく、質問を重ねる中で、患者が自ら気付いたり発見したりするように仕向ける質問法です。 心の扉は外からよりは、内側からの方が開きやすいという発想によるものです。  もう少し詳しいことは文献をお読みいただけましたら幸いです(「視覚と目の異常感への心療眼科的アプローチ」気賀沢一輝 神経眼科 25:11−17、2008)
> ロービジョンケアに関心はありますが、何から始めたらいいのか判りません。
 返答:一歩を踏み出すとしたら、傾聴だと思います。 そこから何かが始まるのだと思います。 その患者さんの現実を見つめることによって、この人には何が必要か、聴いている側に考えが発動してくるのだと思います。  ただし、傾聴というのは、はっきり言ってリスクもあります。 人間の裏面と言うのは、恐ろしいものがあり、一般社会には隠されていることも多いと思います。 傾聴しているうちに、それがどんどん出てきて、とても手に負えなくなってしまいます。 聴きすぎると、後戻りできなくなり、聴いている方が燃え尽きてしまうこともあります。 ただ、この段階を経験しないと、心のケアはできないかもしれません。 一度行き過ぎて初めて、距離感と言うものがつかめるのだと思います。 行き過ぎて、一人で帰ってこられれば、多分一人前なのでしょう。
 ただ、最初のうちは、聴いたことを上級者に聴いてもらうことによって、聴いたものの重みを分担してもらって、軽くなることができます。 そして、気を取り直して、また現場に戻る、という繰り返しなのだと思います。  また、最初に陥りがちな錯覚ですが、聴いたことを全部自分で何とかしてあげなくてはと思い過ぎてしまうことです。 あくまで、人生の責任は本人にあるわけで、聴いた人ではありません。 聴いただけで、それなりのケアを果たしたと考えるべきです。 杏林アイセンターのロービジョンスタッフも、恐ろしい話を聴いて辛くなった時は私のところに話にきます。 そして、決して一人でかかえないように、チームで支えていこう、と確認し合っています。 私も苦しくなってしまった時は、心療内科医、精神科医に聴いてもらいます。
 残念ながら、気軽な心のケアはないかもしれません。 しかし、チームで接すれば、負担はかなり軽く、比較的気軽に踏み出すことができると思います。 一つの組織でチームを結成することは難しいかもしれませんが、こうした研究会を通したネットワークを利用することも可能だと思います。


これで2009新潟ロービジョン研究会の報告のページを終わります。


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