そのままで


共に生きて行こうなんて
 そんな事考えなくていい 
ほんとうの理解をしようと
 そこまで思わなくていい

だからいつもそのままで
 そばに来てほほえんで 
だからいつもそのままで
 俺と話しをして欲しい

共に生きるという言葉の意味は
 誰にだって分からない 
自分の事さえ知らないのだから
 理解なんて出来ないよ 

だからいつもそのままで
 何気なくひとときを過ごして 
だからいつもそのままで
 俺と一緒に笑って


力強く生きていると
 俺を誰もがそう言うけれど
悲しいくらいだらしないんだ
 お前と同じ迷っているんだ

だからいつもそのままで
 酒を飲んで歌って
だからいつもそのままで
 一緒に朝を迎えよう 

共に生きて行こうなんて
 そんな事考えなくていい 
何も構える事はない
 何も分からないままでいい

だからいつもそのままで
 そばに来てほほえんで 
だからいつもそのままで
 俺と話しをして欲しい



日曜の午後


  遅く起きたのに眠たくて
  ボーとしている日曜の昼下がり
  何故か頭が重たくて
  どうやら寝過ぎたせいらしい 

  何も考える気持ちもなく
  別に考える必要もなく
  折角の日曜なのに
  無駄にただ送りやがって
  そんな言葉が心の中
  もう一人の俺がつぶやいて

  だけど殆ど聞いていない
  あくび一つ大きくして
  ボーとしながら天井を見る
  そして何も考えていない

  これからの予定は
  先ず洗濯をして
  それから買い物に行って
  後は別に何もない

  そんなものさ俺の日曜
  一生懸命生きている振りをして
  実は本当にだらしない
  それが本当の姿かも

  これがいいのか悪いのか
  今の俺には分からない
  分からないまま生きている
  日曜の午後を生きている
  生きているだけの日曜の午後
  そして何も残らない 

  もうすぐ夕食の時間だ
  今日の当番 家の人
  夕食終わったら寝るだけだ

  別に何もしないのに
  何となく疲れを感じる
  寝過ぎただけでこうなってしまう
  そんな俺の日曜の午後
  そして何も残らない


待ち合い室


  急いで家を出たのだけれど
   あともう少しで乗り遅れて 
  次の電車まで時間がある
   外は雨でとても寒い 
  
  仲間の家へ行くのだけれど
   早く行って沢山話したい
  だけど電車は暫く来ない
   焦ってみたって暫く来ない

  仕方がないから待合室で
   時間をつぶす事にしよう 
  外は冷たい雨だから
   暫く電車は来ないから

  何気なく待合室にいると
    猫が一匹入って来た 
  腹を空かせているらしく
   いろんな人の側に行く

  だけど誰もが迷惑顔で
   向こうに行けてと追っ払い 
  哀れな泣き声を響かせて
   ただ歩き回るだけ

  そんな猫の姿を見て
   自分の姿を思い浮かべる 
  いつも人に迷惑がられて
   あっちへ行けと言われてしまい
  悲しい思い感じていた
   切なく心を痛めていた 
  この猫も同じ思いなのか
   切なく動き回っているのか

  だけど俺には何も出来ない
   ただ見つめているしかない 
  声をかける事もなく
   抱いてやる事もなく 

  もうすぐ電車が着くという
   駅員の声が流れ出し
  急いで待合室を出る
   だいぶ待った感じがする
  もうすぐ仲間の家へ行ける
   外は冷たい雨だけど
  心は次第に弾んで行く
   暖かい思いになる 
  猫の事など忘れている
   もう心の中にはない

  そんな勝手な俺が今
   待合室を出て行く
  もうすぐ電車が駅に着く
   冷たい雨が降っている



だからこそ


  戦っていると思っていた
   夢を掴むそのために 
  誰にも甘える事なく自分の力で
   築いていると思っていた
  自立していると思っていた
   一歩ずつ確かな足取りで
  歩いていると信じていた
   大人になっていると思っていた
  だけどただの錯覚だった

  与えられているじゃないか
   誰かに助けて貰っているじゃないか
   優しさの中にいるじゃないか
  その中に肩まで漬かってしまい
   飛び出す事も忘れたまま
  何もしようとしないでいる
   それでいいと思っている

  方舟に乗りたくないと言いながら
   いつしか乗っている俺がいる 
  そして優しく守られながら
   夢に向かう俺がいる

  戦っている人がいる
   どんなに身体を痛めながらも 
  心に傷を作りながらも
   夢のために戦う人がいる

  金がなくて何も食べられない
   そんな日々を過ごしながら
  そんな事をして馬鹿じゃないかと
   罵りの言葉を受けても
  もっと楽な生き方をすればいいのに
   ひたすら歯を食い縛り 

  山を自分の足だけで
   登って行く人がいる 
  頂上にある夢を目指し
   信じて歩く人がいる

  俺にはない心の強さを
   笑顔の中に忍ばせて

  だからこそ歩き始めよう
   優しさの中の俺だけど
  このままでは終わりたくはない
   何も戦わずにして 

  何処までやれるか分からない
   戦わないまま終わるかも知れない 
  だけどだからこそ今ここから
   もう一度歩き始めよう
  甘える事なく力の限り
   夢を信じて生きて行こう

  甘えて生きる俺だから
   だからこそ今ここから



彼   奴


  仕事で街を歩いていると
   中学生の彼奴がやって来て
  「お兄さん、それ売って下さい」と
   からかいながらついて来る 

  俺はひたすら無視をする
   からかっている事分かるから 
  ガキの相手はしていられない
   ただひたすらに無視をする

  それでもしつこくついて来る
   自転車ジグザグさせながら
  自分より弱い者を
   とにかくからかってやろうとする

  何とかしたい俺だけど
   電動これ以上スピード出ない
  ただひたすらに無視をする
   今はそれしか方法がない
  早く諦めて消えてくれる事を
   祈るように待っている

  それでもしつこくついて来る
   これでもかこれでもかという感じ 
  そしてあげくの果てに頭を叩く
   相手にされなかった腹いせに

  思わず怒るこの俺に
   舌を出して逃げて行く
  本当に腹の立つ彼奴だ
   考えただけでもムシャクシャする
  ぶっ飛ぱしたい気持ちだけれど
   それが出来ない自分が悔しい

  だけど何だかさみしそう
   彼奴の顔がそう見えた
  いつも誰かにからかわれ
   辛い思いをしているから 
  誰かに腹いせしたいのだろう
   自分より弱い者に
  そうして傷ついたこの心を
   少しでも慰めるつもりなのだろう

  何故かそんなふうに思えた
   彼奴の顔がそう映った 
  そう思うと憎めない
   腹が立つけれど責められない 
  何処となくさみしいそうな横顔が
   いつまでも瞼から離れない

  それでもやはり腹が立つ
   多分何処かでまた逢うだろう 
  今度は人を呼ぶからな
   覚悟しておけこの野郎 
  やはり頭に来る彼奴の顔
   まだムシャクシャするこの心


おとがわまさずみさんの自己紹介


64年10月生まれの天秤座。
出産の時の後遺症による重度の脳性マヒ。
趣味は文筆活動(そこまでは行かないけれど)、
野球とサッカー観戦。
そして競馬。

 90年の夏から親元を離れ、
多くの仲間の協力を得ての一人生活。
そして電動車椅子の後ろに鉄板の台を取り付け、
乾物などが沢山入った箱を置いて町中を行商して歩く。
どちらかと言えば失敗をする事が多く、
何回も落ち込んで・・・・。
だからまだ自立とは言えなくて、
自立の意味も分からずに。
足りないないものが沢山あって、
大事なところが抜けていて。
もっとしっかりしなければと思いながらも、
肝心な時に躓いて。

 だけど心に夢を持ちながら自分なりの歩き方で、
頑張っている事は胸を張って言えるので。
そしてたとえ少しでも本当に自立と言える生活に近づこうと
思いながら、毎日を送っていて。
だから愚かな自分の姿もしっかりと抱き締めて、
今のペースで歩いて行く。
小さな後悔は繰り返しても、大きな後悔はしないように。

 そんな私ですが、いつでも遊びに来て下さい。
そして色々な話しをしましょう。
よろしくお願いします。

名前
乙川正純(おとがわまさずみ)
住所
〒953−0041
新潟県西蒲原郡巻町大字巻甲1455
電話
0256−73−3444
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