平成20年11月(霜月)の短歌
小春日の匂い残れる干し物を正座りてたたむ ささやかな幸
(こはるびの においのこれる ほしものを すわりてたたむ ささやかなさち)
紙風船息を吹きかけ掌の上に乗せれば幼き見ゆる眼恋し
(かみふうせん いきをふきかけ てのうえに のせればおさなき みゆるめこいし)
秋日和葉を落としたる街路樹の枝剪り詰める音の明けき
(あきびより はをおとしたる がいろじゅの えだきりつめる おとのさやけき)
公園の風のよどみにかさこそと落ち葉のささやき 今日は立冬
(こうえんの かぜのよどみに かさこそと おちばのささやき きょうはりっとう)
落ち葉掃く箒の音の軽やかに小春日和の路地裏通り
(おちばはく ほうきのおとのかろやかに こはるびよりの ろじうらどおり)
盲導犬と吾の吐く息白からん冷気身に沁む朝の遊歩道
(もうどうけんと われのはくいき しろからん れいきみにしむ あさのゆうほどう)
冬野菜詰めたるリュックを背負わせくるる露天の人の若き大き手
(ふゆやさい つめたるリュック しょわせくるる ろてんのひとの わかきおおきて)
良き音に引かれ求めし韓国の土産の風鈴厨に鳴れり
(よきおとに ひかれもとめし かんこくの みやげのふうりん くりやになれり)
咲き盛る大きシクラメン求めても心の隅の憂こと晴れず
(さきさかる おおきシクラメン もとめても こころのすみの うきことはれず)
沈黙の闇を破りて救急車通り過ぎたり 深深と真夜
(ちんもくの やみをやぶりて きゅうきゅうしゃ とおりすぎたり しんしんとまよ)
シェル ありがとう
見えなくなった私に あなたは再び歩ける喜びを教えてくれました
一緒にいっぱい歩いたね そして、一緒にいっぱい迷子になったね
ゴミ捨て、おつかい、散歩、旅行・・・
見えなくなってあきらめていたことが あなたと一緒に取り戻せたものね
平成20年10月26日 あなたは16歳3ヶ月で天国に召されました
私の心にできた大きな空洞を ただ静かにみつめています
だって、あなたはあまりにもかわいかった
そして、出会いと愛することのすばらしさを いっぱいいっぱい教えてくれたもの
ありがとう シェル! さようなら シェル!
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