弱視について

原稿提供:視能訓練士 小笹さん 2003年 4月
 年も新しくなり、就学時検診で視力不良と判定され、精査目的で来院されるお子様たちがそろそろ増えてくる時期となりました。
 私たちの仕事(視能訓練士は)『訓練士』と名前がつきますので、「近視を訓練でなおしてくれるのですか?」とよく聞かれますが、メガネをかければ正常視力(1.0)の出る屈折異常、近視、遠視、乱視は訓練の対象とはなりませんので、ご了承ください。
でも、あらためて近視で困っている人の多さと、訓練によりortho(正す、視能訓練士の語源)できるものが一般に知られていないことに気づかされます。
今回は訓練によりなおるものの一つ、弱視の話です。
 まず、小児の眼の特性としての視覚の発達を知っておかねばなりません。
子供は生直後でも形態学的(形)にはほぼ完成していますが、機能的(働き)には物を見るといった視的な学習を積み重ねることによって完成します。(1ヶ月で視力0.03)
特に視力に関係する部位(黄斑部)は4ヶ月ごろまでに完成しますので、生後2〜3ヶ月頃より物を見ようとし始めます。(視力0.05〜0.1)
その後の乳幼児の視力の推移は6ヶ月で(0.1〜0.2)12ヶ月で(0.2〜0.3)2歳で(0.4〜0.5)
この時期に眼から脳へ見えているという信号伝達が完成し、3歳で正常視力の(1.0)に達しますが、6歳までに発達が続き、6歳でほぼ大人と同じ視機能を持つようになります。
このように発達過程にある小児の視覚は未熟性が強く、可塑性(変わりやすい)が大きいため、2歳くらいまでに何らかの阻害因子が働くと視力は容易に停止し弱視(メガネをかけても見えない)が発生します。
教科書では矯正視力が(0.04以上0.3未満)を弱視と定義しております。
 訓練効果のある弱視は、「医学的弱視」と呼ばれ、何らかの原因により視覚の発達が抑えられたもので、器質的変化(疾患)は認められません。
また何らかの疾患(先天白内障や緑内障等)により視力不良のものは「教育・社会弱視」と呼ばれ、訓練効果はあまり期待できませんので、場合によっては、弱視教育や盲教育が必要となってきます。
医学的弱視の原因の代表的なものに屈折異常と斜視があげられます。
強度近視でなければ、遠くはぼやけて見えますが、近くにはピントが合いますので視力不良例は少ないのですが、遠視や乱視があると、遠くも近くもピントが合いませんので見るという学習が阻害されます。(屈折性弱視、不同視弱視)
斜視があると、いつも斜視になっている眼が使われず発達しません。(斜視弱視)
また片眼の眼帯、眼瞼下垂によっても弱視は容易に発生します。(視性刺激遮断弱視)
 弱視訓練はまず、屈折異常を矯正し網膜上に鮮明なピントを合わせることです。
その後視力良好眼を遮閉し、弱視眼を積極的に使わせ、発達を促します。
 弱視の視標となる視力検査は、自覚的検査が多く、幼児に見えたものを答えさせることは難しく、信頼性に欠けるため診断がつけにくいものです。
また、片眼性の視力不良児は不自由を訴えませんし、親もそのようなそぶりを見ることは無いので、見過ごされやすいものです。
そこで、正常視力に達する3歳期の3歳児検診は、視機能が正常に発達しているかのスクリーニングとし、有意義なことと思えます。
 最後に、正常視力は(1.0)とされておりますのでどうやっても(1.0)に達しない視力も弱視といえるのではないでしょうか?

これで、弱視についてのページを終わります。


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