眼が悪いって?
「視力障害と視野障害どちらが大変?」


  原稿提供:視能訓練士 小笹さん 2003年 4月
 今回は巷でよく聞かれる「私って眼が悪いのよ」の話です。
(ふ〜ん、どこが悪いのかな?)と耳をそばだてていると90%位 は視力に関することのようです。
矯正視力(以下視力と略す)がおおよそ(0.5)以下に低下すると、視覚に不自由を感じるようです。
昔の新聞の文字の大きさは約7ポイントで(0.4)の視力に相当します。
視野が正常であれば「読み」に関する力は(0.5)以下で不自由を感じ始めますが、(0.1)以上あれば動作にはほとんど不便を感じませんし、(0.05)位あれば2〜3m以内のものは判断が可能です。
もっともっと視力の悪い(0.01)の方でも道路の白線は認識できます。
そして文字の大きさを問わない「書き」に関してはマジック等の太字のものを使えば、(0.02)位の視力でも認識可能です。
(視力はある1点のみの働きをあらわし、視野の正常範囲は1点を見たままで鼻側60度、上方60度、耳側100度、下方70度の範囲であらわされます。)
では、なぜ見づらく歩きにくそうにしている方がいらっしゃるのでしょうか?
自分の日常生活を思い出してください。視力を必要とする読み書きの時間は思ったよりも少なく、視野を必要とする行動の時間は生活の大半を占めていることに気づくのではないでしょうか?
「行動」に関する視野は各方向10度以上、または中心暗点(まっすぐ前を見たときに見えない部分)が10度以内であれば歩行時に危険物の回避は可能とされていますが、10度より狭くなると視力が(1.0)あったとしても使うことが困難であり、さらに5度以内になるといくら視力が(1.0)あったとしても眼を使うことは極めて困難なようです。
ちなみに5度の視野とは直径5cm、長さ60cm筒を眼にあてて見える範囲です。
まとめると、視力が良くても視野の狭い方は、読み書きはできますが歩行行動は困難です。
また、視力が不良で視野の保たれている方は、読み書きには不自由しますが歩行行動には困難をきたしません。
全盲と違い「実は見えてるんじゃない?」とロービジョン(低視力者)の方は誤解されることが多いようです。
エピソードを一つ、ひげじぃ(彼のあだな、了解済み)こと当院ロービジョン外来の患者ボランティアの彼は、視力良好(1.0)、視野両眼10度の強度の狭窄があります。
行動するときは介助歩行もしくは白杖を用いての単独歩行でオロオロと歩きますが、
バスに乗り席に座るや否や文庫本を取り出し読むといったことをしております。
周りの顔には???がいっぱい浮かんでいます。
見えないといっても視力障害と視野障害では見え方を比較できないこと、見えなくてもできることと、できないことがあるということがわかって頂けたかと思います。

これで、視力障害と視野障害どちらが大変?のページを終わります。


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