○第2部:座談会 後半

D 受入現地の実態について補足すべきことはあるか?

(中島)
・現地における衛生教育の必要性について、一つの例をお話したい。「トイレは外でするもの」と考えられている地域に置いては、有料のトイレを使う人はいない。「トイレを外でするのが恥ずかしい」と考える地域では住民の収入が同程度であっても2.5円/人程度なら払うという事例があった。下水道の整備と同時に教育によって住民の環境や衛生に関する知識を向上させることが必要となる。
(鎌田)
・インドでは、死体の焼却処理に薪を使っている。衛生的に処理できるから電気炉を使えと言ってもヒンズー教の問題もあり受け入れられない。技術を押しつけるだけではダメだと思う。
(上田)
・シニアボランティアの【専門家派遣と違う】新しい役割について述べると、《要請に基づいて政府間で行う援助》には問題点が不明確な実態のないものも含まれていたが、シニアボランティアは現地の立場に立って実態を調査し、問題点を掘下げ整理し、要請内容の解決への道筋を示すと云ったソフト面で活躍し、《専門家派遣プロジェクト》の先兵的行動ができるので是非活用すべきである。

E 現地の認識を高めるためにはどうしたら良いか?
(鎌田)
・下水道の場合には受益者(下流)と負担者(上流)が異なるといった特徴があり、環境教育が特に重要である。維持管理の費用をどう負担させるかという観点からも教育が重要。
(上田)
・中東では人前では肌を出さないという風習と都市生活型故、下水道と水洗トイレは普及し喜ばれている。水道を使用するとメーターを介して下水道料金も上乗せされ含まれるが、合法非合法に関わらず地下水使用においては下水道料金を払う必要がないといった問題もあり、料金徴収を含めた制度上の整備が必要である。水の大切さを理屈で無く何処の国から支援を受け、水質と利用先は如何っているか中高学生対象の現地見学会と環境教育は重要となる。

F 技術のみならず、教育という視点からの援助を考えるとボランティアが重要であると思われるが、ボランティアとしてどういうやり方があるだろうか?
(中島)
・現地にはNGO等ボランティアの受け皿があるので、それらとの連携が重要。
→ 現地のNGO(NPOも含めて)は活動(活躍)しているのか?
・真に活動しているNGOを探してコンタクトをとる必要がある。ネットワーク作りも重要。
(鎌田)
・途上国では日報や月報等、何も記録がないという状況が数多く見られる。日本における記録作りの経験は、途上国において一番役に立つことであると思う。
・シニアボランティアも含めて気楽にボランティア活動できる環境作りも重要であると思う。
(上田)
・先進国には大規模開発に対する環境影響評価(EIA)手順はあるが、途上国独特の《社会に新しいシステムや制度》を導入する際の実行手順に対する環境影響評価的マニュアルはJICAにもないので、そうしたものをまとめるNPO活動が重要な仕事であると思う。

G イギリスのWater Aidについて     座長説明
・英国では、世界中の飲料水に困っている地域に援助するための団体としてWater Aidを設立。
・Water Aidの援助対象は発展途上国の貧しい人々。
・飲料水の供給と衛生に主眼を置く。
・資金と現地に適する技術の提供。人材の訓練。
・Water Aidの管理費は必要経費の10%以内に抑える。
・現地の人々と同じレベルの生活ができる人。
・10の水会社はWater Aidを全面的に支援。一般市民にも広く支援(寄付金)を求める。
・現地で困っていて、自分たちで何とかしたいと考えている人たちを支援する組織が今から20年前にスタートしており、水賞を受賞している。我々もWater Aidの活動から学ぶべき事がたくさんあると思う。



H 安藤座長まとめ
・本日の議論は多岐に渡っているが、あえてまとめるとすると、援助される側の多種多様な情勢に応じ、当該国で利用できる水の量や経済状況を踏まえたきめ細かな援助が必要であるということであったかと思われます。
・本日は貴重なご経験をお話し頂き大変ありがとうございました。