○第2部:座談会 前半
                              座長 21世紀水倶楽部 副理事長 安藤茂氏

@ 日本の技術は世界に通用するのか。日本の企業が何を目的に世界に出て行くべきか。受け入れる現地の実態はどうなのか。日本の技術者は何ができるのか。日本の技術は世界からどのような評価を受けているのか。
(中島)
・日本の技術は、ブランドであり、熱帯地方の国にとってあこがれの的ではあるが、ただちに受け入れられる経済状況ではない。
・今後、日本の求められる可能性のある技術として、以下の4点を挙げる。
(1) 腐食対策:熱帯地域の気候にも耐えられる施設。
(2) 焼却対策:現在は天日乾燥−農業利用されていても、産業廃水を受け入れている排水は重金属の問題から農業利用できなくなる可能性もある。また、埋め立て処分地も不足していることから焼却が必要になると考えられる。 市街地内にたまったゴミとの混焼も必要ではないか。
(3) 嫌気処理:UASBにより生じたメタンガスを利用した発電等も技術的に求められていること。
(4) 安い消毒方法。
(鎌田)
・日本の技術者が話をする機会の多い政府の高官と、現場の人のレベル差が大きい。
・停電が多発しており、電源の問題も大きい。
・一人当たりGDP: $5,000程度でないと、適切な活性汚泥法の維持管理は困難であると言われている。
(上田)
・日本の技術は良く、技術者の育成にも力を入れているため現地でも好感を持たれている。
・補修等、周辺技術の整備をソフト面で充実させることが重要。
・電力以外の自然エネルギー(風や太陽光)を利用した処理法が今後求められてくると思う。

A コストについての考え方はどうか?安ければ良いのか?イニシャルとランニングの考え方についてはどうか?
(中島)
・日本の援助でも、実施設計は現地のコンサルが設計する。この場合、安価な材質のものを使うケースがあり数年で腐食等により壊れてしまうケースもあると聞いている。
・ハイテクの機器や処理方式を導入する必要はないが、高品質の材質(たとえば、腐食対策の施された材料)には、コストがかかってもきちんとしたものをつくるべきではないか。
(鎌田)
・国際入札で決まるので、スペックを明確にしないと安いところが受注してしまうという問題がある。
(上田)
・安かろう・悪かろうという問題の以前に、基本計画とベーシックデータは現地で作成する場合があるが、この時点で日本側から積極的に関与する必要があると感じた。

B 日本の計画論に関する技術的評価はどうですか?
(上田)
・日本が作成する報告書はすばらしいので、その前段階のベーシックデザインの段階で日本の関与が必要と感じる。

C 日本企業の海外進出目的について助言がありますか?
(中島)
・ボランティア活動をどういう観点でするかということだが、サポートできる体制(組織)が必要である。
・ボランティアで行った人は日本の技術との相違にとまどうことが多い。
→ 企業活動(利益面で)としてはどうか?利益がとれる仕事があるか?
・利益面では困難ではないか。UASBはオランダの技術であるが、日本として取り組むべき技術があるのではないか。
(鎌田)
・日本の援助は要請主義であり、援助先からの要請があって初めて検討される。要請に際して、日本の商社が仲介して日本のコンサルタントが検討するケースが多いが、うまくいく材料は段々、少なくなってきている。
・すぐに利益というのではなく、長期的な視点で市場を育てていくことが重要なのではないか。
(上田)
・ドイツの例を参考に話をすると、東南アジアと中東では色々と違う側面もあるが、将来の地球温暖化を視野に入れて恒常的な研究と援助を行っている。ヨーロッパの気候が変わっていったときに、自国はどう対処していったら良いのかということを考えて援助を行っている。
・日本の場合には、沖縄という研究舞台もあるが、亜熱帯乾燥地域に当事国と共同で【処理水の再利用を含めた水と農業問題の】継続的研究機構を新しいODAのスタイルとして設けることは途上国への支援のみならず将来的には日本の技術面でのプラスになるのではないか。
(安藤)
・世界水フォーラムのリーフレット「3.人と都市の持続的な発展のために」によると都市の発展に応じた排水処理方式があるが、企業の取り組みとしては基本的にはハードの支援となると思われる。