講演ー3
○ヨルダンにおける技術協力の状況と課題
                                    前JICAシニアボランティア 上田恵一氏
・約2年9ヶ月下水処理水の灌漑用水適用化対策でヨルダンに滞在。
・ 地中海性気候で降雨量は250〜300mmの地域もあるが、大部分は50mm程度と水が少ない。ヨルダンは王国で、領土は九州と北海道を合わせて2で割った程度。
・ 高学歴社会で周辺アラブ諸国に人的資源を提供することを国是としている。
・難民流入により人口は、わずか50年で10倍になるという、世界でも類を見ない国。人口の増加も一因で生態学上貴重なオアシスが枯れてしまった。
・和平条件水:イスラエルと1967年の和平条件として水源を占領された見返りにヤムルーク川から供給される水のこと。
・ヨルダンの下水処理場は19ヶ所、55%の人口普及率(都市部に人口の78%が集中)。処理方式は、古い都市では安定化池法。流入水のBODは500〜800mg/L、処理水で50〜200mg/Lと日本の流入水並み。容量を超えている処理場も多い。
・処理コストは20円/m3程度。トリハロを理由に塩素消毒を止めている処理場も多い。処理コストに占める人件費の比率が高い。
・農業用水の適用度をSodium-Adsorption-Ratio (SAR)と電気伝導度(EC)の相関で評価すると、処理水の中には不向きなものもある。
・ヨルダン各地の水を分析した結果、トータルカチオンの高い所は農耕用に不向きである、こうした水の割合が年々増加している。

・Wetland法による下水処理水の再処理実証実験を実施。アラブ銀行の資金協力を得て実験。
・Wetland法は、葦による処理、ランニングコストが低い。合併浄化槽等との併用も可。
・消毒を止めている処理場が多い中、Wetland法では菌の抑制ができることもメリット。
・ヨルダンで使われる洗剤の泡立ちはひどい(硬水用であるため硬い界面活性剤使用)。
・キリストの聖地(ザルカ川)においても水質汚濁がひどい(イトミミズ、ミジンコが多数存在)。
・結論として、下水処理水の再利用はハード面のみならず政策具体化のソフト面が重要。社会に新しいシステムをどのように導入するのか、といった点が重要である。
・中東では水の問題は平和の切り札。自前の水を確保できることが重要なので、日本の援助もそうした観点で総合的継続的に進めると良いと思われる。