講演ー2
○タイにおける技術協力の課題
            日本工営(株)コンサルタント海外カンパニー都市開発・上下水道部 鎌田寛子氏
《タイにおける実態および問題点》
・タイの1人当たりのGDPは日本の6%に相当。かなり低い。
・75自治体で、87処理場。酸化安定池が多く、半分近くを占める。
・インターセプター方式を採用しているため、下水処理場ができても住民にとっては何も変わらない。
・下水道問題の解決には技術面(維持管理)よりも社会面(住民合意)、法制度・予算といった側面がより重要。下水の必要性を理解してもらうところから始める必要がある。
・人材育成の問題も大きい。
・技術面の問題:計画上の問題があり、大きな処理場を作る傾向にある。下水管の敷設時に施工上の問題がある。管を単に埋めていくだけで勾配をつけないため管内で滞留しがちである。
・広報活動を行っていないため、下水道に対する認知度が低い。ただ、使用料の徴収などは選挙の争点になるため、首長は敢えて選挙民に負担をかける提案から目をそむけがちである。
・法制度:日本の下水道法に対応する法律がなく、使用料徴収の体系も整備できていない。
・タイも地方分権が進んでいるが、それに対応した職員が育っていない。一方、地方の下水道整備に責任をもつ天然資源環境省には下水道の専門家が殆どおらず、また、幾つもの局が同じ様な仕事を実施しており、明確な業務分担が出来ていない。
・JICAを通した下水道研修センターの日本への要請により専門家を派遣(2000年で完了)。
・JICAのプロジェクト技術協力方式により1995年から実施された下水道研修センターは2000年で終了、日本が技術指導や分析機材提供等を行ってきたが、センターの所轄が国土交通省から天然資源環境省へ移管されたこともあり、現在は使われていない状況にあり、その活用方法について今後、検討されることになっている。

《途上国共通の問題点》
・橋や道路は建設してもらえればそのまま利用可能であるが、下水処理施設は建設後に維持管理が発生することから援助も簡単ではない。
・維持管理(コスト)面では好気処理よりも嫌気処理(UASB法)が有利。ただし、処理水質はそれほど良くなく、メタンガスによる臭気の問題もある。
・汚泥処理に脱水機などは使用せず、天然乾燥床。
・維持管理が楽で、お金がかからない方式が途上国には適している。
・酸化安定池は広大な面積を必要とし、アオコの発生がある。
・エアレーテッドラグーンの例では、電気代からかかることから、あまりエアレーション装置が稼動していない例がよくみられる。
・気温(水温)が高いため、基本的に処理は簡単。
・最大の問題は住民の下水処理に対する関心が低いこと。
・今後はソフトの充実を図っていくことが重要である。
・PPPによる民間活用も必要。