問題点 

植物プランクトンの正常な発生には最適の光・水温・流況などの環境条件とともに、栄養塩・微量元素がバランスよく供給される必要がある。即ち、これらの要素は大きな季節変動を伴うが、自然の変動幅を超えてCOD・BODに代表される有機汚濁が大きいと赤潮・貧酸素水塊による二枚貝・魚類など水産資源の大幅な減少が起きるなど海洋生態系に悪影響が生じる。また夏から秋にかけて底層の貧・無酸素水の湧昇による湾奥での青潮発生は二枚貝を始めとする有用魚介類の大量死をもたらす現象として恐れられている。一方、基礎生産を支配する植物プランクトンに必要なN・P・Si・Feなどの栄養塩・微量元素の一部が減少・欠落すると海洋生態系バランスが崩れるとともに生産力の徐々の低下が生じると考えられる。東京湾を始めとする日本の内湾は以下の状況下にあると考えられる。

1)CODは負荷削減に拘わらず10数年以上ほぼ一定のまま推移しており夏季の赤潮発生が常態化している。この中で窒素N,リンPなどの栄養塩とくにNが高濃度となり内部生産が卓越する二次汚濁型に変化している。

2)埋め立て・直立護岸による干潟・藻場など貴重な浅場の消失に基づく魚介類の索餌場・産卵場・稚仔魚生育場・酸素補給の場の喪失などによる生態系への悪影響。

3)ヘドロ・有機汚濁に基づく貧酸素水塊・青潮の発生による珪藻プランクトンなどの動植物プランクトン・稚仔魚の減少および二枚貝・成魚など魚介類の減少。

4)基礎生産の一部を担う珪藻プランクトンの通年の減少及びこれによる魚類・二枚貝など水産生態系の減少、とくに夏季のシリカ欠損海域における珪藻プランクトンとの競合に勝ったシリカ素を必要としない有害赤潮プランクトンである鞭毛藻・ラフィド藻の発生・増大。これは開発の影響を受けた縁辺海・内湾における世界的なシリカ欠損と同じ状況である。

5)森林土壌・河川からのフルボ酸・フミン酸など腐植質や鉄などの流入の減少及び海域での鉄欠乏による珪藻植物プランクトン増殖の減少。