事件番号 16行ウ21

                  訴    状

                               平成16年3月23日

 名古屋地方裁判所 御中

       愛知万博における索道(ゴンドラ)事業許可処分取消請求事件

                   原告 〒489-0785愛知県瀬戸市緑町1丁目17番地
                            加藤 徳太郎  外6名
                           別紙当事者目録に記載の通り

第1 当事者の表示
原告
別紙当事者目録に記載の通り

被告
国土交通大臣 石原 伸晃  
<第1回公判にて被告から国土交通大臣は取り下げました>
〒100-8918 東京都千代田区霞が関2丁目1番3号 中央合同庁舎3号館

中部運輸局長 平山 芳昭
〒460-8528愛知県名古屋市中区三の丸2丁目2番1号 名古屋合同庁舎第1号館


第2 請求の趣旨

 1.被告が平成15年12月26日付でなした、二千五年日本国際博覧会協会に対する索道(以後ゴンドラという)事業許可処分(許可番号、中運鉄技第212号)はこれを取り消す。
 2.訴訟費用は被告の負担とする。
  との判決を求める。

第3 請求の原因
1.はじめに
 本件は、二千五年日本国際博覧会協会(以後愛知万博協会という)が、二千五年日本国際博覧会(以後愛知万博という)において、2つの会場をつなぐ輸送手段としてゴンドラ事業を計画しているところ、これが国道、県道、東部丘陵新鉄道線の上空をまたぐものとなるため、原告らはかねてよりゴンドラ事業の安全対策を求めていたが、対策がないまま本件許可処分がなされたため、行政事件訴訟法に基づき本訴えを提起するものである。

2.本件取り消し請求の根拠
(1)原告
 原告らは愛知県瀬戸市及び周辺県内市町に居住する住民である。
 本件ゴンドラが上空をまたぎ通過する国道、県道を通行、利用し生活をしているものである。また、2005年1月以後供用予定の東部丘陵新鉄道線や愛知万博開催期間運行予定とされるゴンドラ搬器を利用することとなるものである。

(2)生活環境の保全
 取り消しを請求するゴンドラ事業計画によれば、本件ゴンドラは、国道、県道、東部丘陵新鉄道線上空をまたぎ通過することになる。愛知万博協会による環境影響評価書によれば、国道155線は昼間(午前6時より午後10時まで)17,000台以上、県道6号力石名古屋線(グリーンロード)は昼間(午前6時より午後10時まで)30,000台以上の大量の車輌が通行している。東部丘陵新鉄道線は愛知万博開催期間中は、1日20,000人、ゴンドラは1日15,000人が輸送利用するとしている。
 大量の通行、輸送利用が予定されているにもかかわらず、ゴンドラの落下対策や安全対策は全くとられておらず、安全及び事故予防対策のない本件事業計画は原告らの生活環境の安全を脅かすものである。

3.本件ゴンドラ事業許可処分の違法性等
(1)被告
 被告は、国土交通大臣と中部運輸局長である。

(2)本件ゴンドラ事業の概要
ア.設置場所
 愛知県愛知郡長久手町における愛知万博長久手会場から、同県瀬戸市上之山町3丁目を通り、同市瀬戸会場に至る地域。
イ.ゴンドラの概要
 計画によれば、全長2,015mのゴンドラ線路間に合計14基の支柱を建設し、最大16秒間隔で8人乗りゴンドラ搬器62台を運行し、毎時最大1,800人の観客を輸送する単線自動循環式普通索道。

(3)本件ゴンドラ事業の違法性
 索道(ゴンドラ)は、索条を握索することにより、索条につり下げられた搬器を空中移動させる輸送装置である。
 空中に宙づりさせることにより常に落下の危険性が生ずることとなる。事実、昨年2003年10月15日には、長野県において本件ゴンドラ事業と同社・同型式のゴンドラによる事故が発生しているが、窓枠がはずれ、乗客が搬器から投げ出され地上に落下し、死亡するという大変痛ましい事故であったことは記憶に新しい。
 このような危険性を解消し、安全性を確立するために、鉄道事業法第35条及び索道施設に関する技術上の基準を定める省令において、索道(ゴンドラ)事業に対する安全対策を義務付けているところである。
 しかるに、本件ゴンドラ事業においては、搬器自体の落下及び搬器からの落下物による危険性が増大する国道155号線、県道6号力石名古屋線(グリーンロード)、東部丘陵新鉄道線上に防護ネット、防護膜、防護トンネルなどの防護施設は設置されておらず、これは、索道施設に関する技術上の基準を定める省令第17条による保護設備の設置による安全対策を怠るものといえる。住民・乗客に与える危険は計り知れない。
 また、地震、強風、落雷、停電などの予期せざる不足の事態により搬器が停留場以外の場所で停止した場合、62台の搬器が宙づりとなり、乗客を安全に救助することができるものでなければならないところ、2003年9月に公表された「2005年日本国際博覧会に係る環境影響評価追跡報告書(その2)」によれば、本件ゴンドラ線路下の保安林内樹林地である瀬戸市上之山町3丁目周辺地内では、樹木の伐採は計画されておらず、本件ゴンドラ事業は索道施設に関する技術上の基準を定める省令第7条及び第8条に違反する事業計画である。
 本件ゴンドラ線路下は、保安林指定地であり、同省令第7条、第8条による乗客への救助対策を行うためには、保安林内開発行為申請を行うことが必要である。しかし、保安林解除申請が行われることなく、事業計画を許可することは森林法にも違反する不作為の違法行為である。
 搬器が国道、県道、東部丘陵新鉄道線路上に落下すれば、ゴンドラ乗客及びここを利用する人々を巻き込む大惨事となることは確実である。また、ゴンドラが多数の利用者を運ぶ公共交通機関や大量の車輌、自家用車、バス等が通行する国道、県道、東部丘陵新鉄道線上空をまたぎ通過する事例は、全国的にも前例のないものである。乗客又利用者の安全の確保、住民の安全かつ自由な移動通行権の確保のために、被告には慎重かつ十分な審査が求められていたものである。
 このように、被告らには道路利用者及び乗客の不安を取り除き、事故の危険性を排除すべき義務が生じているが、本件ゴンドラ事業が保護設備のないまま許可されることで、住民は平穏で安全、安心した生活をすることができなくなる。

4.まとめ
 愛知万博協会が予定している本件ゴンドラ事業は、救助対策、保護対策を怠った違法な事業であり、住民原告らの安心、安全な生活に耐え難い支障を生じさせ、また移動の自由を妨げるおそれが大きいものであり、自らの生命、財産を守るため、許可処分の取り消しを請求する。

第4 証拠方法
 追って提出する。

第5 添付書類等
当事者目録

                                         以 上