平成16年3月8日
平成16年(ヨ)第21号 仮処分命令申立事件
                     債権者 岡田みどり
                     債務者 財団法人二千五年日本国際博覧会協会
名古屋地方裁判所 御中 
                      債務者代理人 弁護士 草野 勝彦
                      同     弁護士 平野 好道
                      同     弁護士 丹羽 正明
                      同     弁護士 清水 浩二
                      同     弁護士 渡辺 直樹
                       同      弁護士 河合 伸彦

                      準 備 書 面
1、債権者の主張するところは、整理されておらず趣旨が明確ではないが、土砂災害のおそれについては、次のとおり反論する。
2、7号支柱については、土石流危険渓流の区域内であるが、支柱建設工事については、細心の注意を払って工事を行うものであり、土石流が発生することはない。
 この点については、平成15年12月8日付で、債務者は愛知県知事に対し、砂防指定地内行為許可申請を提出しているが、このうち7号支柱については
 工事中・後における防災施設としては、掘削部分の土留め工事の他、砂防技術基準に準拠し、工事実施に伴う土砂流出による被害を防止するため、洪水の発生を仮定した流出土砂量の沈砂部を確保するとともに、工事完了後においても造成地の地盤が安定し、表面土砂流出が出なくなるまでのアフターケアとして沈砂部を設けることとしている。
 具体的には、
  工事中における土砂流出分は、支柱基礎の掘削部及び造成部下流の蛇かご工にて堆
    砂させる。
  工事後における土砂流出分は、造成部下流に蛇かご工にて土砂流出を防止する。
 とする最低限の土砂流出対策を実施する他、
  法面部及び土砂仮置場についても土砂全体を覆うよう土木マット(ヤシ繊維質)を
  設置し、さらに、必要に応じて、土のうにより土砂流出防止を行う。
  さらに、工事完了後においては、松丸太をしがら束で編んで強化した5枚のしがら
  柵を、等高線に沿って設置し、土砂流出を抑える。
 とする対策を講じている(乙9の2、乙10)。
 その結果、愛知県から砂防地内における工事を許可されており(乙9の1)、「Sh−2−29」の地区に生ずるおそれがある災害についても、これが生じないよう万全の策が講じられているものである。
3、また、7号支柱は、債権者が居住する地区とは尾根を挟んで反対側に位置し(乙1)、かつ、その間に谷が存在するものであって(乙3)その影響が債権者に及ぶことはありえない。
4、土砂災害危険箇所マップ(甲2)によれ、土石流が発生するおそれのある地域は紫(人家が5戸以上は塗りつぶし、1から4戸は枠のみ)色で表示され、これによって発生する土石流被害地域はオレンジ色または黄色の枠で表示されている。
5、7号支柱のある地域は「Sh−2−29」であるが、その地域に土石流が発生した場合に生ずる被害地域は図面の右側であり、債権者の居住する地区(甲2の「210192」の左側の団地)とは全く関係ないものである。
6、急傾斜地崩壊危険区域は、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律によって定義される急傾斜地(同法第2条第1項「傾斜度が30度以上である土地」)のうち、都道府県知事がその中から「崩壊するおそれがある急傾斜地で、その崩壊により相当数の居住者その他の危害が生ずるおそれのある急傾斜地で、その崩壊により相当数の居住者その他の者の危害が生ずるおそれのあるもの及びこれに隣接する土地のうち、当該急傾斜地の崩壊が助長され、または誘発されるおそれがないようにするため第7条第1項各号に掲げる行為が行われることを制限する必要がある土地(いわゆる「誘発助長区域」)が急傾斜地崩壊危険区域として指定された区域である(同法第3条第1項 乙4)。
 従って、土砂災害危険箇所マップに「急傾斜地崩壊危険箇所」と記載されている箇所のうち、都道府県知事によって指定がされた箇所のみが急傾斜地崩壊危険区域である。
7、土砂災害危険箇所マップには、上記指定がされた箇所について指定番号が付されており、債権者が居住する上之山町については、いずれもその指定がされていない(乙5)。
 よって、債権者が危険を主張する「110369」「210196」の箇所(甲2)は、急傾斜地崩壊危険区域には指定されていないものである。
8、債務者が7号支柱を建設する箇所は、急傾斜地崩壊危険箇所にも入っておらず、上記のような位置関係からこれによって債権者の居住する地区に崩壊等が起こるとは考えられない。
 従って、債権者の主張には理由がない。
9、債権者宅とゴンドラとの最短距離は、平面上で270メートル、高さを考慮した直線距離では271メートルとなる(乙14の1、2)。
 この距離は裁判所を中心にすると別紙図面のとおりであり(乙6)、例えば三の丸NTTビルまでの距離とほぼ等しい。これを写真にすると乙7のとおりであり、この距離から室内をのぞくことは不可能である。
10、環境影響評価追跡調査(予測・評価)報告書(その2)(乙8)において、ゴンドラを視認しうる位置からの景観予測がなされているが、債権者宅よりかなり近いB、C地点(乙8 P155)からのゴンドラでもP158、159程度のものであり、ゴンドラから室内が見える可能性は(遮蔽シールドがないとしても)、ほとんどないというべきである。
 また、A地点(B、C地点より債権者宅に近いが、それでも債権者宅よりゴンドラに近い)でのゴンドラは豆粒の大きさにしか見えないものであり(乙8 P157)、このような距離から債権者宅の内部が見えることはあり得ない。
11、更に、ゴンドラには、搬器の扉側窓全面及び窓の下部には視界遮断フィルムを貼付し、窓上部には瞬間調光フィルムを貼ることになっている(甲7の1)。
 視界遮断フィルムは常時視界を遮断するため、下方向への視界が常に妨げられるほか、プライバシー保護区間として10号支柱から7号支柱までの間は瞬間調光フィルムにより視界が遮断されるシステムになっていることから、債権者宅がゴンドラから見られることは全くあり得ない。
 よって、ゴンドラによって債権者のプライバシーが侵害されることは全くあり得ないものである。