『海上の森』万博後も保全
『環境先進県』シンボルに
新条例検討NPOと協力


 愛知県は、二〇〇五年日本国際博覧会(愛・地球博)で会場の一部となる海上(かいしょ)の森地区を、万博閉幕後も保全する方針を固めた。保全と活用に向けた新条例の制定などを検討する。海上の森は、「開発か保護か」のはざまで揺れ、紆余(うよ)曲折を経て開催にこぎ着ける愛知万博の“原点”。閉幕後も「環境先進県づくり」を目指す象徴として保全、活用したい意向だ。

 海上の森は約五百三十ヘクタールで、大部分が県有地。県は海上の森を、自然保護や里山保全のあり方を考えるモデルケースとする方針で、〇四年秋に「里山学びと交流の森づくりの会」(仮称)を発足させる。万博期間中は市民参加型で、自然観察会や間伐作業などに取り組む。

 併せて海上の森の一部を、既存の県条例に基づく「自然環境保全地域」に指定し、開発行為を規制。さらに海上の森全体の保全を目的とした新条例の策定に着手する。万博閉幕後の〇六年度には施行させたい意向だ。海上の森の一部を含む万博瀬戸会場に建設される県パビリオンを閉幕後に利用して里山保全活動の拠点とし、NPOと協力して保全活動を実施する。

 海上の森地区については、自然保護団体などから「国営公園化」を求める声も出ていた。県は条例化などで、海上の森の保全と活用の意義を県政の施策展開の中に明確に位置付けたいとしている。

 愛知県などは当初、海上の森を万博会場予定地としていた。だが絶滅が危ぐされるオオタカの営巣が発見され、さらに博覧会国際事務局(BIE)が、会場跡地を利用した新住宅計画などを強く批判。この結果、万博計画は大幅な見直しを迫られた。

<中日新聞 2003.12.31>